65歳の男性。脳出血による弛緩性右片麻痺で肩関節に2横指の亜脱臼がある。関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準1995年)に従って右肩関節外転の関節可動域検査を行う際に正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
肩関節外転90度を超えると、上腕骨の大結節が肩峰と衝突するインピンジメントを起こしやすくなります。これを避けるため、上腕骨を外旋させ、結果として前腕を回外させることで、安全に可動域を測定できます。これは日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会基準の関節可動域測定法に則った操作です。
選択肢ごとの解説
- 1. 肩関節外転の基本軸は、体幹の側面の中央線であり、腋窩中央から垂直に床へと伸びる線です。体幹そのものではありません。正しくは:基本軸は体幹側面の中央線である。選びやすい理由:体幹の一部であるため、混同しやすい。混同注意:基本軸と移動軸の区別、特に解剖学的ランドマークの正確な位置付けが曖昧だと誤解が生じます。
- 2. 肩関節外転の測定では、肘関節は伸展位で行うことが原則です。屈曲位で測定すると、上腕二頭筋の張力などの影響で、正確な可動域を評価できない可能性があります。正しくは:肘関節は伸展位で計測する。選びやすい理由:他の関節運動や筋力測定で肘関節を屈曲させる場合があるため、混同しやすい。混同注意:各関節の測定肢位の原則を混同している可能性があります。
- 3. 肩関節外転の初期段階では肩甲骨は固定せず、上腕骨と肩甲骨の協調運動として測定します。肩甲上腕リズムを考慮し、特に記載がない限りは肩甲骨の動きを許容した全範囲の運動を測定します。ただし、肩甲上腕関節のみの可動域を知りたい場合は固定することがあります。正しくは:肩甲骨の動きは許容する。選びやすい理由:純粋な肩甲上腕関節の動きを測定する際には肩甲骨を固定するため、状況によって正しいように思える。混同注意:肩甲上腕リズムと、純粋な肩甲上腕関節の測定を混同している可能性があります。
- 4. 正解。肩関節の外転において、上腕骨大結節が肩峰と衝突するインピンジメントを防ぐため、90度を超える外転では上腕を外旋させ、それに伴い前腕も回外させることが標準的な測定方法です。これにより、より大きな可動域を安全に確保できます。選びやすい理由:なぜ前腕を回外させるのかの理由が不明確だと、不自然に感じるかもしれません。混同注意:上腕の外旋と前腕の回外の連動を理解していないと、この操作の目的が不明瞭になります。
- 5. 関節可動域測定の際に、無理な牽引を加えることは原則として行いません。牽引は亜脱臼を悪化させたり、不正確な測定値につながる可能性があります。自然な関節の動きを妨げないように測定するのが基本です。特に本症例は亜脱臼があるため、牽引は禁忌に近い状態です。正しくは:上肢の長軸方向への牽引は加えない。選びやすい理由:関節が動かない場合に、可動域を広げようと牽引を試みたくなる可能性がある。混同注意:徒手での関節運動の誘導と、牽引との違いを混同している可能性があります。
国試ポイント
本問題は、肩関節外転の関節可動域測定における標準的な手順と、その背景にある解剖学的・運動学的な知識が問われています。特に、インピンジメントの回避策としての肢位調整が重要です。また、症例が脳出血後の弛緩性片麻痺と肩関節亜脱臼を伴っている点から、測定中の患者への配慮も間接的に問われていると考えられます。
混同注意
肩関節の測定では、純粋な肩甲上腕関節の動きと、肩甲胸郭関節の動きを含めた複合的な動きのどちらを測定するかによって、肩甲骨の固定の有無が異なります。問題文では「肩関節外転」とあるため、特別な指示がない限りは肩甲骨の動きを許容した上で測定するのが一般的です。また、他の関節の可動域測定における基準肢位や、特殊な状況下での測定方法と混同しないように注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
この患者に対して、肩関節亜脱臼がある状態で関節可動域訓練を実施する場合に特に注意すべき点や、安全に可動域を拡大するための介入方法を検討できるか。
関連知識
肩甲上腕リズム、インピンジメント症候群、関節可動域測定法の基本原則(基本軸・移動軸・測定肢位)、肩関節の解剖学(大結節、肩峰、上腕骨の回旋運動)。