4歳の男児。痙直型両麻痺。しばしば割り座で座る。バニーホッピングと交互性パターンの四つ這いを併用して移動する。PCW〈postural control walker〉を用いた歩行練習を実施している。この児に対する遊びの指導内容で最も適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
この男児は痙直型両麻痺で、しばしばW座りを行い、バニーホッピングや交互性の四つ這いで移動しています。PCW(postural control walker)を用いた歩行練習も実施中であることから、体幹の安定性や股関節の伸展機能、そして立位への移行能力の向上が重要な課題と考えられます。W座りは股関節内転・内旋位を助長し、体幹の安定性にも影響を与えます。膝立ち位は、股関節の伸展を促し、体幹の抗重力伸展活動やバランス能力の向上に非常に有効な姿勢です。この姿勢で積み木遊びを行うことで、上肢の操作を伴う体幹の動的安定性やリーチ動作が促され、座位から立位への移行、PCWでの歩行能力向上に向けた基礎的な運動能力の獲得に繋がり、最も適切な遊びの指導内容と言えます。
選択肢ごとの解説
- 1. 腹臥位は体幹伸展を促しますが、この児はW座りをしばしばとり、四つ這いを併用していることから、より高次の姿勢制御を促す遊びが適切と考えられます。また、輪投げは上肢のリーチ動作を促しますが、体幹の安定性向上には直接的ではありません。正しくは:この児童は体幹の安定性が課題であるため、腹臥位での輪投げはより高次のバランス能力や体幹の回旋を促すには不十分です。選びやすい理由:腹臥位での遊びは体幹の伸展を促すため、一見良さそうに見えますが、W座りから脱却し、より高い姿勢制御を促すには、より重力に対する抗重力位でのバランス訓練が必要になります。混同注意:腹臥位での活動は体幹伸展や抗重力伸展活動を促しますが、この児童のW座りや移動様式から考えると、より上位の姿勢制御、特に膝立ち位や立位への移行を促す介入が望ましいです。
- 2. 座位でのボールまたぎは、体幹の側方バランスや股関節の分離運動を促しますが、W座りを常用する児童の場合、座位の安定性を高めることは重要であるものの、W座りから脱却し、さらに高次の姿勢制御、特に抗重力位でのバランス能力を養うには、より挑戦的な姿勢での活動が求められます。正しくは:座位の安定性向上に寄与する可能性はありますが、W座りの改善や、より高い抗重力位でのバランス能力の獲得には直接つながりにくいです。選びやすい理由:W座りでの座位保持が多いため、座位のバランス練習は必要に思えます。しかし、ボールまたぎは座位の側方安定性や股関節の開閉に焦点を当てますが、W座りからの脱却や膝立ち位・立位への移行を促進するものではありません。混同注意:座位でのボールまたぎは体幹の側方動揺性や股関節の運動を促しますが、W座りからの改善や、膝立ち位・立位といったより高次の姿勢での安定性を獲得するためには、より挑戦的な環境設定が必要です。
- 3. 正解。膝立ち位は、W座りから脱却し、股関節の伸展を促し、体幹の安定性向上とバランス能力の発展に非常に有効な姿勢です。また、積み木遊びは上肢のリーチ、操作を伴い、さらに体幹の動的安定性を要求するため、この児の現在の課題に対して最も適切です。PCWでの歩行練習と合わせ、立位への準備段階として重要な意味を持ちます。正しくは:これは適切な選択肢です。選びやすい理由:他の選択肢も遊びを通じた介入ですが、この児童の運動発達段階と課題に対して、膝立ち位での活動が最も機能的な改善に直結します。混同注意:膝立ち位は、座位から立位への移行過程で重要な姿勢であり、股関節の伸展、体幹の抗重力伸展活動、バランス能力の向上に直接的に寄与します。W座りの改善やPCWでの歩行訓練の促進に繋がる点で、他の選択肢よりも優れています。
- 4. 椅子座位でのボール遊びは、座位の安定性が確保された状態での上肢操作を促しますが、W座りを常用する児に対しては、より能動的に体幹を使い、不安定な状況下でのバランス能力を養う遊びが求められます。椅子座位は安定しすぎており、体幹の動的安定性の向上には不十分です。正しくは:椅子座位は安定性が高いため、体幹の動的安定性や高次のバランス能力を促すには不十分です。選びやすい理由:椅子座位での遊びは安全性が高く、導入しやすいですが、W座りという特定の姿勢の問題を抱える児に対して、より積極的な姿勢制御の介入が必要です。混同注意:椅子座位は安定した姿勢であり、体幹の抗重力伸展活動や動的なバランス反応を積極的に引き出すには適していません。W座りからの脱却や、より高次の姿勢制御を促すには、より不安定な環境下での活動が望ましいです。
- 5. PCWは歩行訓練に用いられますが、遊びの指導内容として、PCWの使用自体を挙げるのは直接的な遊びのアイデアではありません。PCWを活用した遊びは考えられますが、選択肢の記述では具体性に欠け、また、この児の課題であるW座りからの脱却や膝立ち位の獲得といった、歩行前段階の基礎的な姿勢制御能力の向上に直接結びつくものではありません。正しくは:PCWは歩行器であり、それ自体が遊びの指導内容というよりは、遊びの手段として利用されるべきです。この選択肢では具体的な遊びの内容が不明確です。選びやすい理由:PCWでの歩行練習を実施中であるため、PCWを用いた活動は適切に思えます。しかし、「PCWでの遊び」という表現では具体的でなく、またW座りからの脱却という根本的な課題に対する遊びの指導としては、より身体活動を促す内容が求められます。混同注意:PCWは歩行練習のツールですが、遊びの指導内容としては、どのような遊びをPCWと組み合わせて行うのかが重要です。この選択肢では具体的な遊びの内容が示されておらず、この児童の運動発達段階や課題に対する直接的な遊びのアイデアとしては不十分です。
国試ポイント
痙直型両麻痺の児童に対する運動発達段階と、それに合わせた遊びを通じた治療的介入の知識が問われています。W座りの問題点と、それを改善するための姿勢、特に膝立ち位の重要性を理解しているかどうかが鍵となります。
混同注意
腹臥位や座位での遊びも体幹の安定性向上に寄与する可能性はありますが、W座りからの脱却やより高次の姿勢制御を促すためには、膝立ち位といった抗重力位での活動がより効果的である点で、他の選択肢と迷う可能性があります。
次に同じ論点が出たら
この児童が膝立ち位での積み木遊びに慣れてきたら、次はさらにバランスを要する膝立ち位でのリーチ動作の拡大、あるいは片膝立ち位への移行、そして立位での活動へと進めていくことが考えられます。
関連知識
W座りの問題点(股関節の内旋、股関節筋群の短縮、体幹の安定性低下)、痙直型両麻痺における姿勢制御の発達、膝立ち位の治療的意義、遊びを通じた理学療法介入の原則。