78歳の女性。自宅玄関で転倒してから起立歩行不能となり救急搬送された。来院時の単純エックス線画像(別冊No. 2)を別に示す。最も考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下に示す単純エックス線画像では、大腿骨の大転子から小転子にかけて骨折線が明瞭に確認できます。この部位の骨折は「大腿骨転子部骨折」に分類されます。これは高齢者の転倒による股関節周囲骨折として非常に頻度が高いものです。大腿骨頸部骨折との鑑別が重要であり、画像診断では骨折線の位置を正確に判断する必要があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 股関節脱臼の場合、大腿骨頭が寛骨臼から逸脱した明確な像が見られます。下に示す画像では骨頭の位置に異常はありません。正しくは:レントゲン上で大腿骨頭が寛骨臼から完全に外れている所見があれば股関節脱臼が考えられます。選びやすい理由:転倒による股関節周辺の受傷は多いため、脱臼も鑑別疾患として考えやすいです。混同注意:股関節周辺の骨折と脱臼の画像を混同しやすいです。脱臼は骨の位置関係の異常、骨折は骨自体の連続性の異常です。
- 2. 大腿骨頸部骨折は、大腿骨頭のすぐ下の頸部に骨折線が見られます。下に示す画像では骨折線は転子部にあり、頸部にはありません。正しくは:レントゲン上で大腿骨頸部に骨折線が確認されれば大腿骨頸部骨折が考えられます。選びやすい理由:高齢者の転倒による股関節周囲の骨折で非常に多いタイプなので、まず頭に浮かびやすい選択肢です。混同注意:大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折の診断を画像から区別しにくいことがあります。頸部は骨頭と大転子・小転子間の細い部分、転子部は大転子・小転子を含む部分です。
- 3. 大腿骨骨頭骨折は、大腿骨の最も上部の丸い部分である骨頭そのものに骨折線が見られます。下に示す画像では骨頭は保たれており、骨折線は認められません。正しくは:レントゲン上で大腿骨頭の丸い部分に骨折線が確認されれば大腿骨骨頭骨折が考えられます。選びやすい理由:股関節に近い部位の骨折という点では共通しています。混同注意:骨頭、頸部、転子部といった大腿骨近位部の解剖学的名称と、それぞれの部位で発生する骨折の種類を混同しやすいです。
- 4. 大腿骨転子下骨折は、大転子や小転子の下部(大腿骨のシャフトに近い部分)に骨折線が見られます。下に示す画像では骨折線は転子部内に留まっており、転子より下には及んでいません。正しくは:レントゲン上で大転子や小転子よりも遠位側(シャフト寄り)に骨折線が確認されれば大腿骨転子下骨折が考えられます。選びやすい理由:転子部に近い部位の骨折であり、高齢者の転倒による骨折として可能性がゼロではないため、選択肢として考慮するかもしれません。混同注意:大腿骨転子部骨折と大腿骨転子下骨折の区別がつきにくいことがあります。転子部は転子の範囲内、転子下は転子のすぐ下の部分を指します。
- 5. 正解。下に示す画像では、大腿骨の大転子と小転子を含む領域に骨折線が確認できます。これは大腿骨転子部骨折の典型的な画像所見です。正しくは:(正答のため修正不要)選びやすい理由:高齢者の転倒で非常に頻度の高い骨折であり、画像所見も一致しています。混同注意:大腿骨頸部骨折との鑑別が重要です。転子部骨折は関節包外骨折であり、頸部骨折は関節包内骨折である点が異なり、治療方針や合併症のリスクも異なります。
国試ポイント
高齢者の転倒による大腿骨近位部骨折の診断において、レントゲン画像から骨折部位(頸部、転子部など)を正確に識別できるかを問う問題です。各部位の解剖学的知識と典型的な画像所見を結びつけられるかがポイントとなります。
混同注意
大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折の鑑別が最も重要です。また、これらと大腿骨骨頭骨折、股関節脱臼も画像所見の点で混同しやすいですが、それぞれ明確な特徴があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が問われた場合、提供される画像から大腿骨近位部の骨折部位を正確に特定できるか(頸部、転子部、転子下、骨頭の区別)、または脱臼との鑑別ができるかがポイントになります。また、それぞれの骨折型に応じた一般的な治療方針や合併症についての知識も問われる可能性があります。
関連知識
大腿骨転子部骨折は関節包外骨折であり、血行障害による骨頭壊死のリスクは低いですが、偽関節や変形治癒、深部静脈血栓症などの合併症に注意が必要です。治療は通常、髄内釘などの観血的治療が選択されます。高齢者では骨粗鬆症が基盤にあることが多く、予防的介入も重要です。