57歳の男性。脳出血による左片麻痺。Brunnstrom法ステージ下肢Ⅲ。左下腿三頭筋のMAS〈modified Ashworth scale〉は2。平行棒内歩行時に左下肢の踵接地はみられず、内反尖足となる。また、左下肢立脚中期に膝のロッキングを認める。そこでダブルクレンザック(ロッド式)短下肢装具を作製した。誤っているのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
ダブルクレンザック(ロッド式)短下肢装具を製作する際、下腿半月の上縁は腓骨頭より2-3cm遠位に設定するのが適切です。これは、腓骨頭に坐骨神経の浅腓骨神経などが走行しており、直接圧迫することで神経麻痺(腓骨神経麻痺)を引き起こすリスクがあるためです。他の選択肢は、短下肢装具の製作における一般的な正しい基準や設計意図を示しています。特に、足関節の角度設定については、患者の現在の症状(内反尖足、膝ロッキング)を改善するために、軽度背屈位に設定して踵接地を促し、膝過伸展を抑制することが重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。装具の下腿半月上縁は、坐骨神経の圧迫を避けるため、腓骨頭よりも2-3cm遠位(下)に設定するのが適切です。腓骨頭に直接当たると、神経麻痺のリスクがあります。選びやすい理由:腓骨頭が下腿の代表的なランドマークであるため、なんとなく正しいと感じてしまうかもしれません。混同注意:装具の適合基準や解剖学的ランドマークに関する知識が不確かな場合、間違いやすいです。
- 2. この装具の設定は本症例に適切ではありません(公式正答を参照)。選びやすい理由:具体的な数値なので、不正確に感じてしまうかもしれませんが、これは一般的なガイドラインです。混同注意:他の装具の寸法基準や、個々の患者の体型に合わせた調整方法と混同する可能性があります。
- 3. これは装具の適切なクリアランスに関する正しい記述です。支柱と皮膚の間に約5mmの間隔を設けることで、摩擦や圧迫を軽減し、快適性を保ちます。選びやすい理由:これも具体的な数値であるため、他の装具との違いや個別の患者状態による調整を考慮すると、迷うかもしれません。混同注意:装具の各部品と身体との適切なクリアランスに関する知識が曖昧だと、間違った判断をしてしまうかもしれません。
- 4. これはダブルクレンザック装具における足継手の適切な位置決めに関する正しい記述です。この位置に設定することで、足関節の自然な運動軸に沿った動きを可能にします。選びやすい理由:足関節の複雑な動きと関係するため、この解剖学的な設定が正しいのか疑問に思うかもしれませんが、これは基本的な原則です。混同注意:足関節の解剖学的な軸と装具の機械的な軸との関係性について理解が不十分だと、混乱する可能性があります。
- 5. 内反尖足と膝のロッキングがみられるため、足関節は底屈0°ではなく軽度背屈位に設定し、踵接地を促して膝の過伸展を抑えます。選びやすい理由:底屈位が尖足を補正するように見えてしまうかもしれませんが、この患者の症状(内反尖足、膝ロッキング)を考慮すると、むしろ背屈方向への誘導が必要です。混同注意:足関節の角度設定が患者の歩行パターンや関節運動に与える影響について、深く理解していないと混乱しやすいです。特に、尖足傾向のある患者に対する適切な装具角度設定について誤解しやすいです。
国試ポイント
脳卒中片麻痺患者の短下肢装具に関する知識(特に適合部位、寸法、角度設定)が問われています。患者の具体的な症状(内反尖足、膝ロッキング)と装具の目的を結びつけて理解しているかが重要です。解剖学的な神経走行も絡めた細かい知識が問われることもあります。
混同注意
装具の各構成要素の名称とその適切な寸法や位置、また、患者の症状(例: 尖足、膝ロッキング)と装具による矯正目的(例: 足関節角度設定)の関連性。特に、腓骨頭と腓骨神経麻痺の関係は重要。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、装具の名称(例: ダブルクレンザック、プラスチック製AFOなど)と患者の主要症状(例: 尖足、膝ロッキング、膝折れ)をまず確認し、装具の各部位の解剖学的ランドマークとの関係、特に神経麻痺のリスクがある部位(腓骨頭など)の適合に関する知識を重視して判断します。また、装具による関節角度設定が、患者の歩行異常に対してどのような影響を与えるかを理解しているかを確認します。
関連知識
短下肢装具の種類(例:タマラック、ダブルクレンザック、プラスチック製)とその適応、各装具の機能と構造、装具製作における採寸や適合に関する基本原則、脳卒中片麻痺患者の歩行異常(尖足、膝ロッキング、膝折れなど)とその原因、装具による各歩行異常への対処法。