急性期の肩手症候群への理学療法として正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
急性期の肩手症候群では、炎症と疼痛が強く、過度な刺激は避ける必要があります。しかし、安静にしすぎると関節拘縮や筋力低下を招くため、疼痛を誘発しない範囲で、肩関節周囲筋の適切な使い方を促し、アライメントを保持するための「再教育」が最も適切です。これは機能回復の土台を築き、二次的な合併症を予防する上で重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. CI療法は、主に慢性期の麻痺や運動制限がある場合に、麻痺側の使用を強制することで脳の可塑性を促し機能回復を図る治療法です。急性期の肩手症候群においては、炎症や疼痛が強く、このような強い負荷をかける治療は症状を悪化させる可能性があります。正しくは:急性期には炎症と疼痛の管理が優先され、患部への過度な負荷は避けるべきです。選びやすい理由:麻痺や運動制限に対する治療法として知られているため、選択肢として魅力を感じるかもしれませんが、時期が異なります。混同注意:慢性期の脳卒中後の上肢機能改善に対するリハビリテーション戦略と混同しやすいです。
- 2. コッドマン体操は、主に肩関節の可動域改善や拘縮予防に用いられますが、急性期の肩手症候群では炎症や強い疼痛が伴うため、積極的な運動は症状を悪化させる可能性があります。特に痛みを伴う振り子運動は避けるべきです。正しくは:急性期には安静と炎症、疼痛の管理が優先され、過度な可動域運動は控えるべきです。選びやすい理由:肩関節の運動療法として一般的なため、選択しやすいかもしれません。しかし、急性期には疼痛管理が最優先です。混同注意:肩関節周囲炎や拘縮に対する一般的な運動療法と混同しやすいですが、肩手症候群の急性期は炎症が強く、運動耐容性が低い点が異なります。
- 3. 正解。急性期の肩手症候群では、痛みを伴う運動を避けつつ、適切な関節アライメントの維持や、痛みのない範囲での軽い運動を通して、肩関節周囲筋の協調性や安定性を促す「再教育」が重要です。これは疼痛の軽減と機能回復の土台作りにつながります。具体的には、疼痛を誘発しない範囲での自動運動や、セラバンド等を用いた抵抗運動、姿勢保持訓練などが含まれます。正しくは:これは適切な対応です。選びやすい理由:「再教育」という言葉が少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、急性期における疼痛管理と機能維持のバランスを考慮した、適切なアプローチを示しています。混同注意:積極的なストレッチや筋力増強運動と混同しやすいですが、「再教育」は疼痛を誘発しない範囲での動きの質や協調性の改善に主眼を置きます。
- 4. BFOは、重度の肩・肘の麻痺がある場合(例えば脊髄損傷や筋ジストロフィーなど)に、上肢の重さを支え、残存する筋力で食事や作業を補助するための装具です。肩手症候群は疼痛や浮腫、関節拘縮が主症状であり、重度の麻痺を伴う疾患ではないため、BFOは適応ではありません。良肢位の保持は重要ですが、BFOは適切な手段ではありません。正しくは:良肢位保持は重要ですが、BFOではなく、枕やポジショニングクッション、簡易的なアームスリングなどを用いて行うべきです。選びやすい理由:良肢位の保持が重要であるという点は正しいですが、その手段として提示されているBFOが不適切であるため誤りです。良肢位という言葉に引きつけられやすいです。混同注意:良肢位保持の重要性と、BFOの本来の適応疾患とを混同しやすいです。
- 5. 急性期の肩手症候群では、炎症と強い疼痛が存在するため、積極的な他動伸張運動は痛みを増悪させ、炎症を助長する可能性があります。拘縮予防のために軽度な運動は必要ですが、「積極的な」伸張運動は急性期には不適切です。正しくは:急性期は、疼痛を誘発しない範囲での自動介助運動や、軽度の自動運動に留めるべきです。積極的な伸張運動は、慢性期に入り炎症や疼痛が軽減してから徐々に導入します。選びやすい理由:拘縮予防の重要性を認識している学生が、可動域維持のために必要だと考えて選択しやすいです。しかし、急性期における疼痛管理が最優先であるという視点が欠けています。混同注意:肩関節拘縮に対するリハビリテーション(例:凍結肩の慢性期)と混同しやすいですが、肩手症候群の急性期は炎症が強く、運動耐容性が著しく低い点が異なります。
国試ポイント
この問題は、急性期の炎症性疾患に対する理学療法の原則(特に疼痛管理と段階的なアプローチ)と、各治療法の適応時期を理解しているかを問うものです。安易な積極的介入が症状悪化につながることを理解しているかが重要です。
混同注意
急性期と慢性期の治療法の違い、および各運動療法の適応疾患・病期を混同しやすいです。特に、疼痛がある状態での運動療法の是非について誤解が生じやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、まず「急性期」「慢性期」といった病期に注目し、その病期における炎症や疼痛の有無、組織の脆弱性を考慮して、治療法の適応を判断します。特に「積極的な」介入には慎重であるべきです。
関連知識
肩手症候群の病態生理(CRPS type I)、炎症期の治療原則、良肢位保持の重要性、各運動療法の適応と禁忌、疼痛評価と運動負荷量の設定。