人工呼吸器を使用している重症心身障害児の気管吸引を実施する上で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・2番
解説
気管吸引は、気道内分泌物の除去に有効な手技ですが、患者に大きな生理的ストレスを与える可能性があり、特に人工呼吸器を使用している重症心身障害児では、そのリスク管理がより重要になります。選択肢1の「吸引後の聴診」と選択肢2の「吸引中のSpO2確認」は、吸引の効果と安全性を評価するために不可欠な項目です。聴診により吸引の効果を確認し、SpO2モニタリングにより低酸素血症などの合併症を早期に発見し、適切な対応をとることが求められます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。気管吸引後に胸部を聴診することで、吸引の効果(気道開通性の改善)や、吸引による気管・気管支への刺激による異常音の有無(例:気管支攣縮など)を確認できます。これは安全かつ効果的な吸引手技の評価に不可欠です。選びやすい理由:すぐに次の処置に移りたくなりがちですが、吸引後の評価は重要です巻混同注意:吸引前後の呼吸音変化の確認の重要性を見落としやすいです。
- 2. 正解。気管吸引は、一時的に気道を閉塞し、肺内の酸素を吸引するとともに迷走神経を刺激する可能性があるため、低酸素血症や徐脈などの合併症を引き起こすリスクがあります。そのため、吸引中のSpO2モニタリングは、これらの合併症を早期に発見し、対処するために極めて重要です。選びやすい理由:吸引手技に集中しすぎてモニター確認を怠る可能性があります。混同注意:SpO2だけでなく心拍数や呼吸数の確認も重要ですが、特に低酸素血症の指標であるSpO2は吸引中のリスク管理に必須です。
- 3. 吸引圧が過度に高いと、気道粘膜への損傷や出血のリスクが増大します。一般的に、成人では20 kPa (150 mmHg) 程度が上限とされ、小児ではより低い圧に設定するのが適切です。重症心身障害児では特に気道が脆弱である可能性が高いため、過剰な吸引圧は避けるべきです。正しくは:吸引圧は、気道粘膜を損傷しないよう、必要最低限かつ適切な範囲(例:小児で10-13 kPa、成人で13-20 kPa程度)に設定するべきです。選びやすい理由:痰の除去効果を高めたい一心で圧を高く設定しがちです。混同注意:痰の粘稠度が高い場合に吸引力を上げたくなる心理と、気道粘膜保護の重要性が混同されがちです。
- 4. 吸引カテーテルを気管分岐部を越えて深く挿入すると、片肺への選択的挿入や気管支粘膜の損傷、さらに刺激による気管支攣縮や無気肺のリスクが高まります。カテーテルは気管分岐部手前で引き上げるか、反射を利用して咳を誘発する程度に留めるのが適切です。正しくは:吸引カテーテルは気管分岐部まで到達させず、それよりも手前で留めるか、抵抗を感じたらすぐに引き抜くべきです。選びやすい理由:奥まで挿入すればより多くの痰が吸引できると考えやすいです。混同注意:深い位置にある痰も吸引したいという思いと、気道損傷のリスク管理が混同しやすいです。
- 5. 1回の吸引時間が長すぎると、低酸素血症や迷走神経刺激による徐脈、不整脈のリスクが著しく高まります。特に人工呼吸器管理下の患者では、その間の換気が中断されるため、影響はさらに大きいです。吸引時間は原則として10~15秒以内にとどめるべきです。正しくは:気管吸引は、1回の吸引につき10~15秒以内で行うべきです。選びやすい理由:効率的に痰を除去したい、すべての痰を取り切りたいという気持ちから長時間吸引してしまいがちです。混同注意:十分な吸引効果を得たいという目的と、患者への生理的影響のバランスが混同されやすいです。
国試ポイント
人工呼吸器管理下の患者、特に小児や重症心身障害児に対する気管吸引の基本的な手技とリスク管理に関する知識が問われています。安全な吸引圧、吸引時間、カテーテルの挿入深度、および吸引中のモニタリングと吸引後の評価の重要性がポイントとなります。
混同注意
吸引操作の効率性を高めることと、患者の生理的安全性・快適性を確保することのバランスが問われます。特に、痰の除去という目的達成のために、過度な吸引圧や長時間吸引、深部へのカテーテル挿入を選んでしまいやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、気管吸引における「安全性(合併症予防)」と「効果的な実施」の二つの側面から各選択肢を評価する視点を持つと良いでしょう。特に、患者の特性(小児、重症心身障害)に応じた配慮がなされているかを確認することが重要です。
関連知識
気管吸引の合併症(低酸素血症、徐脈、不整脈、気道粘膜損傷、感染)、吸引圧の適切な設定、吸引カテーテルの種類と選択、無菌操作の重要性、吸引前後の酸素化の重要性。