35歳の女性。橈骨遠位端骨折後に右上肢にCRPS〈複合性局所疼痛症候群〉を生じた。この患者にみられる所見に合致しないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
CRPS(複合性局所疼痛症候群)は、外傷後に発生する慢性の疼痛症候群であり、その特徴として異所性発痛(アロディニア)、痛覚過敏、自発痛といった「痛みの増強」が挙げられます。また、自律神経系の機能異常により、浮腫、発汗異常、皮膚温の変化、皮膚色の変化、栄養性変化(爪や毛髪の変化、骨粗鬆症など)もよく見られます。痛みを感じにくくなる「痛覚鈍麻」は、これらのCRPSの典型的な症状には含まれません。むしろ、痛覚が過敏になるのが特徴です。
選択肢ごとの解説
- 1. CRPS(特にタイプI)では、炎症反応や血管運動機能不全により患部に浮腫が生じることが多いです。正しくは:患部の腫れはCRPSで一般的にみられる所見である。選びやすい理由:浮腫は骨折後の一般的な症状でもあるため、CRPS特有ではないと考えるかもしれない。混同注意:単なる炎症による浮腫と、CRPSによる神経性炎症や血管運動機能不全による浮腫の違い。
- 2. 正解。CRPSの主要な症状は異所性発痛(アロディニア)、痛覚過敏、自発痛といった「痛みが増強する」方向の変化であり、痛みを感じにくくなる(痛覚鈍麻)は通常みられません。正しくは:CRPSでは痛覚過敏がみられ、痛みを感じやすくなる。選びやすい理由:神経障害性疼痛の一部として感覚鈍麻を伴う疾患もあるため、混同しやすい。混同注意:神経損傷による感覚鈍麻と、CRPSによる神経過敏性や痛覚過敏。
- 3. CRPSでは自律神経系の機能不全により、患部の発汗が増加または減少する発汗異常がよく観察されます。正しくは:発汗異常はCRPSで一般的にみられる所見である。選びやすい理由:自律神経系の症状は漠然としていて、具体的に何が起こるか明確でないと誤答しやすい。混同注意:交感神経機能の亢進による発汗増加と、その後の機能低下による発汗減少。
- 4. アロディニアは、CRPSの診断基準にも含まれる主要な症状の一つで、触覚や軽度の圧迫など、通常は痛みを伴わない刺激によって痛みを感じる状態です。正しくは:アロディニアはCRPSで一般的にみられる所見である。選びやすい理由:アロディニアという専門用語に慣れていないと、意味が分からず判断しにくい。混同注意:痛覚過敏(強い刺激で過剰な痛み)とアロディニア(通常無痛の刺激で痛み)。
- 5. CRPSでは、自律神経系の調節異常により患部の血管収縮または拡張が起こり、皮膚温が上昇したり低下したりする変化が見られます。正しくは:皮膚温の変化はCRPSで一般的にみられる所見である。選びやすい理由:温度変化の方向(上昇か低下か)が定まっていないため、判断に迷うかもしれない。混同注意:単なる炎症による局所的な発熱と、CRPSによる自律神経性血管運動機能不全。
国試ポイント
CRPSの基本的な診断基準と主要な症状について正確な知識が問われています。特に痛覚過敏と痛覚鈍麻の区別、自律神経症状の具体例を理解しているかが重要です。
混同注意
神経損傷による感覚鈍麻や麻痺と、CRPSによる神経過敏性やアロディニア、痛覚過敏が混同しやすい。また、CRPSでみられる症状(浮腫、発汗異常、皮膚温の変化)は、初期には一般的な炎症反応と類似することもあり、鑑別が難しいことがあります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、CRPSの各症状のメカニズム(例:なぜ浮腫が起こるのか、なぜ皮膚温が変化するのか)や、診断基準に直接関連する記述、あるいは他の神経疾患との鑑別点を問う問題に注意する。具体的な治療法に関する知識も必要となる可能性がある。
関連知識
CRPSの診断基準(Budapest Criteria)、CRPS I型(神経損傷なし)とCRPS II型(神経損傷あり)の違い、CRPSの病態生理(神経性炎症、中枢性感作、自律神経機能不全など)、各症状に対する治療的介入(薬物療法、神経ブロック、リハビリテーションなど)。