40歳の男性。長時間の立位により右下肢の疼痛が生じるようになったため受診し腰椎椎間板ヘルニアと診断された。右の片脚立位で踵の挙上ができなかった。重度の感覚鈍麻が疑われる部位はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
腰椎椎間板ヘルニアによる右片脚立位での踵挙上困難は、足関節底屈筋群(下腿三頭筋)の筋力低下を示唆しています。この筋群は主にS1神経根に支配されています。S1神経根障害では、S1デルマトーム領域である下腿後面から足底外側、足背外側にかけての感覚鈍麻が典型的に現れます。また、アキレス腱反射の減弱も特徴的です。図の④の部位はS1デルマトームの典型的な感覚障害部位と一致するため、最も重度の感覚鈍麻が疑われます。
選択肢ごとの解説
- 1. ①はL2/L3のデルマトームに相当し、主に大腿前面から内側にかけての感覚を支配します。踵の挙上困難はS1神経根の障害を示唆するため、感覚鈍麻の部位とは異なります。正しくは:①の感覚鈍麻が重度であれば、膝蓋腱反射の減弱や大腿四頭筋の筋力低下(膝伸展困難)などが同時に見られることが多いです。選びやすい理由:デルマトームは広範囲に及ぶため、選択肢の位置によっては混乱する可能性があります。混同注意:L2、L3神経根の支配領域や症状(股関節屈曲、膝関節伸展筋力の低下など)
- 2. ②はL3/L4のデルマトームに相当し、主に大腿前面から膝周囲の感覚を支配します。踵の挙上困難はS1神経根の障害を示唆するため、感覚鈍麻の部位とは異なります。正しくは:②の感覚鈍麻が重度であれば、L3/L4の神経根症状として、膝蓋腱反射の減弱や大腿四頭筋の筋力低下(膝伸展困難)などが同時に見られることが多いです。選びやすい理由:大腿部の感覚障害は多くの腰椎疾患で見られるため、関連付けて考えやすいかもしれません。混同注意:L3、L4神経根の支配領域や症状(膝伸展筋力の低下、膝蓋腱反射の減弱など)
- 3. ③はL4/L5のデルマトームに相当し、主に下腿前面から内側、足背内側にかけての感覚を支配します。踵の挙上困難はS1神経根の障害を示唆するため、感覚鈍麻の部位とは異なります。正しくは:③の感覚鈍麻が重度であれば、L4/L5の神経根症状として、足関節背屈筋力の低下(下垂足)や足関節内反筋力の低下、脛骨神経の障害(L4支配)などが同時に見られることが多いです。選びやすい理由:下肢の症状なので、デルマトームの近い領域と混同しやすいです。混同注意:L4、L5神経根の支配領域や症状(足関節背屈筋力の低下、足趾背屈筋力の低下など)
- 4. 正解。患者は右片脚立位で踵の挙上ができません。これは足関節底屈筋群(特に下腿三頭筋)の筋力低下を示唆しており、これらの筋肉は主にS1神経根によって支配されています。S1神経根の障害時には、同時にS1デルマトーム領域である足底外側から足背外側、下腿後面の感覚鈍麻やアキレス腱反射の減弱がよく見られます。図の④の領域はS1デルマトームに一致するため、重度の感覚鈍麻が疑われます。
- 5. ⑤はL5/S1のデルマトームに相当しますが、特に足趾の外側や足の外縁に位置します。踵の挙上困難はS1神経根の障害を示唆しますが、図の⑤はS1デルマトームの外縁に近く、最も典型的な感覚障害部位ではありません。④の方がより中心的なS1デルマトームを示しています。正しくは:S1デルマトーム全体が障害されるため、⑤の領域も影響を受けますが、最も重度な感覚鈍麻を指すには④の方が適切です。選びやすい理由:S1デルマトームの範囲内ではあるため、間違いではないと感じやすいかもしれません。しかし、より中心的な症状部位は④です。混同注意:S1デルマトームの広範な領域と、図が示す特定のピンポイントな部位の解釈。
国試ポイント
この問題は、腰椎椎間板ヘルニアにおける神経根症状の理解、特にデルマトームと筋力低下・反射の関連性を問うものです。特定の症状から障害神経根を特定し、その神経根の支配領域にある感覚鈍麻の部位を正確に選択できるかが評価されます。足関節の筋力と関連するデルマトームを問う問題は頻出です。
混同注意
腰椎神経根の各レベルにおけるデルマトーム、筋力、深部腱反射の組み合わせ。特にL4、L5、S1神経根の鑑別が重要です。L4は膝蓋腱反射と膝伸展、L5は足関節背屈と足趾伸展、S1はアキレス腱反射と足関節底屈といった特徴を混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、まず提示された症状(筋力低下、感覚障害、反射異常)から障害されている神経根を特定します。次に、その神経根が支配するデルマトームの正確な位置、またはその神経根が支配する筋の具体的な動きや反射を確認します。今回は「踵の挙上」からS1神経根を特定し、S1デルマトームの領域を選ぶ、という流れを判断基準とします。
関連知識
腰椎椎間板ヘルニアの診断、理学療法評価、画像診断、保存療法と手術療法。各神経根のデルマトーム、筋支配(ミオトーム)、深部腱反射の支配神経。特に下肢の主要な動きに関わる神経根(L4, L5, S1)とそれぞれの検査方法を理解しておくことが重要です。