疾患と支援機器の組合せで適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
関節リウマチでは、手指の関節変形や疼痛により、通常の爪切りを使用することが困難になります。台付き爪切りは、爪切り本体を固定し、片手や軽い力でも使用できるように工夫されているため、関節リウマチの方の爪切り動作を効果的に支援できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。関節リウマチでは手指の関節変形や筋力低下、疼痛により、通常の爪切りを使用することが困難になる場合があります。台付き爪切りは、爪切りを固定することで片手でも使用しやすくなり、また把持動作が不要になるため、手指への負担を軽減できます。これにより、爪切り動作の自立を支援することが可能です。正しくは:この組み合わせは適切です。選びやすい理由:他の選択肢と比較して、具体的な疾患と支援機器の関連性が最も明確で、広く一般的に知られている組み合わせであるため、選びやすいと考えられます。混同注意:他の選択肢のような、より重度の障害や特定の用途に特化した機器の知識がない場合、この基本的な組み合わせを適切に判断できるかが重要となります。
- 2. プルトップオープナーは、缶のプルトップを開ける際に指先の力を補助したり、爪への負担を軽減したりするための道具です。片側の手関節が離断している場合、片手での操作となるため、プルトップを固定するもう一方の手がないことが問題となります。この機器は基本的に両手での操作を想定しているか、少なくとも片手で機器を保持しつつ、もう片方の手で缶を固定できる状況で有効です。そのため、片手のみで操作が完結するような工夫がされたオープナーでない限り、単にプルトップオープナーを提示しても直接的な支援にはなりにくいです。むしろ、テーブルなどに固定できるタイプのオープナーや、より工夫された片手用オープナーの方が適切でしょう。正しくは:片側手関節離断の場合、プルトップオープナーの使用は困難である可能性が高いです。片手でも使用できる固定式オープナーなどが適切でしょう。選びやすい理由:プルトップオープナーが「便利グッズ」として広く認識されているため、何らかの手の不自由を抱える人に役立つと思われがちです。混同注意:片手操作の困難さを過小評価したり、単に「手先を使う」という点で関連付けてしまったりする可能性があります。
- 3. スライディングボードは、主に座った姿勢で異なる場所への移乗を補助するために使用される機器です。下肢の麻痺がある場合でも、上肢や体幹の残存機能を利用して体重移動を行い、ボード上を滑るように移乗します。第腰髄完全損傷の場合、下肢は麻痺しますが、体幹の筋力や上肢の機能は通常保たれています。しかし、スライディングボードを使用する上で重要となるのは、移乗の際に必要となる上肢や体幹の十分な筋力とバランス能力です。第腰髄完全損傷の場合、座位バランスはある程度保てますが、上肢の機能が正常であるため、むしろ移乗能力は比較的高いことが多いです。移乗動作の補助としては有効な場合もありますが、第腰髄完全損傷で必須となる機器というよりは、より上位の脊髄損傷や重度の運動機能障害がある場合に特にその必要性が高まります。この組み合わせは絶対的に不適切とは言えないものの、最も適切な組み合わせとして挙げるには、第腰髄完全損傷の残存機能から考えると、他の選択肢の方がより直接的な支援となる可能性を考慮すべきです。ただし、この問題の意図としては、より上位の損傷(例:頸髄損傷)での移乗困難に対する機器として認識されている可能性が高いです。正しくは:スライディングボードは、特に頸髄損傷など上肢・体幹機能も低下している場合に重宝されます。第腰髄完全損傷の場合でも使用される可能性はありますが、絶対的に最も適切な組み合わせとは言い切れません。選びやすい理由:下肢麻痺があるために移乗に何らかの補助が必要であるという認識から、スライディングボードを連想しやすいです。混同注意:脊髄損傷のレベルによって残存機能が異なること、特に第腰髄損傷では上肢機能が正常であることを考慮せず、単に「下肢麻痺=移乗困難」と結びつけてしまう可能性があります。
