3歳の男児。脳性麻痺による右片麻痺。背臥位から図のように起き上がる。影響する反射はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
非対称性緊張性頸反射(ATNR)は、頭部を左右に回旋させると、顔の向いた側の上下肢が伸展し、後頭部側の上下肢が屈曲する反射です。脳性麻痺児の場合、この反射が統合されずに残存していることが多く、寝返りや起き上がり、座位保持などの運動発達に大きな影響を与えます。仰臥位から起き上がる際に頭部を回旋させる動作が入るため、この反射が強く出現すると、起き上がり動作が阻害されたり、特定のパターンでのみ起き上がることになったりします。
選択肢ごとの解説
- 1. モロー反射は、大きな音や姿勢の急な変化などにより、腕を広げた後に抱きつくような動きを見せる反射であり、乳児が仰臥位から起き上がる動作とは直接関連しません。正しくは:モロー反射は、驚愕反応に関連する原始反射です。選びやすい理由:原始反射の一種なので、発達段階にある乳児の行動として選択肢に入ってきやすいかもしれません。混同注意:他の原始反射や姿勢反射と混同する可能性があります。
- 2. ギャラント反射は、乳児の背中を脊柱に沿って刺激すると、刺激された側に体幹が湾曲する反射です。仰臥位から起き上がる動作とは直接的な関連はありません。正しくは:ギャラント反射は、体幹の側方屈曲に関連する原始反射です。選びやすい理由:原始反射の一種であり、体幹の動きに関わるため、一見関係があるように思えるかもしれません。混同注意:他の原始反射や体幹の姿勢制御に関わる反射と混同する可能性があります。
- 3. 緊張性迷路反射は、頭部の位置(特に前後屈)によって全身の筋緊張が変化する反射です。仰臥位では伸筋緊張が高まり、腹臥位では屈筋緊張が高まります。起き上がり動作そのものを直接的に引き起こす反射ではありませんが、頭部が後屈すると伸展パターンを促進し、起き上がりを阻害する可能性があります。ただし、非対称性緊張性頸反射ほど直接的な影響ではありません。正しくは:緊張性迷路反射は、頭部の重力に対する位置に応じて全身の伸筋・屈筋の緊張が変化する反射です。選びやすい理由:姿勢制御に関わる反射なので、起き上がり動作に影響があるように思えるかもしれません。混同注意:他の姿勢反射や、特に非対称性緊張性頸反射と混同しやすいです。緊張性迷路反射は頭部の重力に対する位置、非対称性緊張性頸反射は頭部の回旋が主な誘因です。
- 4. 交差性伸展反射は、片方の下肢が刺激されて屈曲すると、反対側の足が伸展する反射です。これは主に歩行やバランスに関連する反射であり、仰臥位からの起き上がり動作とは直接的な関連が薄いです。正しくは:交差性伸展反射は、歩行動作に関連する脊髄反射です。選びやすい理由:下肢の動きに関わる反射なので、全身の協調運動を考えると関連があるように思えるかもしれません。混同注意:他の原始反射や、特に下肢の運動に関わる反射と混同する可能性があります。
- 5. 正解。非対称性緊張性頸反射(ATNR)は、乳児の頭部を左右どちらかに回旋させると、顔が向いた側の上下肢が伸展し、反対側の上下肢が屈曲する反射です。仰臥位から起き上がる際、頭部を回旋させることでこの反射が誘発され、麻痺側の伸展を助けたり、非麻痺側の屈曲を促すことで、起き上がり動作に影響を与えます。特に脳性麻痺ではこの反射が残存しやすく、随意運動の妨げとなることがあります。選びやすい理由:他の原始反射も発達に影響を与えるため、迷うかもしれませんが、起き上がり動作における頭部回旋と四肢の関係を考えると、この反射が最も直接的です。混同注意:緊張性迷路反射や対称性緊張性頸反射など、他の緊張性反射と混同しやすいですが、ATNRは頭部の『回旋』が誘因である点が決定的な違いです。
国試ポイント
乳幼児の原始反射や姿勢反射の出現時期、消失時期、およびそれが残存した場合に運動発達に与える影響について問う問題です。特に脳性麻痺児における反射の残存は重要なポイントとなります。
混同注意
緊張性迷路反射、対称性緊張性頸反射など、他の緊張性反射と混同しやすいです。それぞれの反射の誘発刺激と反応パターンを正確に理解しておく必要があります。また、他の原始反射と姿勢反射の区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、まず図からどのような動作が行われているのか、その動作に頭部や体幹のどのような動きが含まれているのかを正確に把握する。次に、選択肢にある各反射の誘発刺激と反応パターンを想起し、その動作と最も直接的に関連する反射を選択する。特に、脳性麻痺児という条件が付いている場合、原始反射の残存を念頭に置く。
関連知識
原始反射(モロー反射、吸啜反射、把握反射、ギャラント反射、非対称性緊張性頸反射、対称性緊張性頸反射など)の機能と出現・消失時期。姿勢反射(立ち直り反応、平衡反応など)の種類と機能。脳性麻痺における各反射の残存が運動発達に与える影響(特に粗大運動)。