大腿義足歩行の立脚中期で体幹の義足側への側屈がみられた。原因はどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4・5番
解説
立脚中期における体幹の義足側への側屈は、主に骨盤を水平に保つ機能が低下している場合に生じる代償動作です。選択肢4の「ソケット外側壁の高さ不足」は、ソケットが骨盤(大転子)を十分に支持できないために、義足側への荷重時に骨盤が非義足側へ傾くのを防ぐことができず、結果として体幹を義足側へ側屈させて重心を移動させます。選択肢5の「義足側股関節外転筋群の筋力低下」は、骨盤を水平に保つ主要な筋肉である中殿筋などの機能不全により、義足側荷重時に骨盤が非義足側へ傾き、その代償として体幹を義足側へ側屈させます。これらはいずれも、トレンデレンブルグ徴候と同様の機序で体幹の側屈を引き起こします。
選択肢ごとの解説
- 1. 体重支持線が義足足部の内側にあると、身体の重心が内側へ移動するため、膝折れや義足が外側へ倒れるような不安定性(外転歩行やトレンデレンブルグ歩行に似た傾向)が生じやすくなりますが、体幹の義足側への側屈とは直接結びつきにくいです。むしろ、体幹は非義足側に傾くか、義足の安定性を求めて別の代償動作を行う可能性が高いです。正しくは:体重支持線が足部内側にある場合、膝折れや義足の不安定性(義足が外転する傾向)がみられることが多い。選びやすい理由:歩行中のアライメント異常は多岐にわたるため、内側荷重が不安定性につながるという点で選択肢として選びやすいかもしれません。混同注意:トレンデレンブルグ徴候や、遊脚相の義足クリアランス不良による代償動作などと混同しやすい。
- 2. 義足が長すぎる場合、義足側の下肢が接地しにくくなり、遊脚相で義足の足先が床に引っかかる(つまづく)リスクが高まります。これを避けるために、非義足側の踵を上げる、義足側の骨盤を挙上させる(ヒップハイク)、義足全体を外側に振り出す(ぶん回し歩行)などの代償動作が見られますが、立脚中期での体幹の義足側への側屈とは異なります。正しくは:義足が長すぎる場合、ぶん回し歩行やヒップハイクなどの遊脚相のクリアランス確保のための代償動作が見られる。選びやすい理由:歩行時の身体の傾きに関する一般的な問題として認識されやすく、義足の長さが不適切であると様々な歩行異常が生じるため、選択肢として選びやすいです。混同注意:遊脚相でのクリアランス確保のための代償動作(ぶん回し歩行、ヒップハイク、非切断肢のつま先立ちなど)と混同しやすい。
- 3. ソケットの初期内転角が過剰である場合、股関節が過度に内転位となり、膝が外反するようなアライメントになりやすいです。これにより、義足の足底全体が接地しにくくなったり、義足の安定性が損なわれたりする可能性はありますが、立脚中期での体幹の義足側への著しい側屈の直接的な原因とはなりにくいです。むしろ、外転歩行や義足膝関節の不安定性につながることが多いです。正しくは:ソケットの初期内転角が過剰であると、義足の足底接地不良や膝関節の外反、または義足の外転歩行がみられることが多い。選びやすい理由:ソケットのアライメントは歩行に大きな影響を与えるため、ソケットの調整不良が歩行異常につながるという点で選びやすいです。混同注意:ソケット外転角が過剰な場合や、ソケットのアライメント不良全般による歩行異常と混同しやすい。
- 4. 正解。ソケットの外側壁が低いと、義足側の大転子を支持する役割が不十分になり、義足側への荷重時に骨盤が義足側に沈み込みやすくなります。これにより、股関節が過度に内転し、重心を支持するために体幹を義足側に側屈させる代償動作が生じます。これはトレンデレンブルグ徴候と類似した機序です。
- 5. 正解。義足側の股関節外転筋(中殿筋など)の筋力低下があると、立脚中期に骨盤を水平に保つことができません。義足側に荷重した際に、筋力不足のため骨盤が非義足側に傾き(落下し)、それを代償するために体幹を義足側へ側屈させることで重心を支持しようとします。これはトレンデレンブルグ徴候そのものです。
国試ポイント
義足歩行の異常歩行とその原因に関する知識が問われています。特に、体幹の側屈(トレンデレンブルグ徴候に類似した代償動作)を引き起こす機械的要因(ソケットのアライメントや適合)と身体的要因(筋力低下)の両方を理解しているかが重要です。複数の原因が複合的に関与することも多く、それぞれの選択肢がどのような歩行異常を引き起こすかを正確に区別できるかがポイントです。
混同注意
義足の他のアライメント不良や筋力低下による様々な歩行異常(例:ぶん回し歩行、膝折れ、前方傾斜など)と混同しやすい。特に、体幹の傾き(側屈、前傾、後傾)がどの方向への代償動作なのか、その根本原因が何であるかを明確に区別することが求められます。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、立脚相のどの時期に、どの方向への体幹の傾きが生じているかを正確に把握し、それが義足のどの部分(ソケット、膝継手、足部)の不適合や、切断端の筋力低下、関節可動域制限など、どの要因によるものかを判断します。特に、代償動作の方向と、本来抑制すべき運動の方向の関係を理解しているかが重要です。
関連知識
・大腿義足の適合基準とアライメント調整。 ・股関節外転筋群(中殿筋など)の機能と歩行における役割。 ・トレンデレンブルグ徴候の定義とその原因(股関節外転筋の筋力低下、大腿骨頭壊死など)。 ・義足歩行における各フェーズでの運動学とバイオメカニクス。 ・ソケットの適合不良がもたらす影響(痛、皮膚トラブル、不安定性など)。