身体活動のエネルギー代謝で誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
有酸素運動が20分以上持続すると、主なエネルギー源は糖質から脂質へと移行します。これは、体内の糖質貯蔵量には限りがあるため、長時間の運動ではより豊富な脂質が効率的に利用されるようになるためです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。有酸素運動の初期(概ね20分以内)では糖質(グリコーゲン)の利用割合が高いですが、運動時間が長くなる(20分以上)につれて、徐々に脂質(脂肪酸)の利用割合が増加し、主なエネルギー源となります。これは、体内のグリコーゲン貯蔵量が限られているため、長期的なエネルギー供給には貯蔵量の多い脂肪が適しているためです。正しくは:20分を超える有酸素運動では、糖質よりも脂質が主なエネルギー源として使われます。選びやすい理由:運動強度や個人の状態によって糖質利用の割合も変化するため、一概に脂質優位と言い切れないと感じやすい。また、『運動=糖質』という一般的なイメージに引きずられやすい。混同注意:短時間の高強度運動(無酸素運動)と長時間の低~中強度運動(有酸素運動)でのエネルギー基質の選択。
- 2. ATPは、筋収縮だけでなく生体のあらゆる活動における直接的なエネルギー源です。ATPがADP(アデノシン二リン酸)とリン酸に分解される際に放出されるエネルギーが、筋収縮に利用されます。選びやすい理由:正しい記述であるため、誤りを探す問題では選択されません。混同注意:ATPそのものがエネルギー源であることと、ATPを再合成するための代謝経路(解糖系、クエン酸回路、電子伝達系など)の違い。
- 3. 無酸素性作業閾値(AT: Anaerobic Threshold)は、運動強度を上げていく中で、有酸素性エネルギー供給だけではまかないきれなくなり、無酸素性エネルギー供給の割合が増加し始めるポイントです。このポイントは、心肺運動負荷試験(CPX)で呼気ガス分析などを用いて測定され、運動耐容能や運動処方の指標となります。選びやすい理由:正しい記述であるため、誤りを探す問題では選択されません。
- 4. 最大酸素摂取量(VO2max)は、体が運動中に取り込んで利用できる酸素の最大量を示す指標で、全身持久力の高さと相関します。値が高いほど、長時間にわたる有酸素運動を高い強度で継続できる能力があることを意味します。選びやすい理由:正しい記述であるため、誤りを探す問題では選択されません。
- 5. グルコース(またはグリコーゲン)が酸素を使わずに分解される嫌気性解糖では、最終的にピルビン酸が生成されます。酸素供給が十分でない状況下では、ピルビン酸は乳酸に変換されます。これは、NAD+を再生し、解糖系を継続させるために重要な反応です。選びやすい理由:正しい記述であるため、誤りを探す問題では選択されません。混同注意:有酸素性解糖と嫌気性解糖の違い。酸素が十分にある場合はピルビン酸はミトコンドリアに入りアセチルCoAを経てクエン酸回路に入るため乳酸は生成されにくい。
国試ポイント
身体活動時のエネルギー代謝、特に運動時間とエネルギー基質の関係を問う問題です。短時間・高強度運動と長時間・低~中強度運動での主なエネルギー源の違い、およびATPの役割、運動耐容能の評価指標(AT, VO2max)に関する基本的な知識が求められます。
混同注意
有酸素運動の初期段階では糖質が主に利用されるため、運動時間によるエネルギー源のシフトを混同しやすい。また、運動強度が高いほど糖質利用の割合が増えることと、運動時間が長いほど脂質利用の割合が増えることの区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、運動強度とエネルギー源の関係、および各エネルギー供給システムの具体的な反応段階(例:β酸化、クエン酸回路の具体的な場所や生成物)について問われる可能性があります。また、栄養摂取と運動パフォーマンスの関係、疾患時のエネルギー代謝異常についても注意が必要です。
関連知識
ATP-CP系、解糖系(無酸素性)、有酸素系(クエン酸回路、電子伝達系)それぞれの特徴と、それらが運動強度・時間に応じてどのように関与するか。呼吸商(RER)を用いたエネルギー基質比率の推定方法。糖質と脂質の体内の貯蔵量。運動トレーニングによるエネルギー代謝の適応。