- 4. コミュニケーションエイド(意思伝達装置)は、言語によるコミュニケーションが困難な方が、文字入力やシンボル選択などによって意思を伝えるための機器です。第頸髄完全損傷の場合、四肢麻痺が生じ、重度な場合は発声に関わる筋力も低下し、コミュニケーションが困難になることがあります。そのため、コミュニケーションエイドは非常に有用な支援機器であり、適切な組み合わせと言えます。しかし、選択肢1の「関節リウマチに台付き爪切り」も非常に適切であり、比較検討が必要です。この問題では「適切なのはどれか」と単数解答を求めているため、最も適切なものを選ぶ必要があります。コミュニケーションエイドは頸髄損傷の中でも特に重度の場合にその必要性が高まりますが、台付き爪切りは関節リウマチの多くの方に適用し得る汎用性の高い自助具です。この設問では「コミュニケーションエイド」と漠然とした表現であるため、具体的な装置によってその適応も変わりますが、頸髄損傷の患者さんにとって、日常生活の様々な側面を支援する機器の一つであることは間違いありません。正しくは:第頸髄完全損傷の方にとってコミュニケーションエイドは非常に有用な支援機器であり、適切な組み合わせの一つです。ただし、他の選択肢との比較で最も適切かどうかを検討する必要があります。選びやすい理由:頸髄損傷の重篤性とコミュニケーションの困難さを直結させ、コミュニケーションエイドの重要性を認識しているため、正しい選択肢だと判断しやすいです。混同注意:広義の「コミュニケーションエイド」という言葉が示す範囲が広く、具体的な装置やその操作方法、そして頸髄損傷のレベルや残存機能との関連性を詳細に考慮しないと、その適切性を過大評価する可能性があります。
- 5. リーチャーは、遠くの物や手の届かない場所にある物を掴むための自助具です。主にリーチ能力の低下や、腰をかがめるのが困難な場合に有効です。アテトーゼ型脳性麻痺の特徴は、不随意運動や協調運動障害であり、リーチ能力そのものが低下しているというよりも、目的の物を正確に掴むことが困難であるという点が問題となります。リーチャーは、その先端で物を掴むために繊細な操作を必要とすることが多く、不随意運動のあるアテトーゼ型脳性麻痺の方にとっては、リーチャーを操作すること自体が困難であるか、かえって不随意運動によって目的の物を落としてしまうリスクが高まります。そのため、アテトーゼ型脳性麻痺の方にとってリーチャーは必ずしも適切な支援機器とは言えません。むしろ、環境調整(物の配置)や、より安定した把持が可能なユニバーサルデザインの自助具の方が適している場合があります。正しくは:アテトーゼ型脳性麻痺の方にリーチャーは、不随意運動により操作が困難な場合が多く、不適切です。他の支援方法や環境調整が望ましいでしょう。選びやすい理由:脳性麻痺による運動機能障害があるという大まかな認識から、日常生活動作を補助する機器としてリーチャーを連想してしまう可能性があります。混同注意:アテトーゼ型脳性麻痺特有の不随意運動や協調運動障害の特性を考慮せず、単に「手が届かない」という問題に対する一般的な解決策としてリーチャーを選んでしまう可能性があります。
国試ポイント
本問題は、様々な疾患の特性と、それに応じた支援機器(自助具や福祉機器)の適切な組み合わせを問うものです。各疾患の症状や機能障害の種類を正確に理解し、それぞれの機器がどのような機能障害に対して効果を発揮するのかを知っていることが重要です。特に、選択肢2、3、4、5は、一見すると関連がありそうに見えるものも含まれているため、各疾患の具体的な特性と機器の操作性や効果を深く理解しているかが問われます。
混同注意
選択肢4の「第頸髄完全損傷にコミュニケーションエイド」も非常に適切な組み合わせであり、どちらを選ぶか迷う可能性があります。しかし、関節リウマチの台付き爪切りは、より多くの関節リウマチ患者に適用可能な、汎用性が高く直接的な支援を提供する組み合わせと考えられます。頸髄損傷のレベルやコミュニケーションの困難さの程度によっては、コミュニケーションエイドの種類も多岐にわたるため、一概に「コミュニケーションエイド」という言葉だけで最適性を判断するのは難しい場合もあります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題では、提示された疾患の具体的な機能障害(例:リーチ能力、把持力、随意運動の有無、コミュニケーション能力など)を正確に把握し、その機能障害を補完する機器の特性と操作方法を考慮して、最も効果的かつ安全な組み合わせを選択する練習が必要です。
関連知識
自助具・福祉機器の種類と適応、各疾患(関節リウマチ、脊髄損傷、脳性麻痺など)の病態生理と機能障害、ADL(日常生活動作)評価と支援方法。