正中神経を手首と肘部で電気刺激した運動神経伝導検査の波形を示す。この運動神経伝導検査から考えられる病態はどれか。ただし、手首と肘部の刺激部位間の距離は175 mmである。(正常範囲:振幅3.5 mV以上、運動神経伝導速度48 m/s以上)

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出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
波形から、遠位潜時の延長、神経伝導速度の著しい低下、および伝導ブロックが示唆されます。これらの所見は、ミエリン鞘の損傷によって神経伝導が阻害される『脱髄性病変』に特有のものです。
選択肢ごとの解説
- 1. 運動ニューロンの変性(例:筋萎縮性側索硬化症)では、一般的に運動神経伝導速度は比較的保たれるか、末梢神経の軸索変性も伴う場合に軽度低下することがありますが、本波形のような顕著な伝導速度の低下と伝導ブロックは通常見られません。神経筋接合部異常の波形は典型的には振幅は低下しますが、伝導速度の著しい低下は伴いません。正しくは:この波形は、運動ニューロンの変性による症状とは異なる所見です。選びやすい理由:神経系の疾患であるため、選択肢の一つとして検討されやすいですが、運動ニューロン疾患は神経伝導速度より筋電図で異常が見られることが多いです。混同注意:末梢神経障害と中枢神経疾患の症状を混同することがあります。
- 2. 軸索変性(例:糖尿病性神経障害、ギラン・バレー症候群の軸索型)では、CMAP(複合筋活動電位)の振幅が低下し、遠位潜時の延長や伝導速度の軽度低下が見られることがあります。しかし、本波形のように著しい伝導速度の遅延や、特に遠位部と近位部でCMAPの振幅が大きく異なる伝導ブロックを示唆する所見は、脱髄性病変でより特徴的です。軸索変性でも伝導ブロックは起こりえますが、脱髄ほどの顕著さではありません。正しくは:軸索変性の場合、振幅の低下が主ですが、伝導速度の極端な低下や伝導ブロックは脱髄性病変の特徴です。選びやすい理由:振幅の低下が見られるため、軸索変性を疑うかもしれませんが、伝導速度の低下幅が非常に大きい点が異なります。混同注意:脱髄性病変と軸索変性性病変の神経伝導検査所見の違いを混同することがあります。両者はしばしば合併することも複雑さを増します。
- 3. 神経筋接合部異常(例:重症筋無力症)では、反復刺激によってCMAP振幅の減衰(waxing-waning現象)が見られますが、単回の刺激では通常、伝導速度は正常範囲内にあり、遠位潜時の延長もありません。本波形のような伝導速度の著しい低下は、神経筋接合部異常では観察されません。正しくは:神経筋接合部異常は、反復刺激での波形変化が特徴で、伝導速度の異常は通常ありません。選びやすい理由:筋力低下をきたす疾患であるため、関連疾患として想起されやすいです。混同注意:神経伝導障害と神経筋伝達障害の鑑別を混同することがあります。
- 4. 示された波形は、正常範囲とされている振幅3.5mV以上、運動神経伝導速度48m/s以上と比較して、明らかに異常を示しています。特に、伝導速度の著しい低下と、遠位刺激と近位刺激で振幅が大きく異なる伝導ブロックの存在が示唆されるため、正常ではありません。正しくは:この波形は、伝導速度と振幅の点で正常範囲から逸脱しています。選びやすい理由:もし正常範囲を正しく計算・判断できない場合、正常と誤解する可能性があります。混同注意:正常値の計算方法や基準値の認識を誤ることがあります。
- 5. 正解。波形から、遠位潜時の延長(手首刺激での応答が遅い)、神経伝導速度の著しい低下、および伝導ブロック(近位刺激時と遠位刺激時でCMAP振幅に大きな差がある、または近位刺激で反応が消失する)が示唆されます。これらは全て脱髄性疾患(例:ギラン・バレー症候群の脱髄型、慢性炎症性脱髄性多発神経炎など)に特徴的な所見です。ミエリン鞘の損傷により、電気信号の伝導効率が著しく低下するため、伝導速度が遅くなり、また伝導ブロックも発生しやすくなります。
国試ポイント
運動神経伝導検査の波形判読能力と、その所見から考えられる病態を正確に結びつける知識が問われています。特に、脱髄性病変と軸索変性性病変の鑑別が重要です。伝導速度の著しい低下や伝導ブロックは脱髄の重要な指標です。
混同注意
軸索変性と脱髄性病変の鑑別。軸索変性では主にCMAP振幅の低下が見られますが、伝導速度の著しい低下や伝導ブロックは脱髄でより顕著です。
次に同じ論点が出たら
今後この論点が出題される場合、具体的な波形データ(潜時、振幅、速度の数値)を与え、計算させた上で病態を判断させる問題、または異なるタイプの波形(例:純粋な軸索変性波形、神経筋接合部異常の反復刺激波形)を提示して鑑別させる問題が予想されます。
関連知識
運動神経伝導検査では、CMAPの振幅、遠位潜時、伝導速度、F波などが評価されます。これらの組み合わせにより、疾患のタイプ(脱髄性、軸索性、神経筋接合部異常)や部位診断を行います。脱髄性疾患の例としてはギラン・バレー症候群や慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)があります。