呼吸に対する腹臥位の効果で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
腹臥位では、重力の影響により肺の腹側(前面)が相対的に低くなり、そこに血流がより多く分布するようになります。これは、肺の換気と血流のミスマッチを改善し、酸素化を向上させる効果が期待できる主なメカニズムの一つです。背臥位では、重力により血流は背側(後面)に分布するため、腹臥位は血流分布を重力に応じて変化させます。
選択肢ごとの解説
- 1. 腹臥位では腹部が圧迫されるため、横隔膜の動きが制限されやすく、効率的な腹式呼吸が困難になります。このため、上部胸郭も圧迫を受ける体勢によっては動きが制限されることがあり、上部胸式呼吸が特段促進されるわけではありません。むしろ、呼吸努力が増大する可能性があります。正しくは:腹式呼吸が制限され、横隔膜の動きが抑制される。選びやすい理由:腹部の制限から、胸部を意識的に使おうとする、と連想するかもしれませんが、腹臥位では胸郭全体の動きも制限されがちです。混同注意:腹式呼吸がしにくい場合に、胸式呼吸に切り替わるという一般論と混同する可能性があります。しかし、腹臥位での胸郭の動きも制限されることを考慮する必要があります。
- 2. 左舌区からの排痰を促すには、通常、左舌区が上になるような体位(例えば右側臥位で頭部を低くする体位など)が適切です。腹臥位は特定の肺区域からの排痰を特異的に促進する体位ではありません。正しくは:特定の肺区域の排痰を促進するためには、その区域が重力方向に位置するように体位を調整する必要がある。選びやすい理由:体位変換が排痰に有効であるという知識から、何らかの体位が特定の部位の排痰に有効と誤解する可能性があります。混同注意:体位ドレナージの原則と混同する可能性があります。体位ドレナージでは、排痰したい部位が上になるように配置し、重力によって分泌物が排出されるようにします。
- 3. 腹臥位は腹部臓器が横隔膜を圧迫し、横隔膜の下降運動を制限するため、座位と比較して肺活量が減少する傾向にあります。一般的に、最も肺活量が大きいのは立位です。正しくは:座位に比べて肺活量が減少する傾向がある。選びやすい理由:腹臥位が酸素化を改善することがあるという情報から、呼吸機能全体が改善すると誤解する可能性があります。混同注意:特定の疾患(例:ARDS)において腹臥位が酸素化を改善するという事実と、健常者の一般的な肺機能指標(肺活量)の体位による変化を混同する可能性があります。
- 4. 重力の影響により、肺の換気は肺の重力に依存する部分(下部)に多く分布する傾向があります。腹臥位でもこの原則は変わらず、立位に比べて肺尖部への換気が多くなることはありません。むしろ、腹臥位では肺の背側(非依存性)部分の換気・血流が改善されることが特徴です。正しくは:立位に比べて換気は肺の下部(特に重力に依存する部分)に多く分布する。選びやすい理由:体位変換によって換気分布が変わるという一般論から、具体的な変化の方向性を誤解する可能性があります。混同注意:腹臥位における換気分布の変化(肺の腹側への分布増加や背側肺の換気改善)と、立位における換気分布(下部優位)の原則を混同する可能性があります。
- 5. 正解。肺血流は重力の影響を強く受けるため、最も低い位置にある肺区域に血流が集中します。背臥位では背側(胸郭に接する側)が低くなるため血流が背側に分布しますが、腹臥位では腹側(前面)が低くなるため、血流が肺の腹側に多く分布するようになります。これにより、背臥位で圧迫されて虚血状態になりやすい背側肺の血流が改善され、同時に腹側肺の換気と血流のミスマッチが改善される効果も期待されます。
国試ポイント
腹臥位が呼吸生理に与える影響、特に肺の換気・血流分布の変化に関する基本的な知識が問われています。重力と肺血流の関係、および体位変換が肺機能に与える具体的な効果を理解しているかが重要です。
混同注意
腹臥位がARDSなどの重症呼吸不全患者の酸素化を改善する効果は有名ですが、そのメカニズム(換気・血流再分布、肺の虚脱防止など)と、健常者における肺活量や特定の換気分布の変化を混同しやすいです。特に、肺活量の低下や呼吸運動の制限がある一方で、酸素化が改善するという矛盾しているように見える事象の理解が求められます。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、「体位が肺の換気・血流分布に及ぼす影響」について、特に重力と解剖学的な位置関係を意識して検討する視点を持つことが重要です。各体位(立位、座位、仰臥位、側臥位、腹臥位)が、肺のどの部分に換気や血流を優位に分配するか、またその結果として肺機能(肺活量、酸素化など)にどのような変化をもたらすかを評価する視点を持つようにしましょう。
関連知識
肺の換気・血流分布の重力依存性、体位ドレナージの原則、ARDSにおける腹臥位療法、肺活量の体位による変化、横隔膜運動と呼吸。