78歳の男性。肝癌に対する開腹術後2日。術前評価でBMI 17.0、% 1秒量70 %、%肺活量75 %、喫煙歴はBrinkman指数1,000であった。呼吸器合併症を予防するための理学療法で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
この患者は78歳と高齢で、BMI17.0と低栄養状態、さらに%1秒量70%、%肺活量75%と肺機能が低下しており、Brinkman指数1,000という重度の喫煙歴から慢性閉塞性肺疾患(COPD)の合併が強く示唆されます。このようなリスクの高い患者において、口すぼめ呼吸は呼気時の気道虚脱を防ぎ、換気効率を向上させ、二酸化炭素貯留を防ぐ効果があるため、呼吸器合併症予防に最も適切です。他の選択肢は、不適切であるか、効果が限定的であるか、または早期離床の原則に反します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。口すぼめ呼吸は、気道内圧を陽圧に保ち、気道虚脱を防ぐことで、換気効率を改善し、二酸化炭素の排出を促進します。特に喫煙歴が長く、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクが高い患者にとって、肺の過膨張を軽減し呼吸困難感を和らげる効果があります。術後の呼吸機能低下が懸念される状況では、効果的な呼吸法として推奨されます。
- 2. ベッドの頭側挙上は、呼吸困難の軽減や誤嚥性肺炎の予防に有効ですが、10度という角度は非常に小さく、その効果は限定的です。一般的には、少なくとも30度以上の挙上が効果的とされています。特に術後の患者では、痰の喀出を促し、肺の拡張を助けるためには、より高い角度の挙上が推奨されます。正しくは:ベッドの頭側を30度以上挙上する。選びやすい理由:頭側挙上自体は呼吸器合併症予防に有効なため、選択肢として間違いではないと感じやすい。混同注意:適切な挙上角度の認識と、低い角度では効果が限定的である点。
- 3. 満腹時の運動は、消化器系への血流集中により消化不良を引き起こしたり、腹部の膨満感が増すことで横隔膜の動きが制限され、呼吸運動を妨げたりする可能性があります。また、嘔気や嘔吐のリスクを高め、誤嚥につながることもあります。食後すぐの激しい運動は避けるべきです。正しくは:食前や食後しばらく経ってから、空腹時に運動するように指導する。選びやすい理由:運動自体は呼吸機能改善に有効であるため、運動を促すこと自体は正しいと感じやすい。混同注意:運動のタイミングと、消化器への影響。
- 4. 術後の患者では、気管内の分泌物が貯留しやすいため、効果的な咳は気道クリアランスを保ち、無気肺や肺炎といった呼吸器合併症の予防に極めて重要です。創部の痛みは咳を阻害する要因ですが、痛みを軽減する対策(鎮痛薬の使用、創部を抑えるなど)を講じた上で、積極的に効果的な咳を促すべきです。正しくは:創部を支持するなど痛みを軽減した上で、積極的に効果的な咳をするように指導する。選びやすい理由:創痛が強いと咳が困難であるという現状を反映しているため、一見正しい行動に見える。混同注意:痛みの管理と、呼吸器合併症予防の優先順位。
- 5. 術後の早期離床は、呼吸器合併症だけでなく、深部静脈血栓症や筋力低下の予防にも非常に重要です。術後1週間もベッド上での体位排痰法に限定することは、早期離床の原則に反します。患者の状態に応じて可能な範囲で早期からの離床や座位、歩行を促し、体位排痰法も積極的に行いつつ、活動量を増やすことが重要です。正しくは:術後早期から積極的に離床を促し、体位排痰法と合わせて活動量を増やす。選びやすい理由:体位排痰法自体は呼吸器合併症予防に有効なため、行わないよりは良いと感じやすい。また、術後早期は安静が必要というイメージから、ベッド上安静が安全策に見える。混同注意:体位排痰法という手法の有効性と、早期離床の重要性。
国試ポイント
高齢、低栄養、肺機能低下、重喫煙歴といった呼吸器合併症のリスク因子を持つ術後患者に対する、適切な呼吸理学療法の選択が問われています。特に慢性呼吸器疾患を持つ患者への口すぼめ呼吸の有効性に関する知識が重要です。
混同注意
各選択肢が個々には呼吸器管理の一環として用いられるものもあるため、状況と優先順位を考慮せずに選択してしまうと誤答につながる可能性があります。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の問題が出た際には、患者の基礎疾患や術前リスク因子(特にCOPDの合併を示唆する情報)、術後の病態生理、そして各呼吸理学療法介入の生理学的効果と適用条件を詳細に分析することが求められます。
関連知識
術後呼吸器合併症のリスク因子(高齢、喫煙、肥満/低栄養、既往歴など)、術後理学療法の基本原則(早期離床、体位変換、深呼吸、咳、痛みの管理)、口すぼめ呼吸の生理学的効果、COPD患者への呼吸指導。