他の筋への影響を最小限にして伸張運動を行う場合、伸張筋と運動方向の組合せで適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
長橈側手根伸筋は手関節の伸展と橈屈作用を持つ筋です。この筋を他の筋への影響を最小限にして伸張するには、まず肘関節を伸展させ、手関節伸筋群全体を伸張位に置きます。次に、前腕を回内位、手関節を尺屈位にすることで、長橈側手根伸筋の拮抗筋である屈筋群や、手関節橈屈筋群への影響を抑えつつ、長橈側手根伸筋をより選択的に引き伸ばせる肢位を作り出します。その上で手関節を掌屈させることで、長橈側手根伸筋が最も効果的に伸張されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 薄筋は股関節の内転筋群であり、股関節を外転させることで伸張されますが、股関節伸展位、膝関節屈曲位という条件では、ハムストリングスや縫工筋などの他筋も同時に伸張される可能性が高く、薄筋への選択的な伸張とは言えません。正しくは:薄筋を効果的に伸張するには、股関節を軽度伸展位または中間位にし、膝関節を伸曲位にした上で、股関節を外転させるのが一般的です。この肢位では、大腿直筋などの影響が最小限になります。選びやすい理由:薄筋が股関節外転によって伸張されるという基本的な知識は正しいですが、他の筋への影響を最小限にするための細かい条件設定が誤っています。混同注意:股関節内転筋群の解剖学的位置と、他の大腿部の筋(ハムストリングス、縫工筋など)の作用を混同する可能性があります。
- 2. 中間広筋は大腿四頭筋の一部で、膝関節を伸展させる作用を持つ単関節筋です。したがって、膝関節を屈曲させても直接的な伸張はほとんど起こりません。大腿四頭筋全体を伸張する際には膝関節屈曲が用いられますが、これは主に大腿直筋(二関節筋)を対象としたものです。正しくは:中間広筋は単関節筋であるため、膝関節を屈曲させても伸張されません。中間広筋に特化した伸張運動は困難であり、通常は大腿四頭筋全体として扱われます。もし伸張を考えるのであれば、股関節は屈曲させ、膝関節は伸展位からさらに伸展させるような動きが想像されますが、実際には難しいです。選びやすい理由:大腿四頭筋のストレッチとして膝関節屈曲が一般的であるため、大腿四頭筋の一部である中間広筋も同様に伸張されると誤解しやすいです。混同注意:二関節筋である大腿直筋と、単関節筋である中間広筋の機能的違いを混同する可能性があります。
- 3. ヒラメ筋は膝関節をまたがない単関節筋であり、膝関節の位置(伸展位か屈曲位か)はヒラメ筋の伸張に影響しません。腓腹筋は二関節筋であるため膝関節伸展位で足関節背屈を行うと伸張されますが、ヒラメ筋は膝関節屈曲位でも伸展位でも同じように伸張されます。他の筋への影響を最小限にするという点では、この選択肢は腓腹筋を対象とした伸張法であり、ヒラメ筋を単独で伸張する条件としては不適切です。正しくは:ヒラメ筋を効果的に伸張するには、膝関節を屈曲させた状態で足関節を背屈させます。これにより、膝関節をまたぐ腓腹筋の緊張が緩み、ヒラメ筋のみをより選択的に伸張することができます。選びやすい理由:足関節背屈で下腿三頭筋が伸張されることは正しいが、腓腹筋とヒラメ筋の機能的違いを考慮していない点で誤解を招きやすいです。混同注意:二関節筋である腓腹筋と、単関節筋であるヒラメ筋の解剖学的・機能的違いを混同する可能性があります。
- 4. 三角筋前部は肩関節の屈曲、内旋、水平内転の作用を持ちます。したがって、この筋を伸張するためには、これらの作用とは逆の運動、つまり肩関節を伸展(と外転・外旋)させる必要があります。しかし、肘関節伸展位という条件は、三角筋前部の伸張には直接関係ありません。また、肩関節伸展は三角筋前部を伸張する方向ではありますが、肩関節を内外旋中間位に保つと、三角筋前部だけでなく、三角筋中部や後部、大胸筋などの他の筋も同時に伸張される可能性があり、選択性が低いと言えます。正しくは:三角筋前部をより選択的に伸張するには、肩関節を軽度外転・外旋位にした上で伸展させます。肘関節の肢位は直接影響しません。選びやすい理由:肩関節伸展が伸張方向であるという基本的な理解は正しいですが、他の筋への影響を最小限にするための詳細な条件が不足しています。混同注意:三角筋の各線維(前部・中部・後部)の作用と、他の肩関節周囲筋(特に大胸筋)の作用を混同する可能性があります。
- 5. 正解。長橈側手根伸筋は、肘関節を越えずに上腕骨外側上顆から手根骨に付着する筋です。手関節の伸展と橈屈作用があります。この筋を伸張するためには、その作用と逆方向の運動を行う必要があります。肘関節伸展位は、長橈側手根伸筋に加えて短橈側手根伸筋や総指伸筋なども伸張されますが、回内位、手関節尺屈位にすることで、他の手関節伸筋群、特に短橈側手根伸筋の影響を最小限に抑え、長橈側手根伸筋をより選択的に伸張することができます。そして、手関節を掌屈させることで、伸筋群全体の伸張を促します。この組み合わせは、長橈側手根伸筋への選択的な伸張として最も適切です。選びやすい理由:この選択肢は、複数の条件が組み合わさっているため一見複雑に見えますが、それぞれの条件が長橈側手根伸筋の選択的伸張に寄与しています。混同注意:前腕の回内外、手関節の橈尺屈、掌背屈のそれぞれの作用を持つ筋を正確に把握していないと、正しい組み合わせを判断するのが難しいです。
国試ポイント
特定の筋を選択的に伸張するための解剖学的知識と運動学的な理解が問われています。特に、二関節筋と単関節筋の機能的な違い、および他の筋への影響を最小限にするための肢位設定が重要です。各筋の走行、作用、および関節運動の組み合わせを正確に把握している必要があります。
混同注意
多くの学生は、主要な関節運動に対する大まかなストレッチング方法は知っていても、特定の筋を選択的に伸張するための詳細な肢位設定や、二関節筋と単関節筋の違いによる影響を混同しやすいです。特に、選択肢2(中間広筋)と3(ヒラメ筋)は、二関節筋である大腿直筋や腓腹筋のストレッチと混同しやすいため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、まず『対象筋が単関節筋か二関節筋か』を判断し、その上で『対象筋の作用と反対方向の運動を、他の類似作用を持つ筋の影響を避ける肢位で行う』という原則に沿って選択肢を検討することが重要です。特に、肘関節や膝関節をまたぐ筋とまたがない筋の違いに注意して判断しましょう。
関連知識
筋の起始・停止、作用、二関節筋と単関節筋の違い、拮抗筋の作用。ストレッチングの原理と効果。各関節の運動方向とそれに伴う筋の伸張・短縮。上肢・下肢の主要な筋群の機能解剖。