健常者に自転車エルゴメータを用いて中等度の運動負荷を20分間行った。運動開始前と比べて低下するのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
運動中、身体は活動している筋肉により多くの血液と酸素を供給する必要があります。このため、活動筋周囲の血管は拡張し、その結果として全身の末梢血管抵抗は低下します。心臓はこれを補うために心拍数と心収縮力を増加させ、心拍出量を増やします。これにより収縮期血圧は上昇します。健常者であれば、肺のガス交換機能は維持されるため経皮的動脈血酸素飽和度は変化せず、運動による熱産生により体温は上昇します。
選択肢ごとの解説
- 1. 健常者の場合、中等度の運動では肺のガス交換機能が十分に働くため、動脈血酸素飽和度はほぼ正常範囲(95%以上)に維持されます。正しくは:健常者の中等度運動では、ほぼ正常範囲に維持されるか、ごくわずかな変動にとどまる。選びやすい理由:運動強度が高い場合や呼吸器疾患を持つ人では低下することもあるため、一般論として「低下する可能性がある」と誤解するかもしれない。混同注意:呼吸回数や換気量の増加といった呼吸器系の適応と混同し、酸素供給が追いつかないと考えるかもしれない。
- 2. 正解。運動時には、活動している骨格筋への血流を増やすために、活動筋の血管が拡張します。この局所的な血管拡張により、全身の血管抵抗の合計である末梢血管抵抗は減少します。
- 3. 運動時には心臓の拍出量が増加し、活動筋への血流が増大するため、収縮期血圧は一般的に上昇します。正しくは:運動時には上昇する。選びやすい理由:運動により血管が拡張するため、血圧が下がると誤解するかもしれない。ただし、この血管拡張は主に活動筋周辺で起こり、心拍出量の増加が収縮期血圧上昇に寄与する。混同注意:末梢血管抵抗の低下と、血圧の動きを混同しやすい。心拍出量の増加が血圧上昇に大きく寄与することを忘れがち。
- 4. 運動時には身体がより多くの酸素と栄養を必要とするため、心臓は拍動数を増やし、血液を送り出す量を増加させます。したがって、心拍数は上昇します。正しくは:運動時には上昇する。選びやすい理由:運動負荷を中止すれば低下するが、運動中という条件を見落とす。混同注意:安静時心拍数と運動時心拍数の違いを理解しているが、「低下する」という逆の選択肢があることで、選択肢を深く考えずに選んでしまうことがある。
- 5. 運動によって筋肉が活動すると熱が産生されるため、体温は一般的に上昇します。中等度以上の運動では、熱産生が放熱を上回り体温が上昇します。正しくは:運動時には上昇する。選びやすい理由:発汗による冷却効果と混同し、体温が低下すると考えるかもしれない。混同注意:発汗による熱放散と、運動による熱産生の関係性を誤解する。運動初期には体温がわずかに下がることも稀にあるが、20分間の中等度運動では上昇する。
国試ポイント
運動時の循環・呼吸器系の生理的適応に関する基礎知識が問われます。特に、心拍数、血圧、末梢血管抵抗といった主要な循環動態の変化を、健常者の場合と疾患を持つ人の場合とで区別して理解しているかが重要です。
混同注意
運動中の収縮期血圧(上昇)と末梢血管抵抗(低下)の関係性、およびそのメカニズム(心拍出量の増加と血管拡張)は混同しやすいです。また、運動中の体温上昇と発汗による熱放散の関係性、健常者のSpO2は運動時も維持されるが、疾患を持つ場合は低下しうる点も混同の対象となり得ます。
次に同じ論点が出たら
次に同様の問題が出たら、「運動強度」「運動の種類(全身運動か局所運動か)」「対象者の状態(健常者か、心疾患・呼吸器疾患を持つ者か)」といった条件に特に注意し、それに応じた生理的変化を正確に判断すること。また、「上昇するものはどれか」「変化しないものはどれか」といった問われ方の変化にも対応できるように準備すること。
関連知識
心拍出量 = 1回拍出量 × 心拍数、血圧 = 心拍出量 × 全身血管抵抗(末梢血管抵抗)。運動時の呼吸数・換気量の増加、酸素摂取量の増加、動静脈酸素較差の増大。運動時に活性化される交感神経系の影響についても理解を深めると良いでしょう。