70歳の男性。3年前に右手の振戦によってParkinson病を発症し、在宅で治療を行っている。ADLは自立していたが、1か月前に風邪をひいてから歩く速さが遅くなり、歩行の際に一歩目が思うように前に出ず、歩き出してからも前方に転びそうになることが多いという。在宅での理学療法における歩行指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4・5番
解説
パーキンソン病患者の歩行障害、特にすくみ足や歩行開始困難、突進現象に対しては、外部からの感覚刺激(キュー)を用いることが有効です。選択肢4のように視覚的な目印(床のライン、はしごなど)を設けてそれをまたがせることや、選択肢5のように聴覚的なキュー(リズム、掛け声、メトロノームなど)を利用することは、運動のプランニングと実行を助け、歩行の開始や継続をスムーズにする効果があります。これらの方法は、意識的な制御を促し、自動的な運動プログラムの障害を補うために用いられます。一方で、選択肢1の弾性包帯や選択肢2の重錘バンドは歩行を改善する効果はなく、むしろ悪化させる可能性があります。選択肢3の一歩目を小さく踏み出す指導は、小刻み歩行を助長するため不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 弾性包帯の装着は、浮腫の軽減や血流改善に用いられますが、パーキンソン病における歩行困難、特にすくみ足や突進現象の改善には直接的な効果はありません。むしろ、関節の動きを制限し、歩行をより困難にする可能性もあります。正しくは:下肢の筋力強化運動を指導する。選びやすい理由:下肢の安定性向上に繋がるように思えるかもしれない。混同注意:下肢の支持性向上と誤解しやすい。
- 2. 足関節に重錘バンドを装着すると、下肢の振り出しが重くなり、パーキンソン病患者によく見られるすくみ足や小刻み歩行をさらに悪化させる可能性があります。転倒のリスクも高まります。正しくは:足関節の可動域訓練や筋力訓練を行う。選びやすい理由:下肢の運動感覚を刺激して歩行を改善するのではないかと考えるかもしれない。混同注意:バランス訓練などで重錘を使う場合と混同しやすい。
- 3. パーキンソン病患者の歩行では、すくみ足や小刻み歩行が特徴であり、一歩目を小さく出すと、これらの症状を助長し、歩行を開始しにくくしたり、歩幅がさらに小さくなったりする可能性があります。通常は、意識的に大きな歩幅で歩くように指導されます。正しくは:一歩目を大きく踏み出すように指導する。選びやすい理由:転倒防止のために慎重に歩かせるという意図で適切だと考えてしまう可能性がある。混同注意:転倒への恐怖から、患者自身が小さく歩こうとする行動と混同しやすい。
- 4. 正解。床に視覚的なキュー(目印)を設けることは、パーキンソン病患者のすくみ足や歩行開始困難(frozen gait)に対して非常に有効な戦略です。視覚刺激により、意識的に歩行パターンを再構築し、一歩目を踏み出しやすく、歩幅を広げることができます。正しくは:この選択肢は適切であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:特に無し。混同注意:特に無し。
- 5. 正解。聴覚的なキュー(リズム、掛け声など)も、パーキンソン病患者の歩行を改善するために有効です。リズムに合わせて歩くことで、歩行の速度やリズムを調整し、すくみ足や歩行開始困難の軽減、歩行の流暢性向上に寄与します。例えば、「1、2、1、2」と声をかける、メトロノームを使うなどが挙げられます。正しくは:この選択肢は適切であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:特に無し。混同注意:特に無し。
国試ポイント
パーキンソン病の歩行障害に対する理学療法介入の具体的内容、特にキューイング(視覚・聴覚)の有効性を理解しているか。在宅環境での応用も問われる。
混同注意
歩行障害に対する一般的なリハビリテーションと、パーキンソン病に特有の歩行障害(すくみ足、突進、小刻み歩行)に対するアプローチの違いを混同しやすい。特に、安全のために歩幅を小さくする指導が、パーキンソン病では逆効果であることを理解していないと間違えやすい。
次に同じ論点が出たら
患者の病期や症状の重症度に応じた具体的なキューイング方法の選択。薬剤調整との連携。介護者の指導。
関連知識
パーキンソン病の三大症状(振戦、固縮、無動・寡動)とその治療、レボドパ療法とウェアリングオフ・オンオフ現象、すくみ足、突進現象、仮面様顔貌、構音障害、嚥下障害、姿勢反射障害。理学療法におけるバランス訓練、ADL指導、運動療法(PNF、フレッチャーなど)。