66歳の女性。左中大脳動脈領域のアテローム血栓性脳梗塞でBroca失語と重度の右片麻痺を認める。理学療法実施の際、コミュニケーションに対する配慮で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
ブローカ失語では、言葉の理解や発話に困難がありますが、非言語的な情報や視覚的な情報は比較的理解されやすいことがあります。簡単な漢字は、その意味を視覚的に直接伝えやすいため、コミュニケーションの補助手段として有効です。他の選択肢は、患者さんの理解や発話を阻害する可能性があるため不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. ブローカ失語の患者さんには、言葉の理解や表現に困難があるため、普段使い慣れない単語や専門用語は避けるべきです。シンプルな言葉を選ぶことが重要です。正しくは:日常的によく使う、理解しやすい簡単な単語を用いるべきです。選びやすい理由:専門用語を用いることで、正確に伝わると思うかもしれませんが、失語症患者にとってはかえって混乱を招きます。混同注意:健常者とのコミュニケーションと混同しやすいです。
- 2. 患者さんが発言する前に先回りして言葉を言ってしまうと、患者さんの発話を阻害し、自発的な表現の機会を奪ってしまいます。これにより、コミュニケーションへの意欲低下につながる可能性があります。正しくは:患者さんが言葉を発するのを待ち、もし困っているようであれば、促しや選択肢の提示などで支援すべきです。選びやすい理由:患者さんの負担を減らしたいという配慮から、つい先回りして言いたくなるかもしれません。混同注意:急いでいる場合や、患者さんのストレスを軽減したいという気持ちと混同しやすいです。
- 3. ブローカ失語の患者さんは、複雑な構文の理解が難しいことが多いです。長い文章や複数の情報を一度に与えると、理解が追いつかなくなります。正しくは:短く、簡潔な文章で、一つのことを明確に伝えるように心がけるべきです。選びやすい理由:情報量を多く伝えることで、理解度が高まると思われがちです。混同注意:通常の会話では情報を多く含んだ文章を使うことが多いため、それと混同しやすいです。
- 4. 正解。ブローカ失語の患者さんの中には、音声言語での表現や理解が難しい一方で、漢字などの視覚的な情報や、ひらがなでも単語での理解は比較的保たれている場合があります。特に簡単な漢字は、意味を直感的に捉えやすいため、コミュニケーションの補助として有効です。正しくは:この選択肢は正しいです。選びやすい理由:漢字は難しいと感じる人もいるかもしれませんが、単純な概念を表す漢字は失語症患者にとって有用なツールとなることがあります。混同注意:漢字が読み書きできない患者さんもいるため、一概に万能ではないが、選択肢の中では最も適切な方法です。
- 5. ブローカ失語の患者さんにとって、身振り手振りやジェスチャーなどの非言語的コミュニケーションは、言葉の理解や表現を補完する非常に重要な手段です。むしろ積極的に活用すべきです。正しくは:ジェスチャーや身振り手振り、表情などを積極的に用いて、言葉の意味を補強すべきです。選びやすい理由:言葉が中心のコミュニケーションを重視しすぎて、非言語的な手段を軽視する傾向があるかもしれません。混同注意:言葉によるコミュニケーション能力が高い人とのやり取りと混同しやすいです。
国試ポイント
失語症患者、特にブローカ失語患者とのコミュニケーションにおける適切な配慮を問う問題です。患者の残存能力を活用し、理解・表現を促進するための具体的な支援方法が求められます。特に『何を避けるべきか』と『何を積極的に用いるべきか』の区別が重要です。
混同注意
失語症のタイプによるコミュニケーションの特徴や、認知症など他の疾患によるコミュニケーション障害との違い。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず患者の失語タイプ(ブローカかウェルニッケか、流暢性失語か非流暢性失語か)を特定し、それぞれの特徴に合わせたコミュニケーション方法を選択できるか。また、具体的な行動として『何をしてはいけないか』と『何をすべきか』を明確に判断できるかを確認します。
関連知識
ブローカ失語(運動性失語)とウェルニッケ失語(感覚性失語)の症状の比較、非言語的コミュニケーションの重要性、TAIS(高次脳機能障害者に対する対人援助スキル)の原則。