脳の病変部位と出現しやすい症候との組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
線条体(尾状核と被殻)は、大脳基底核の一部を構成し、運動の開始、抑制、調節に重要な役割を担っています。特に、線条体の機能異常は、ドパミン系とのバランスが崩れることで、ハンチントン病に見られる舞踏病や、ジストニア、アテトーシスなどの様々な不随意運動(意図しない動き)を引き起こすことがよく知られています。したがって、「線条体の損傷 – 不随意運動」の組み合わせは正しいです。
選択肢ごとの解説
- 1. 黒質はドパミン産生ニューロンが集まる部位であり、パーキンソン病における運動障害(振戦、固縮、無動など)との関連が深いです。感覚障害とは直接関連しません。正しくは:黒質の損傷は、パーキンソン病に見られるような運動機能の低下(振戦、固縮、無動など)を引き起こしやすいです。選びやすい理由:脳の深い部分にあるため、広範な機能障害をイメージし、感覚障害と誤認する可能性があります。混同注意:感覚野や感覚伝導路の損傷と混同されやすいです。
- 2. 視床は感覚情報の中継点ですが、嗅覚情報は視床をほとんど経由せずに大脳皮質(一次嗅覚野など)に直接到達します。したがって、視床損傷による嗅覚障害は一般的ではありません。正しくは:視床の損傷は、対側の様々な感覚障害(触覚、痛覚、温覚など)や、視床痛などを引き起こしやすいです。選びやすい理由:視床が多くの感覚の中継点であるため、嗅覚も含まれると誤解しやすいです。混同注意:他の感覚(触覚、温痛覚、視覚、聴覚)の情報伝達と嗅覚の経路を混同しやすいです。
- 3. 赤核は運動協調性や姿勢制御に関与する部位ですが、摂食嚥下機能は主に脳幹(嚥下中枢)や大脳皮質(摂食・嚥下関連野)が関与しています。赤核損傷が直接的な摂食嚥下障害を引き起こすことは稀です。正しくは:赤核の損傷は、運動失調や姿勢反射の異常など、運動調節に関連する症状を引き起こしやすいです。選びやすい理由:嚥下反射にも運動の協調性が関わるため、赤核との関連を推測してしまう可能性があります。混同注意:脳幹や小脳、大脳基底核の他の部位の機能と混同しやすいです。
- 4. 正解。線条体(被殻と尾状核)は、大脳基底核の一部であり、運動の調節に深く関与しています。線条体の機能不全は、ハンチントン病における舞踏病やジストニアのような様々な不随意運動を引き起こすことが知られています。選びやすい理由:不随意運動は広範な脳領域で起こりうるため、他の選択肢も関連があるように感じるかもしれませんが、線条体は特に重要な部位です。混同注意:小脳失調など、他の運動障害のタイプと混同されやすいですが、不随意運動は線条体の代表的な症状です。
- 5. 扁桃体は情動(特に恐怖や不安)の処理、記憶、社会行動などに関与する部位です。筋緊張の調節には直接関与せず、扁桃体損傷が筋緊張異常を primary に引き起こすことはありません。正しくは:扁桃体の損傷は、情動の障害(例:恐怖を感じにくくなる)、社会性の変化、記憶障害など、情動や認知行動に関連する症状を引き起こしやすいです。選びやすい理由:脳の深い部分であり、様々な機能に関わるため、筋緊張のような身体的な反応にも影響があると誤解する可能性があります。混同注意:大脳基底核や脳幹の筋緊張調節に関わる部位と混同しやすいです。
国試ポイント
本問題は、脳の各部位の機能と、それに伴う代表的な症状との正確な対応関係を問うものです。特に大脳基底核の各部位(黒質、線条体、視床下核など)が関与する運動障害については、詳細な知識が求められます。一般的な感覚障害、運動障害、高次脳機能障害の原因部位を正確に理解しているかが試されます。
混同注意
脳部位の名称が類似していたり、複数の機能に関与している部位があるため、それぞれの核の主たる機能や、特定の症状との関連を混同しやすいです。特に、大脳基底核の各構成要素と、パーキンソン病やハンチントン病といった特定の神経疾患との関連を明確に区別することが重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、各部位の基本的な解剖学的知識と、その部位が関与する主要な生理機能・病態生理学的な症状をまず確認します。特に、問題文にある疾患(例:パーキンソン病、ハンチントン病)や症状(不随意運動、感覚障害など)に特徴的な脳部位を優先して検討します。また、類似した機能を持つ他の部位との鑑別点も重要になります。
関連知識
大脳基底核の経路(直接路、間接路)、パーキンソン病と黒質変性、ハンチントン病と線条体変性、小脳と運動失調、脳幹と生命維持機能・嚥下・呼吸、視床と感覚中継、大脳皮質の各葉の機能(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉)、辺縁系と情動・記憶。