寛解期にある多発性硬化症に対する理学療法の禁忌はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
多発性硬化症の患者は、体温が上昇すると神経症状が悪化する「ウートフ現象」と呼ばれる病態を呈することがあります。これは、体温上昇により脱髄部位での神経伝導が一時的に阻害されるためと考えられています。そのため、温熱療法(ホットパック、入浴、サウナなど)は寛解期であっても原則的に禁忌とされています。他の選択肢に示された関節可動域訓練、有酸素運動、筋力増強運動、電気刺激療法は、患者の状態や疲労度を考慮した上で、適切に実施すれば治療効果が期待できるものが多く、一律に禁忌とはなりません。
選択肢ごとの解説
- 1. 多発性硬化症の寛解期において、他動的な関節可動域訓練は関節拘縮の予防や柔軟性の維持に有効であり、一般的に禁忌ではありません。患者の状態に応じて慎重に行われます。正しくは:この介入は一般的に禁忌ではありません。選びやすい理由:運動負荷への不安から、あらゆる運動を避けるべきと考える学生がいるかもしれませんが、他動運動は患者自身の筋力を使うものではないため、疲労を増悪させるリスクは低いです。混同注意:患者自身が行う能動運動や、抵抗を伴う運動と混同する可能性があります。
- 2. 多発性硬化症の寛解期において、中等度強度の有酸素運動は心肺機能の向上、疲労軽減、気分の改善などに有効とされています。過度な運動は避けるべきですが、適切な強度であれば推奨されることが多いです。正しくは:この介入は適切な強度であれば推奨されることがあります。選びやすい理由:多発性硬化症患者はしばしば疲労感を訴えるため、運動全般が禁忌だと誤解しやすいかもしれません。しかし、適切な管理下での運動は疲労を軽減する効果も期待されます。混同注意:激しい運動や、体温上昇を招くような運動と混同する可能性があります。
- 3. 多発性硬化症の寛解期において、低強度の筋力増強運動は筋力維持・向上、機能改善に寄与します。疲労を誘発しない範囲で計画的に行われるべきです。正しくは:この介入は疲労を考慮しつつ計画的に実施されるべきです。選びやすい理由:筋力訓練自体が疲労や症状悪化を引き起こすのではないかと危惧するかもしれませんが、低強度であれば安全に実施でき、筋力低下の予防に繋がります。混同注意:高負荷や限界まで行う筋力訓練と混同する可能性があります。
- 4. 電気刺激療法は、多発性硬化症における筋力低下、痙縮、排尿障害などに対して、症状緩和や機能改善を目的として用いられることがあります。禁忌となるのは特定の状況(心臓ペースメーカーの装着など)に限られ、多発性硬化症自体が直接的な禁忌ではありません。正しくは:この介入は、特定の状況を除き、多発性硬化症患者に適用されることがあります。選びやすい理由:電気刺激が神経症状に影響を与える可能性を懸念するかもしれませんが、適切に設定された電気刺激は治療効果をもたらすことがあります。混同注意:体内に金属がある場合や、感覚障害が重度で反応が確認できない場合などの、一般的な電気刺激療法の禁忌と混同する可能性があります。
- 5. 正解。多発性硬化症の患者は、体温の上昇によって神経症状が一時的に悪化する「ウートフ現象(Uhthoff's phenomenon)」を示すことが多く、寛解期であっても温熱療法は原則として禁忌または極めて慎重に行うべきです。全身性の温熱だけでなく、局所の温熱も避けるのが望ましいとされています。選びやすい理由:一般的なリラクゼーションや疼痛緩和に温熱療法が用いられることが多いため、多発性硬化症でも効果があるのではないかと誤解するかもしれません。しかし、この疾患特有の病態を理解することが重要です。混同注意:温熱療法が一般的にもたらす良い効果(リラックス効果、血行促進など)と、多発性硬化症患者の体温感受性の高さによるリスクとを混同する可能性があります。
国試ポイント
多発性硬化症の病態生理(ウートフ現象)と、それに基づいた理学療法の禁忌に関する知識が問われています。特定の疾患における具体的な理学療法の適応・禁忌を正確に理解しているかがポイントです。
混同注意
多発性硬化症の『寛解期』という条件を見落とし、増悪期の禁忌と混同すること。また、一般的な疾患における温熱療法の有効性と、多発性硬化症特有の体温感受性(ウートフ現象)を混同すること。疲労を理由に運動全般を禁忌と誤解すること。
次に同じ論点が出たら
多発性硬化症の問題が出た場合、まず『疾患の病期(増悪期か寛解期か)』と『患者の現在の症状や身体状況』を確認し、それに応じて各理学療法介入の適応・禁忌を判断します。特に『体温』に関連する介入には注意が必要です。
関連知識
ウートフ現象のメカニズム、多発性硬化症の主な症状(視力障害、感覚障害、運動麻痺、協調運動障害、疲労、痙縮など)、多発性硬化症のリハビリテーションガイドライン、運動療法と疲労管理の重要性。