松葉杖歩行を行うために必要な機能と上肢の筋との組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
松葉杖の脇当ては、松葉杖を体幹に安定させることで、体重支持と推進力を効率的に伝達する役割があります。大胸筋は上腕骨の内転作用により、上腕を体幹に引き寄せ、脇当てをしっかりと固定するために重要な筋肉です。これにより、松葉杖が体幹から離れるのを防ぎ、安定した松葉杖歩行を可能にします。
選択肢ごとの解説
- 1. 体重支持は主に肩関節周囲の筋肉(広背筋、大胸筋、上腕三頭筋など)と、松葉杖に体重を伝えるための上腕骨遠位部への圧縮負荷によって行われます。上腕二頭筋は肘関節の屈曲と前腕の回外に関与し、直接的な体重支持の主動作筋ではありません。正しくは:体重支持は広背筋、大胸筋、上腕三頭筋などが関与します。選びやすい理由:上腕二頭筋は力こぶとして知られ、腕の筋肉として想起されやすいため、体重支持という力強いイメージと結びつけやすいかもしれません。混同注意:上腕二頭筋が肘屈曲の主要筋であるため、体重を支える際に肘が少し曲がる動作と混同しやすいですが、体重を支える力自体は主に肩関節伸展筋や上腕三頭筋の肘伸展作用が重要です。
- 2. 握り手を握る(把持する)主な筋肉は、深指屈筋や浅指屈筋などの指の屈筋群です。橈側手根伸筋は手関節の背屈(手首を甲側に曲げる)と橈屈(親指側に曲げる)に関与し、指を握る動作には直接関与しません。正しくは:握り手の把持は、主に深指屈筋、浅指屈筋などの指屈筋群によって行われます。選びやすい理由:橈側手根伸筋は手首の安定に寄与するため、握り手を使う際の安定性という点で関連性を感じやすいかもしれませんが、直接的な把持筋ではありません。混同注意:手関節の安定と指の屈曲・伸展機能が混同されやすいです。橈側手根伸筋は手首の伸筋群の一部であり、指の屈曲には直接関与しません。
- 3. 正解。脇当て(腋窩部)は、松葉杖を体幹に固定し、松葉杖を通じて床からの反力を受け止める重要な部位です。大胸筋は、上腕骨を体幹に引き寄せる(内転)、内旋、水平内転の作用があり、松葉杖の脇当てを体に密着させ、安定させる役割を担います。これにより、松葉杖が外側に開くのを防ぎ、体重を効率的に伝達できます。正しくは:この組み合わせは正しいです。選びやすい理由:脇当ての固定は直感的に肩や背中の筋肉が関わると思われがちですが、大胸筋の強力な内転作用が脇当てを体幹に引き寄せるのに重要です。混同注意:広背筋も上腕の内転作用を持ちますが、大胸筋は体幹前面から上腕に付着しており、脇当てを体幹に密着させるのに特に重要な筋肉です。
- 4. 松葉杖を前方に振り出す動作は、主に肩関節の屈曲(三角筋前部、烏口腕筋など)や伸展(広背筋、大円筋などが荷重から解放された腕を振る場合)、または体幹の動きによって行われます。肩甲下筋は肩関節の内旋筋であり、松葉杖を前方に振り出す主動作筋ではありません。正しくは:松葉杖の前方への振り出しは、主に肩関節の屈曲筋(三角筋前部、烏口腕筋など)や体幹の推進力によって行われます。選びやすい理由:肩甲下筋はローテーターカフの一つであり、肩関節の動きに関わるため、一見すると関連があるように思えるかもしれません。混同注意:肩関節の様々な動きとその主動作筋が混同されやすいです。肩甲下筋は内旋に特化しており、前方への振り出し(屈曲)の主動作筋ではありません。
- 5. 握り手を握る際に手関節を安定させる(固定する)主な筋肉は、橈側手根伸筋や尺側手根伸筋などの手関節伸筋群です。これにより、指の屈筋群が効率的に作用できるようになります(把持を補助)。浅指屈筋は指のPIP関節(中間指節関節)を屈曲させる筋肉であり、手関節の固定には直接関与しません。正しくは:握り手を握ったときの手関節の固定は、主に橈側手根伸筋や尺側手根伸筋などの手関節伸筋群によって行われます。選びやすい理由:浅指屈筋は指を曲げる強力な筋肉であり、握る動作に非常に重要であるため、握る→固定という連想で選んでしまいがちです。混同注意:指の屈曲筋群と手関節の伸展・固定筋群の役割が混同されやすいです。握る動作には指の屈筋群と同時に手関節の伸筋群による固定が不可欠です(フレキシブルに動きやすい指と、それを支える固定された手関節のバランス)。
国試ポイント
松葉杖歩行における各上肢筋の具体的な役割と、その機能的解剖学の理解が問われています。単なる筋の作用だけでなく、実際の動作(歩行)における筋の協調・固定作用を把握しているかが重要です。
混同注意
松葉杖歩行のような複雑な動作では、複数の筋肉が協調して働きます。そのため、ある特定の動作に対する主動作筋だけでなく、補助筋や固定筋の役割まで理解していないと、誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。特に、関連するが主ではない筋(例:体重支持と上腕二頭筋、握り手把持と橈側手根伸筋)が誤答選択肢として設定されやすいです。
次に同じ論点が出たら
次回同じ論点が出た場合、松葉杖歩行だけでなく、杖歩行や平行棒歩行など、他の補助具を用いた歩行における上肢筋の役割が問われる可能性があります。また、車椅子駆動や移乗動作など、上肢の体重支持やプッシュ動作における主要筋の理解も重要です。単一の筋作用だけでなく、複合的な動作における協調的な筋の働きに着目して学習する必要があります。
関連知識
松葉杖のタイプ(腋窩型、前腕型)、松葉杖歩行のパターン(2点歩行、3点歩行、4点歩行、振り出し歩行など)、各歩行パターンにおける上肢・体幹・下肢の協調運動、および松葉杖の適切な長さの調整方法。また、上肢の各筋肉の起始・停止・作用といった解剖学的知識の応用。