75歳の男性。脳梗塞による左片麻痺。発症後1か月で回復期リハビリテーション病棟に転棟した。平行棒内歩行にて立脚相で図のような状況を呈した。立位歩行練習時の患側への対応で適切でないのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下腿三頭筋の過緊張は尖足の原因となり、立脚期での膝折れ(buckling)を防ぐために膝の過伸展を誘発することがあります。この患者さんの図では立脚期に膝が過伸展している状態が見られ、これは下腿三頭筋の緊張亢進が原因である可能性が高いです。下腿三頭筋へのタッピングは筋収縮を促す効果があり、さらに過伸展を助長する可能性があるため、対応として適切ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 踵部に補高を行うことで、足関節の底屈位を修正し、膝の過伸展を軽減できるため、対応として適切です。選びやすい理由:膝の過伸展(反張膝)への対応として一般的な選択肢であるため。混同注意:足関節の背屈制限に対するアキレス腱ストレッチなどの介入。踵部補高は足関節底屈位での固定を緩和する効果がある。
- 2. 短下肢装具(特に足関節背屈補助・底屈制限機能を持つもの)は、足関節の不安定性を補い、尖足や膝の過伸展を抑制し、立脚期の安定性を向上させるため、対応として適切です。選びやすい理由:脳卒中後の歩行障害に対する一般的な装具療法であるため。混同注意:長下肢装具や、足関節の可動性を制限しないタイプの装具。
- 3. 膝をやや屈曲した位置での立位保持練習は、膝の過伸展を防ぎ、大腿四頭筋の適切な活動を促し、立脚期の安定性を高めることができるため、対応として適切です。選びやすい理由:膝の過伸展に対する直接的なアプローチとして理解しやすいため。混同注意:膝関節の伸展拘縮に対する介入。この場合は過伸展を修正する目的である。
- 4. 前脛骨筋に治療的電気刺激を加えることで、下垂足(足関節の背屈筋力低下)を改善し、遊脚期の足クリアランスの向上や立脚期の足関節安定性の向上に寄与するため、対応として適切です。これにより、代償的な膝の過伸展も間接的に軽減される可能性があります。選びやすい理由:下垂足に対する一般的な介入であり、歩行の質の改善に繋がるため。混同注意:下腿三頭筋への電気刺激。前脛骨筋は足関節の背屈に関与する。
- 5. 正解。下腿三頭筋へのタッピングは、筋紡錘を刺激し、筋収縮を促通する効果があります。この患者さんの立脚期での膝過伸展は下腿三頭筋の過緊張が関与している可能性が高く、さらに筋収縮を促すことは症状を悪化させる可能性があるため、対応として適切ではありません。正しくは:下腿三頭筋の過緊張を緩和するために、ストレッチや筋抑制を目的とした手技(例:圧迫、持続伸張、振動刺激など)を行う。選びやすい理由:タッピングが筋活動を促す手技であることは知られているため、なんらかの筋力増強や活動促進に役立つと誤解されることがある。混同注意:筋の促通手技と抑制手技の使い分け。過緊張状態にある筋に対して促通手技を用いるべきではない。
国試ポイント
脳卒中片麻痺患者の歩行異常に対する理学療法介入の選択肢と、その根拠となる病態生理を理解しているか。
混同注意
筋の促通と抑制の手技。タッピングは筋紡錘への刺激により筋収縮を促通する手技であり、筋緊張が高い場合には行わない。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例が出題された場合は、立脚期の膝の過伸展の原因が下腿三頭筋の痙縮である可能性を考慮し、その筋の活動を抑制する介入が適切であるかを判断する。
関連知識
尖足や膝の過伸展の原因として、下腿三頭筋の痙縮だけでなく、固有受容覚の障害や股関節屈筋群の弱化なども考慮する必要がある。また、脳卒中片麻痺患者の歩行パターンと各関節の動き、そしてそれを修正するための装具療法や運動療法の適応を理解しておくことが重要である。