70歳の女性。COPD。自宅療養中でADLは自立しているが、自宅内の動作でたびたび息切れが生じている。呼吸困難感を減少させる生活指導で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
COPD患者の呼吸困難感軽減のための生活指導では、呼吸筋への負担を減らし、呼吸効率を上げる動作が重要です。腕を高く挙上する動作は胸郭の動きを制限し、呼吸補助筋の負担を増大させるため、洗濯物を低い位置に干すことでこれを回避できます。他の選択肢は、いずれも呼吸困難感を増悪させる可能性のある不適切な指導です。
選択肢ごとの解説
- 1. COPD患者では、仰向けで寝ると呼吸が苦しくなることがあります。また、布団は起き上がり動作がベッドに比べて負担が大きく、呼吸筋への負荷が増大する可能性があります。上半身を少し起こした状態で寝られるベッドの方が、呼吸が楽になることが多いです。正しくは:寝具には、上半身の角度を調整できるリクライニング機能付きのベッドを使用する。選びやすい理由:日本の一般的な寝具であり、生活習慣を変える必要がないため、そのまま勧めてしまいがちかもしれません。混同注意:健康な人にとっての一般的な生活習慣と、COPD患者の特殊な身体状況とが混同されやすいです。
- 2. 階段昇段は身体への負荷が高い動作です。COPD患者の場合、息を吐きながら(呼気時に)動作することで、肺に残る空気の量を減らし、気道虚脱を防ぎやすくなります。吸気時に力を入れると胸郭が拡張しにくく、呼吸筋の負担が増大します。正しくは:階段を上る際は、息を吐きながら段を昇る。選びやすい理由:運動時の呼吸法として、力を入れるときに息を吸うという一般的なイメージがあるため、選びやすいかもしれません。混同注意:通常の運動時の呼吸法と、COPD患者の呼吸生理学的な特徴(特に呼気性呼吸困難の管理)が混同されやすいです。
- 3. 正解。腕を肩よりも高い位置に挙上する動作は、胸郭の動きを制限し、呼吸補助筋である肩甲帯や頸部の筋肉の負担を増やします。これにより呼吸困難感が増すため、低い位置で作業することで上肢の挙上を避け、呼吸筋への負担を軽減できます。正しくは:この選択肢は正しい記述です。
- 4. 前かがみの姿勢は、腹部を圧迫し、横隔膜の動きを制限するため、COPD患者にとっては呼吸がしにくくなります。また、体幹の安定性も損ないやすく、転倒のリスクも高まります。荷物は体に近い位置で、胸を張り、膝を曲げて持ち上げるのが適切です。正しくは:重い荷物を持ち上げる際には、膝を曲げ、背筋を伸ばして体に近い位置で持ち上げる。選びやすい理由:腰への負担を減らすために前かがみになるという誤った認識や、一般的な持ち上げ方の指導と混同しやすいかもしれません。混同注意:腰痛予防のための荷物の持ち上げ方(膝を使ってかがむ)と、COPD患者の呼吸困難軽減のための体位(腹部圧迫を避ける)が混同されやすいです。
- 5. 座面が低すぎるシャワーチェアは、立ち上がりや座り込みの際に股関節や膝関節を深く曲げる必要があり、腹圧をかけやすく、呼吸筋に負担をかけます。また、低い座位は胸郭を圧迫し、呼吸がしにくくなることもあります。適切な高さ(膝が約90度曲がる程度)のシャワーチェアが推奨されます。正しくは:浴室には、立ち座りが楽にできる、座面が適切な高さ(膝が約90度になる程度)のシャワーチェアを設置する。選びやすい理由:転倒予防のために座面が低い方が安全だと誤解される可能性があります。混同注意:一般的な高齢者の転倒予防策と、COPD患者の呼吸生理学的な負担軽減策が混同されやすいです。特に、立ち上がりやすさや呼吸のしやすさの観点が見落とされがちです。
国試ポイント
COPD患者の呼吸困難を軽減するための日常生活指導に関する知識が問われています。特に、活動時のエネルギー消費を抑え、呼吸筋への負担を軽減し、呼吸効率を高めるための具体的な工夫が重要です。上肢挙上を伴う動作や腹部圧迫、不適切な姿勢が呼吸困難を誘発する点を理解しているかがポイントとなります。
混同注意
COPD患者に対する指導は、高齢者全般の生活指導や他の疾患の患者に対する指導と混同されやすいです。特に、呼吸困難感軽減という視点がないと、誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。例えば、腰痛予防のための姿勢と呼吸困難軽減のための姿勢の違いなど。
次に同じ論点が出たら
次回同じ論点が出た場合、まず患者の疾患特性(COPDであること)と、問題の求める内容(呼吸困難感の軽減)に焦点を当てます。選択肢が示す具体的な動作について、呼吸筋への負担、胸郭の動き、腹部への影響、気道虚脱のリスクなどを総合的に判断し、呼吸効率を最大化する選択肢を選びます。
関連知識
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態生理、呼吸リハビリテーションの原則(口すぼめ呼吸、腹式呼吸、動作時呼吸法)、活動時の酸素消費量と呼吸困難感の関係、日常生活動作(ADL)におけるエネルギー温存策、住宅改修の考慮点。