下肢の異常と金属支柱付き短下肢装具の足継手設定との組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
立脚期に膝折れが生じる場合、これは足関節が過剰に背屈し、下腿が前方へ大きく傾くことで、膝関節に屈曲モーメントが生じやすくなるためです。足継手を前方制動(背屈制限)に設定することで、下腿の過度な前方傾斜を防ぎ、膝関節の安定性を高め、膝折れを抑制することができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 尖足は足関節の底屈位を指し、この状態では後方への過剰な底屈を制限する(背屈を許容する)ために背屈補助や底屈制動が適切です。前方制動は、足関節の背屈を制限する設定であり、尖足の矯正には効果的ではありません。正しくは:尖足に対しては底屈制動、または背屈補助が適切です。選びやすい理由:「制動」という言葉から、何らかの動きを制限して安定させる、という大まかな理解で選んでしまう可能性があります。混同注意:足関節の底屈制限(前方制動)と、底屈位からの背屈補助(足関節の機能的改善)を混同しやすいです。
- 2. 反張膝は膝関節の過伸展を指し、短下肢装具では通常、足関節を軽度背屈位に固定したり、底屈を制限(背屈方向へ誘導)することで、膝関節の過伸展を抑制します。前方制動は足関節の背屈を制限する設定であり、むしろ反張膝を助長する可能性があります。正しくは:反張膝に対しては、足関節を軽度背屈位に固定するか、底屈制動(背屈を許容し、前方への荷重移動を促す)が適切です。選びやすい理由:「制動」という言葉から、膝の異常を抑制するという連想で選んでしまうかもしれません。しかし、足継手の制動方向の理解が不足していると誤ります。混同注意:足関節の背屈制動(前方制動)が、膝関節の過伸展(反張膝)にどのように影響するかという因果関係を混同しやすいです。
- 3. 正解。立脚期に膝折れ(膝関節が屈曲しすぎる)が生じる場合、これは足関節の背屈が過剰になるか、または背屈制動が不十分なために、下腿が前方へ過度に傾斜することで引き起こされることがあります。この場合、足継手を前方制動(足関節の背屈を制限)に設定することで、下腿の過度な前方傾斜を抑制し、膝関節の安定化(膝折れの防止)を図ることができます。選びやすい理由:膝折れという症状が、装具によってどのように改善されるかを理解していれば正答できます。一見すると足関節の制動と膝関節の症状の関係が分かりにくいかもしれませんが、バイオメカニクスの知識があれば選択しやすいです。混同注意:膝折れの原因が足関節の動きとどのように関連するか、特に下腿の傾斜と膝関節への影響を理解していないと迷う可能性があります。
- 4. 下腿三頭筋の痙縮は、足関節の底屈位を強める傾向があります。この状態で遊動(自由に動かす)設定にすると、痙縮の影響でさらに底屈が強まり、尖足位が助長されたり、立位・歩行の安定性が損なわれたりする可能性があります。痙縮に対しては、通常、足関節の底屈を制限し、背屈位を保持するような制動(底屈制動または背屈補助)が望ましいです。正しくは:下腿三頭筋の痙縮に対しては、底屈制動または背屈補助が適切です。選びやすい理由:痙縮があるからこそ、動きを制限するのではなく「遊動」させた方が良いのでは、と考えてしまうかもしれませんが、これは誤りです。痙縮による異常な肢位や運動を抑制するために装具を使用します。混同注意:痙縮に対する装具の役割(抑制か促進か)を混同しやすいです。
- 5. 前脛骨筋の弛緩性麻痺は、足関節の背屈が困難になり、下垂足(足関節の底屈位)を引き起こします。この状態で遊動設定にすると、遊脚期に足先が地面に引っかかりやすくなったり、立脚期に足関節の安定性が損なわれたりします。前脛骨筋麻痺に対しては、下垂足の防止と足関節の安定化のために、背屈補助や底屈制動(背屈を容易にする)が適切です。正しくは:前脛骨筋の弛緩性麻痺に対しては、背屈補助または底屈制動が適切です。選びやすい理由:麻痺だから動かせた方が良いという誤解から、遊動を選択してしまうかもしれません。しかし、装具の目的は麻痺による機能不全を補うことです。混同注意:麻痺に対する装具の役割(代償か促進か)と、足関節の特定の筋肉の機能と足継手の設定の関係を混同しやすいです。
国試ポイント
本問題は、下肢の主要な異常歩行パターンと、それを補償するための短下肢装具(AFO)における足継手の設定(特に制動方向)に関する基本的なバイオメカニクス的理解を問うものです。各症状と足継手設定の間の因果関係を正確に把握しているかどうかが鍵となります。
混同注意
足継手の「前方制動」と「後方制動」がそれぞれ足関節のどの動き(背屈・底屈)を制限するのか、また、それが膝関節の動きにどう影響するのかを混同しやすいです。特に、反張膝と膝折れのような対照的な膝の症状に対して、足関節の制動がどのように作用するかを正確に理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、短下肢装具の足継手設定だけでなく、膝継手や股継手を含む長下肢装具や体幹装具の選択と調整について問われる可能性があります。また、具体的な疾患(脳卒中、脊髄損傷、末梢神経麻痺など)に起因する歩行異常と装具の適合について、症例問題として出題されることも考えられます。
関連知識
短下肢装具の機能分類(足関節の可動性に基づく分類:遊動、背屈補助、底屈制動、背底屈制動など)、各病態(尖足、下垂足、反張膝、膝折れなど)とそれに対する装具の役割、足関節と膝関節の連動性(グラウンドリアクションフォースと関節モーメントの関係)