60歳の女性。転倒して右肩関節痛を訴えた。エックス線写真(別冊No. 3)を別に示す。まず患部に行うべき治療はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下図のエックス線写真からは、肩関節周囲の軽度の骨折(例:上腕骨外科頸骨折の軽度転位型)が示唆されます。このような骨折の場合、まず急性期の応急処置として、患部の安静と疼痛の軽減、さらなる転位の防止を目的とした簡便な固定が必要です。三角巾は上肢の重みを支え、肩関節を安静に保つための最も一般的で適切な初期固定方法です。他の選択肢は、急性期に禁忌であるか、より重度な骨折や手術を要する治療であり、初期対応として適切ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. ギプス固定は、より重度の骨折や安定性の低い骨折に用いられることが多いです。今回の肩関節周囲の軽度な骨折に対しては、通常まず選択されません。正しくは:ギプス固定は、上腕骨幹部や前腕骨折など、より強固な固定が必要な場合に検討されます。選びやすい理由:固定の重要性を認識していると、強い固定を連想して選んでしまうかもしれません。混同注意:軽度な骨折と重度な骨折の固定方法を混同している可能性があります。
- 2. 極超短波治療は温熱療法の一種であり、急性期の炎症や痛みが強い時期には通常禁忌とされます。骨折直後の患部に適用することは適切ではありません。正しくは:極超短波治療は、骨折後、ある程度の期間が経過し、炎症が収束した慢性期の疼痛緩和や組織の治癒促進に用いられます。選びやすい理由:物理療法の一部として知識があるため、選択肢として目を引くかもしれませんが、急性期禁忌を忘れていると選びがちです。混同注意:急性期と慢性期の物理療法の適用を混同している可能性があります。急性期の治療原則を理解していないかもしれません。
- 3. 正解。画像所見から、肩関節周囲の軽度の骨折(例:上腕骨外科頸骨折の軽度転位型など)が推測されます。このような場合、急性期には疼痛の軽減とさらなる転位の防止のため、簡便な三角巾による患部の安静固定がまず行われるべきです。これは非観血的治療の基本となります。選びやすい理由:シンプルすぎる治療法に見えるかもしれませんが、急性期の応急処置として最も適切です。混同注意:より高度な治療法と比べて、選択をためらうことがあるかもしれません。
- 4. 髄内釘固定は観血的治療(手術)であり、重度の骨折や不安定な骨折、保存療法が困難な場合に選択されます。画像所見が軽度な骨折であれば、まず検討すべき治療ではありません。正しくは:髄内釘固定は、上腕骨幹部骨折や大腿骨骨折など、長管骨の安定した強固な固定が必要な場合に、手術によって行われます。選びやすい理由:骨折治療の選択肢の一つとして知られているため、選択肢としてあり得ると思ってしまうかもしれませんが、緊急性や侵襲性を考慮すると不適切です。混同注意:観血的治療と保存的治療の選択基準、特に初期対応の優先順位を混同している可能性があります。
- 5. 超音波治療は、急性期においては炎症の抑制や疼痛緩和に用いられることもありますが、骨折直後の不安定な状態での第一選択としては、まず安静と固定が優先されます。また、治療機器の使用には専門的な知識が必要であり、応急処置としては適切ではありません。正しくは:超音波治療は、骨折後の治癒促進や軟部組織損傷の治療に、適切な時期とプロトコルで適用されます。選びやすい理由:物理療法の一つとして知られており、痛みの緩和に効果があるため、選択肢として魅力的に映るかもしれません。混同注意:急性期の応急処置と、その後の治療段階における物理療法の役割を混同している可能性があります。
国試ポイント
本問題は、画像所見(この場合は上肢骨折)から、整形外科的な初期対応として最も適切で基本的な処置を選択できるかを問うものです。特に、急性期の対応原則、保存療法と観血療法の区別、物理療法の適応・禁忌に関する知識が重要となります。臨床現場で遭遇する可能性の高い状況を想定した実践的な知識が求められます。
混同注意
急性期の物理療法と慢性期の物理療法の区別、軽度骨折の保存療法と重度骨折の観血的治療の区別が混同されやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が問われる場合、他の部位の骨折(例:前腕、下腿)の画像所見から、初期固定方法や治療方針の選択を問う問題が出題される可能性があります。また、急性期の炎症管理や疼痛管理における薬物療法や物理療法の注意点なども確認すべき点です。
関連知識
骨折の分類(開放骨折/閉鎖骨折、転位の有無など)、骨折の治癒過程、整形外科における保存療法と観血的治療の適応、各種固定法(ギプス、装具、内固定)の特徴と適用部位、急性期・慢性期における物理療法の適応と禁忌。