脊髄完全損傷者の機能残存レベルと実用可能な能力の組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
脊髄完全損傷で第3胸髄節まで機能が残存していれば、上肢の機能は保たれ、車椅子から自動車への移乗が自立して可能です(公式正答3)。第3頸髄節では横隔膜の機能が不十分で人工呼吸器が必要となり、プッシュアップ動作には上腕三頭筋(第7頸髄節)の機能が必要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 横隔膜は主に第4頸髄節(第3〜第5頸髄節)の支配であり、第3頸髄節までの残存では自発呼吸は困難で、人工呼吸器が必要となります。選びやすい理由:横隔膜の支配神経(横隔神経C3-C5)が保たれるため、自発呼吸が可能であると考えがちです。混同注意:自発呼吸が可能であることと、呼吸機能が完全に正常であること、あるいは実用的な呼吸能力を混同しやすいです。
- 2. プッシュアップ動作には肘関節を伸展させる上腕三頭筋(第7頸髄節)の機能が必要であり、第5頸髄節までの残存では実用的に行えません。選びやすい理由:手関節の背屈(橈側手根伸筋など)が可能になるため、ある程度の上肢の機能回復を期待してしまいがちです。混同注意:手関節の機能と、肘伸展筋による体重支持能力を混同しやすいです。
- 3. 正解。第3胸髄節まで機能が残存していれば上肢の機能は完全に保たれ、車椅子から自動車への移乗が自立して可能です。正しくは:この選択肢は正しいです。選びやすい理由:特になし。脊髄損傷者の残存機能と生活動作の知識があれば正答にたどり着けます。
- 4. 第10胸髄節残存の場合、股関節の屈筋や伸筋が麻痺しているため、長下肢装具を使用しても歩行は実用的ではありません。体幹の安定性はありますが、下肢の自動運動が乏しいため、歩行はエネルギー消費が大きく、介助なしには困難です。正しくは:第10胸髄節残存では、長下肢装具を使用しても、下肢の自動運動がないため、実用的な歩行は困難です。選びやすい理由:体幹機能が比較的保たれているため、装具歩行が可能であると誤解しやすいです。混同注意:胸髄レベルでの体幹機能と、下肢の自動運動による歩行能力を混同しやすいです。
- 5. 第12胸髄節残存では、足関節周囲の筋機能は麻痺しており、短下肢装具では歩行に必要な股関節や膝関節の機能が代償できないため、実用的な歩行は困難です。このレベルでは、やはり長下肢装具による歩行すら困難な場合が多いです。正しくは:第12胸髄節残存では、短下肢装具を使用しても歩行はできません。また、このレベルでは長下肢装具での歩行も困難です。選びやすい理由:胸腰移行部の損傷であり、下肢に近いレベルであるため、軽度の麻痺で装具歩行が可能であると錯覚しやすいです。混同注意:第12胸髄レベルで残存する筋機能と、歩行に必要な下肢全体の筋機能を混同しやすいです。
国試ポイント
脊髄損傷の機能残存レベルと、それに応じたADL(日常生活動作)能力の具体的な組み合わせを問う問題です。各レベルでどの筋肉が機能するか、またその機能を用いてどのような動作が実用的に可能になるかを正確に理解しているかが試されます。特に、歩行能力や移乗能力は頻出のテーマです。
混同注意
各脊髄レベルで機能する筋群(キーマッスル)と、それによって達成可能な実用的な動作(ADL)の関連性を混同しやすいです。例えば、自発呼吸はC3-5で可能ですが、完全な呼吸機能とは異なります。また、装具を使った歩行も、単に装具をつければ歩けるわけではなく、残存する筋力や体幹の安定性が重要となります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、脊髄損傷の各レベルにおけるキーマッスル、可能な主要なADL、および使用される主要な装具の種類とその目的・限界に注目して解答します。
関連知識
脊髄損傷のASCI(国際脊髄損傷機能分類)レベルごとのキーマッスルとその支配神経、および各レベルで獲得可能な代表的なADL(食事、更衣、整容、移乗、移動、排泄など)。また、長下肢装具(KAFO)や短下肢装具(AFO)の適用基準と、それぞれの装具で期待できる歩行能力の限界についても理解が必要です。特に、頚髄損傷者の呼吸管理や、胸髄損傷者の体幹機能と歩行能力の関係は重要です。