20歳の女性。転倒して左下腿骨骨折後、変形治癒となりその後手術が行われた。手術後翌日の単純エックス線(別冊No. 2)を別に示す。この患者に対する運動療法で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
大腿骨骨折術後の運動療法では、骨折の種類や固定方法、患者の状態により個別化されますが、一般的には深部静脈血栓症や肺炎の予防、筋力低下・関節拘縮の予防のため、術後早期からの離床や運動が推奨されます。選択肢2の「術後1日目からの下肢伸展挙上(SLR)運動」は、X線画像(具体的な固定方法に依存するが、髄内釘などの強固な固定がなされている場合)から判断して、比較的安定性の高い骨折であれば、筋力維持や可動域訓練として早期から慎重に開始される可能性があります。他の選択肢は、開始時期が遅すぎるか(3, 4)、負荷が高すぎて早期には不適切(5)、あるいは限定的すぎる(1)ため、適切ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 大腿骨骨折術後のCPM開始時期は、骨折の種類や手術方法、骨癒合の状態によって異なりますが、一般的には早期から開始されます。しかし、「術後1週目から」という限定は、必ずしも適切とは限りません。早期荷重が禁止されている場合や、不安定性が高い場合には遅らせることもあります。正しくは:手術方法や骨折の状態にもよるが、術後早期(例えば翌日〜数日後)から可動域訓練の一環として、医師の指示のもとCPMを開始する場合がある。選びやすい理由:CPMは関節拘縮予防に有効なため、早期開始が良いと考えるかもしれませんが、大腿骨骨折の安定性によっては早すぎると判断されることもあります。混同注意:他の関節(例:膝関節、股関節)のCPM開始時期や、骨折の種類によるプロトコルの違い。
- 2. 正解。大腿骨骨折術後のSLRは、骨折の種類や固定方法にもよりますが、大腿四頭筋の筋力強化と関節可動域維持のために、比較的早期から開始されることがあります。ただし、荷重制限や骨折部の安定性を十分に考慮し、疼痛がない範囲で行う必要があります。この選択肢では「下図(X線画像)」の情報から、固定が比較的安定していると判断できる場合(髄内釘など)、早期からのSLRは適切な運動療法となり得ます。具体的な骨折部位や固定具の種類にもよりますが、特に大腿骨幹部骨折の髄内釘固定では早期離床・運動が推奨されます。
- 3. 足関節の自動運動は深部静脈血栓症の予防のため、手術翌日など早期から行います。手術後2週からでは遅すぎます。正しくは:足関節の自動運動は、術後1日目から積極的に行うべきである。選びやすい理由:大腿骨の骨折なので、足関節は直接関係ないと考えて、開始を遅らせても良いと誤解しやすいかもしれません。混同注意:患部への直接的な荷重運動や大きな関節の運動と、末梢関節の運動の開始時期。
- 4. 大腿四頭筋セッティング(等尺性収縮)は、患部に負担をかけずに筋力低下を予防できるため、大腿骨骨折術後であっても「術後1日目」から積極的に行うべき運動です。1週目から開始では遅すぎます。正しくは:大腿四頭筋セッティングは、術後1日目から積極的に行うべきである。選びやすい理由:大腿四頭筋は骨折部位に近いので、安静期間が必要と考えるかもしれませんが、セッティングは非荷重で行えるため早期開始が基本です。混同注意:等尺性運動と、他のより負荷の高い大腿四頭筋の運動(例:レッグエクステンション)の開始時期。
- 5. レッグエクステンションは、膝関節に大きな剪断力を加え、大腿骨の骨折部に強いストレスをかける可能性があります。術後1日目からの実施は、骨折部の安定性を損なう危険性が非常に高く、一般的にはもっと後期(数週〜数ヶ月後、骨癒合の進行に応じて)に開始されます。正しくは:椅子座位での大腿四頭筋訓練(レッグエクステンション)は、骨癒合の進行と医師の許可を得て、より後期に開始する。選びやすい理由:大腿四頭筋の筋力強化は重要であるため、早期に開始したいと考えるかもしれませんが、この運動は患部に直接大きな負荷をかけます。混同注意:大腿四頭筋セッティング(等尺性収縮)やSLRのような低負荷の運動と、レッグエクステンションのような高負荷の運動の開始時期。
国試ポイント
大腿骨骨折術後の運動療法の開始時期について、特に早期から開始可能な運動と、禁忌となる運動の区別を問う問題です。X線画像から骨折の安定性を判断し、それに合わせた運動療法の選択が求められます。特に、末梢の循環改善や筋萎縮予防のための初期介入と、骨折部に直接的な負荷がかかる運動の区別が重要です。
混同注意
各運動療法の開始時期に関する一般的な原則と、特定の骨折や固定方法における例外的なプロトコルを混同しやすい。また、等尺性運動と動的運動、非荷重運動と荷重運動の区別が曖昧になりやすい。
次に同じ論点が出たら
次回同じ論点が出た場合、具体的な骨折部位(例:大腿骨頸部骨折、転子部骨折など)や、より詳細な固定方法(例:髄内釘、プレート固定、観血的整復内固定術など)が明示される可能性が高い。その際、それぞれの固定方法の安定性に応じた運動開始時期の具体的なプロトコルを問われるでしょう。また、荷重制限の有無や、時期に応じた段階的な運動プログラムの知識も重要になります。
関連知識
大腿骨骨折の種類(頸部、転子部、骨幹部)、手術方法(内固定の種類:髄内釘、プレート固定など)、深部静脈血栓症(DVT)の予防、廃用症候群の予防、各関節の可動域訓練、筋力増強運動の原則。