嚥下障害がある患者の胸部エックス線写真(別冊No. 4)を別に示す。予想される理学所見はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下に示す画像は右下葉の浸潤影を示唆しており、これは誤嚥性肺炎でよく見られる所見です。誤嚥性肺炎では、肺に炎症が起こり、滲出液や痰が貯留するため、聴診で水疱音(クラックル、捻髪音、ロンキーなど)が聴取されます。特に、右下葉は誤嚥しやすい部位であるため、この所見と聴診での水疱音は整合性が高いです。
選択肢ごとの解説
- 1. 胸痛は、気胸や胸膜炎、心疾患など様々な原因で起こりますが、嚥下障害による誤嚥性肺炎の直接的な理学所見としては一般的ではありません。胸痛を訴えることはありますが、画像所見から直接予測できるものではありません。正しくは:誤嚥性肺炎では、発熱や湿性咳嗽、呼吸困難感などが主な症状となります。選びやすい理由:肺炎の場合、胸痛を伴うことがありますが、嚥下障害からの誤嚥性肺炎に特有の、あるいは必ず見られる所見ではありません。混同注意:肺炎による炎症が胸膜に波及すると胸膜痛として胸痛を自覚することもありますが、画像所見から直接予測される理学所見としては不適切です。
- 2. 乾性咳嗽は、痰を伴わない咳を指し、アレルギーや喘息、間質性肺炎などで見られます。誤嚥性肺炎では、口腔内の細菌や食物残渣が肺に流入することで炎症を起こすため、通常は痰を伴う湿性咳嗽が特徴となります。正しくは:誤嚥性肺炎では、湿性咳嗽が見られることが多いです。選びやすい理由:咳自体は肺炎の症状として一般的ですが、乾性か湿性かの違いが重要です。混同注意:通常の肺炎や気管支炎と混同し、咳の性質を見誤る可能性があります。誤嚥性肺炎は湿性咳嗽です。
- 3. 頸静脈怒張は、右心不全や心タンポナーデ、上大静脈症候群など、心臓や大血管系の問題による静脈圧上昇を示唆する所見です。誤嚥性肺炎の直接的な理学所見ではありません。正しくは:頸静脈怒張は心不全の徴候であり、肺炎とは直接関係ありません。選びやすい理由:重度の呼吸不全が心臓に負担をかける可能性はありますが、肺炎の直接的な理学所見とは言えません。混同注意:呼吸器疾患の重症化に伴う心臓への影響と混同する可能性がありますが、頸静脈怒張は循環器系の徴候です。
- 4. 打診での鼓音は、肺に空気が過剰に貯留している状態(例: 気胸、肺気腫)で聴取されます。誤嚥性肺炎による肺の炎症・浸潤では、肺実質が硬化したり水が貯留したりするため、打診では濁音や鈍音が聴取されることが一般的です。正しくは:誤嚥性肺炎では、炎症部位の打診で鈍音や濁音が聴取されます。選びやすい理由:胸部の打診は重要な理学所見ですが、鼓音と濁音・鈍音の違いを混同しやすいです。混同注意:気胸や肺気腫などの病態での鼓音と、肺炎での鈍音・濁音を混同する可能性があります。肺炎は肺の浸潤を示すため鈍音になります。
- 5. 正解。X線写真で右下葉に浸潤影が見られる場合、これは誤嚥性肺炎を示唆しています。肺炎の部位では、炎症や滲出液の貯留により気管支や肺胞内の分泌物が増加するため、聴診で水疱音(捻髪音や粗いクラックル)が聴取されることが多いです。
国試ポイント
この問題は、胸部X線写真の読影能力と、それに伴う理学所見を結びつける知識を問うものです。特に誤嚥性肺炎の典型的画像所見と、それに対応する聴診所見がポイントとなります。画像から病態を把握し、そこから予測される身体所見を適切に判断できるかが試されます。
混同注意
胸部打診の音(鼓音 vs 鈍音/濁音)、咳の種類(乾性 vs 湿性)、および聴診音の具体的な特徴(水疱音、呼吸音減弱、気管支呼吸音など)について、それぞれの病態との関連を正確に理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、他の呼吸器疾患(例:気胸、胸水貯留、COPD、間質性肺炎など)のX線画像と、それに特有の理学所見(呼吸音の減弱、打診の鈍音、wheezingなど)の組み合わせを問われる可能性があります。また、画像所見だけでなく、患者の臨床症状(発熱、咳、痰、呼吸困難感など)と理学所見の関連性を総合的に判断する問題も考えられます。
関連知識
嚥下障害患者における誤嚥性肺炎のリスク、嚥下メカニズム、誤嚥性肺炎の病態生理、胸部X線写真における肺炎のパターン(大葉性肺炎、気管支肺炎など)、理学所見(視診、触診、打診、聴診)と各呼吸器疾患の関連。