75歳の女性。右利き。脳梗塞を発症し救急車で搬入された。発症翌日に症状の悪化を認めた。発症3日目の頭部MRIの拡散強調像(別冊No. 2)を別に示す。最も出現しやすい症状はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
提示された頭部MRIの拡散強調像では、左大脳半球の広範囲に高信号域が認められ、これは急性期の脳梗塞を示唆しています。大脳半球の梗塞、特に運動野を含む領域の広範囲な障害は、対側(右側)に片麻痺を引き起こす可能性が最も高いです。患者は右利きですが、右片麻痺は利き手に関わらず出現しうる主要な症状です。また、左半球は言語優位半球であることが多く(特に右利きの場合)、失語症も起こりえますが、画像所見から運動野への影響が非常に大きいことが読み取れるため、最も出現しやすい症状としては片麻痺が考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。提供されたMRI画像は、左大脳半球の広範囲にわたる高信号域を示しており、これは脳梗塞の兆候と考えられます。左大脳半球の障害、特に運動野を含む領域の梗塞は、対側(右側)の片麻痺を引き起こす可能性が最も高いです。患者は右利きですが、右片麻痺は利き手に関わらず出現しうる主要な症状です。選びやすい理由:他の選択肢も脳梗塞の一般的な症状ですが、画像所見から直接的に最も強く示唆されるのは片麻痺です。混同注意:失語症も左半球障害で起こりえますが、運動野の広範な関与が示唆されるため、まずは身体運動機能への影響が最優先されます。
- 2. 失語症は左大脳半球の優位半球、特にBroca野やWernicke野の損傷によって引き起こされることがあります。本症例の画像では左半球の広範囲な梗塞が示唆されており、失語症の出現も十分に考えられます。しかし、運動野の関与も強く示唆されるため、片麻痺の方がより直接的かつ確実な症状として考えられます。正しくは:失語症は左半球梗塞で起こりうる症状ですが、運動麻痺と比べた場合、画像所見だけでは『最も』出現しやすいとは断定しにくいです。選びやすい理由:左半球の広範囲な梗塞は失語症の原因にもなるため、非常に迷いやすい選択肢です。混同注意:優位半球の障害なので失語症は疑われますが、運動皮質への影響が広範囲に及ぶことがMRIで示唆されているため、片麻痺の方が『最も』出現しやすい症状として適切です。
- 3. 運動失調は主に小脳や脳幹、または感覚路の障害によって引き起こされます。提示されたMRI画像は左大脳半球の広範な梗塞を示唆していますが、小脳や脳幹に直接的な病変があるとは読み取れません。大脳病変による失調も存在しますが、画像所見から『最も』出現しやすい症状としては片麻痺に劣ります。正しくは:運動失調は大脳半球の病変でも起こりえますが、小脳や脳幹病変に比べるとその頻度は低いと考えられます。選びやすい理由:脳梗塞は広範な症状を引き起こすため、運動失調も可能性の一つとして考えがちです。混同注意:運動失調は小脳や脳幹の病変が主で、大脳皮質梗塞では比較的稀です。
- 4. 嚥下障害は脳幹、両側大脳半球、または特定の脳神経の障害によって引き起こされることがあります。左大脳半球の梗塞でも嚥下関連神経路に影響を及ぼす可能性はありますが、画像所見から直接的に嚥下中枢への重篤な影響が示されているわけではありません。一般的に、片麻痺の方がより頻繁かつ直接的に観察される症状です。正しくは:嚥下障害は脳梗塞後に起こりうる症状ですが、画像所見から『最も』出現しやすい症状としては片麻痺の方が適切です。選びやすい理由:脳梗塞患者には嚥下障害がよく見られるため、選択肢として魅力的です。混同注意:片麻痺や失語症に比べると、嚥下障害は両側性病変や脳幹病変でより顕著になる傾向があります。
- 5. 視野障害は、後頭葉の視覚野や視放線など、視覚路の障害によって引き起こされます。左大脳半球の広範な梗塞は、視覚路にも影響を及ぼす可能性があります(例:右同名半盲)。しかし、MRI画像では運動野への影響も強く示唆されており、この状況で『最も』出現しやすい症状としては片麻痺が優先されます。正しくは:視野障害も脳梗塞の一般的な症状ですが、画像で示唆される広範囲な運動野の関与から、片麻痺が最も出現しやすいと言えます。選びやすい理由:脳梗塞の部位によっては視野障害も頻繁に起こるため、有力な選択肢に見えます。混同注意:右同名半盲は左後頭葉の障害で起こりますが、梗塞が広範囲なため、運動野への影響である片麻痺がより普遍的な症状として考えられます。
国試ポイント
脳画像(MRI拡散強調像)から脳梗塞の病変部位を特定し、その部位の機能解剖学に基づいて最も出現しやすい症状を推測する能力が問われています。特に、大脳半球の広範囲な病変が身体の機能に与える影響(対側片麻痺、失語症など)を理解していることが重要です。
混同注意
左半球の広範な梗塞であるため、失語症も非常に可能性が高い症状であり、迷いやすい選択肢です。しかし、運動野の広範な関与が示唆される場合、運動機能の障害である片麻痺が『最も』出現しやすい症状として優先されることが多いです。
次に同じ論点が出たら
今後、この患者に対してどのようなリハビリテーション介入が優先されるかを検討する際に、出現している具体的な症状に基づいて判断する必要があります。
関連知識
脳の機能局在(運動野と片麻痺、Broca野・Wernicke野と失語症、視覚野と視野障害など)、MRI拡散強調像での急性期脳梗塞の所見、優位半球の概念。