78歳の男性。脳梗塞。左顔面神経麻痺および右片麻痺を呈する。頭部MRIの拡散強調像(別冊No. 2)を別に示す。梗塞巣として考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
患者は左顔面神経麻痺と右片麻痺を呈しており、これは典型的な交叉性麻痺の症状です。交叉性麻痺は、脳幹の中でも特に橋の病変でよく見られます。下に示す画像④の部位は、脳幹の橋に位置しており、拡散強調像で高信号を呈していることから、急性期の脳梗塞巣と診断されます。したがって、④が最も適切な選択肢です。
選択肢ごとの解説
- 1. この部位に梗塞があると、提示された症状とは異なる神経症状が出現する可能性が高いです。正しくは:この症状であれば、別の部位に梗塞があるはずです。選びやすい理由:画像上、異常に見える箇所がいくつかあるため、勘違いしやすいです。混同注意:脳梗塞の病巣と、たまたま異常に見える他の部位と混同しやすいです。
- 2. この部位の梗塞では、左顔面神経麻痺と右片麻痺という症状の組み合わせは典型的ではありません。正しくは:症状から推測すると、梗塞部位はここではありません。選びやすい理由:拡散強調像では、急性期の梗塞は高信号域として描出されるため、高信号域を広く探しがちです。混同注意:一見して異常に見える部分と、実際の梗塞部位とを混同する可能性があります。
- 3. この部位に梗塞がある場合、左顔面神経麻痺と右片麻痺が同時に起こることは考えにくいです。正しくは:患者の症状は、この部位の梗塞では説明できません。選びやすい理由:脳の解剖学的な知識が不確かだと、誤った部位を選択してしまうことがあります。混同注意:脳幹の病変と、皮質下の病変とを混同する可能性があります。
- 4. 正解。左顔面神経麻痺と右片麻痺が同時に出現する場合、これは交叉性麻痺と呼ばれ、脳幹の病変、特に橋の梗塞で典型的に見られる症状です。提示された画像④の部位は、橋に相当し、拡散強調像で高信号を呈していることから、急性期の梗塞巣と考えられます。正しくは:記載なし選びやすい理由:記載なし混同注意:記載なし
- 5. この部位の梗塞では、左顔面神経麻痺と右片麻痺の組み合わせは説明できません。症状は主に同側性に現れることが多いです。正しくは:この症状は、この部位の梗塞では出現しません。選びやすい理由:拡散強調像の他の高信号域と混同しやすいです。混同注意:小脳や延髄の病変と、橋の病変との鑑別が難しい場合があります。
国試ポイント
脳幹の解剖と、それに関連する交叉性麻痺などの神経症状を正しく理解しているか、またMRI拡散強調像における急性期脳梗塞の所見を判読できるかが問われています。特に顔面神経麻痺と片麻痺が左右逆で出現する『交叉性麻痺』の概念が重要です。
混同注意
脳幹以外の部位の梗塞による症状や、拡散強調像での他の異常所見(陳旧性梗塞、浮腫など)と、急性期脳梗塞の高信号域を混同しやすいです。また、顔面神経核と顔面神経線維の走行、皮質脊髄路の交叉部位を正確に理解していないと、病変部位の特定が難しくなります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず症状から病変部位が脳のどの領域(大脳、小脳、脳幹、脊髄)にあるかを絞り込みます。特に交叉性麻痺の場合は脳幹を疑い、次に脳幹のどのレベル(中脳、橋、延髄)かを鑑別するために、関連する脳神経や運動麻痺のパターンを詳細に検討します。その上で、画像所見と照らし合わせて最終判断を下します。
関連知識
脳神経の局在診断(特に顔面神経)、運動路(皮質脊髄路)の走行と交叉、脳幹の解剖(中脳、橋、延髄)、脳梗塞の病型と症状、MRI拡散強調像における急性期梗塞の診断。ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)やウェーバー症候群(中脳症候群)など、他の脳幹症候群の症状と比較して理解すると良いでしょう。