筋萎縮性側索硬化症における典型的な筋電図検査所見で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位および下位運動ニューロンの変性を特徴とする疾患です。針筋電図検査では、下位運動ニューロンの障害を示す自発放電として、線維束攣縮電位、陽性鋭波、線維性自発電位(fibrillation potential)などが認められます。特に線維束攣縮はALSに非常に特徴的な所見の一つであり、進行性の筋力低下と筋萎縮を伴います。運動神経伝導検査では複合筋活動電位(CMAP)振幅の低下が主要な所見であり、感覚神経は通常保たれます。反復刺激試験でみられる漸減現象や漸増現象は、重症筋無力症やランバート・イートン筋無力症候群といった神経筋接合部疾患の所見です。
選択肢ごとの解説
- 1. 遠位潜時延長は、通常、脱髄性ニューロパチーや軸索性ニューロパチーの一部のタイプでみられる所見であり、ALSの典型的な運動神経伝導検査所見ではありません。ALSでは軸索変性が主であり、遠位潜時自体は比較的保たれるか、神経線維数の減少に伴い振幅が減少することが主です。正しくは:ALSでは、運動神経伝導検査で複合筋活動電位(CMAP)の振幅減少がみられることが多いです。遠位潜時の延長は、脱髄性疾患でみられます。選びやすい理由:神経系の疾患なので、神経伝導速度になんらかの異常が出ると考えてしまいやすい。混同注意:ギラン・バレー症候群などの脱髄性疾患や、手根管症候群などの絞扼性神経障害と混同しやすい。
- 2. ALSは運動ニューロン病であり、感覚神経系は原則として障害されません。したがって、感覚神経伝導検査で伝導ブロックが起こることはALSの典型的な所見ではありません。伝導ブロックは通常、脱髄性疾患や多巣性運動ニューロパチーなどでみられます。正しくは:ALSでは、感覚神経伝導検査は通常正常です。選びやすい理由:神経疾患全般で伝導障害が起こりうる、という漠然とした知識から選んでしまう可能性がある。混同注意:ギラン・バレー症候群や多巣性運動ニューロパチーなどの運動神経伝導ブロックを伴う疾患と混同しやすい。
- 3. 正解。線維束攣縮は、変性した運動ニューロンから自発的に放出される活動電位が、その支配筋線維の一部を収縮させることで生じる現象であり、ALSの非常に特徴的な所見です。針筋電図では、この電位が不規則な間隔で出現するのが観察されます。これは上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方の障害を示すALSの診断に重要な所見です。
- 4. 漸減現象は、重症筋無力症などの神経筋接合部疾患で特徴的にみられる所見です。ALSでは神経筋接合部自体の機能障害が主ではないため、典型的な所見ではありません。正しくは:漸減現象は重症筋無力症で特徴的にみられます。ALSでは、通常、反復刺激試験で著明な漸減現象はみられません。選びやすい理由:運動機能の低下という点では類似しているため、神経筋接合部の異常と誤解しやすい。混同注意:重症筋無力症などの神経筋接合部疾患と混同しやすい。
- 5. 漸増現象は、ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)などの神経筋接合部疾患でみられる所見です。ALSの典型的な筋電図所見ではありません。正しくは:漸増現象はランバート・イートン筋無力症候群などでみられます。ALSでは、通常、反復刺激試験で著明な漸増現象はみられません。選びやすい理由:神経筋疾患の知識が曖昧だと、漸減現象と漸増現象のどちらかがALSに関連すると誤解する可能性がある。混同注意:ランバート・イートン筋無力症候群と混同しやすい。
国試ポイント
ALSの診断において、針筋電図検査の所見は極めて重要です。特に、下位運動ニューロン障害の徴候である線維束攣縮電位や線維性自発電位の有無が頻繁に問われます。他の神経筋疾患との鑑別点を理解しているかが試されます。
混同注意
ALSにおける針筋電図所見と、他の神経筋疾患(例:重症筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群、多巣性運動ニューロパチー、ギラン・バレー症候群)における電気生理学的所見を混同しやすい。特に、自発活動電位の種類(線維性自発電位、陽性鋭波、線維束攣縮電位)と、神経伝導速度検査や反復刺激試験の所見を正確に区別することが求められる。
次に同じ論点が出たら
ALSの症例問題が出た場合、まず病歴と身体所見から上位・下位運動ニューロン障害のどちらが主か、あるいは両方かを確認します。次に、筋電図所見がその病態と一致しているか、特に下位運動ニューロン障害の直接的な証拠となる自発活動電位の有無と種類、および運動神経伝導速度(CMAP振幅)を確認します。他の疾患との鑑別点にも注意を払います。
関連知識
筋萎縮性側索硬化症の病態生理(上位・下位運動ニューロン障害)、他の主な神経筋疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群、多巣性運動ニューロパチー、ギラン・バレー症候群など)の臨床症状と電気生理学的所見。筋電図検査の基本原理と、各波形が示す意味。