10歳の男児。Duchenne型筋ジストロフィー。独歩不可能で、屋外は車椅子で、室内では四つ這い移動が可能。上肢に拘縮はなく、座位で上肢の使用が可能である。この時期に優先して行うべき評価はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Duchenne型筋ジストロフィーでは、疾患が進行し歩行能力が失われる10歳前後から、呼吸筋の筋力低下が顕著になり、呼吸機能が急速に悪化するリスクが高まります。呼吸不全は生命予後を左右する重要な因子であるため、この病期においては呼吸機能検査を優先し、適切な呼吸管理を開始することが極めて重要となります。
選択肢ごとの解説
- 1. Duchenne型筋ジストロフィー患者の一部には知的障害を合併することがありますが、この段階(独歩不可能、屋内四つ這い移動、上肢機能温存)で最も優先される評価ではありません。呼吸機能の低下は生命に直結するため、より優先度が高いです。正しくは:知的発達の遅れが疑われる場合や、学習支援の必要性を判断するために実施されますが、緊急性は低いことが多いです。選びやすい理由:筋ジストロフィー患者の包括的な評価の一環として考えられがちですが、身体機能の進行状況から優先順位は低いです。混同注意:筋ジストロフィー全般の合併症としての知的障害の可能性
- 2. Duchenne型筋ジストロフィーでは、筋力低下の進行に伴い深部腱反射は減弱または消失します。これは診断時や病状確認の評価項目ではありますが、この病期において最も優先される評価とは言えません。生命維持に関わる呼吸機能の評価がより重要です。正しくは:筋力低下の程度を客観的に把握する指標の一つであり、疾患の進行状況を追跡するために用いられますが、優先度は低いです。選びやすい理由:神経筋疾患の基本的な検査項目であるため、選択肢として魅力的です。混同注意:神経学的所見としての深部腱反射の意義
- 3. Duchenne型筋ジストロフィーは筋原性疾患であり、神経そのものの機能障害ではありません。神経伝導速度検査は主に神経障害の有無や程度を評価するものであり、この疾患の病態把握にはあまり寄与しません。筋疾患の評価には筋電図検査などが用いられますが、この設問の病期における最優先事項ではありません。正しくは:神経伝導速度検査は、神経疾患の鑑別診断に用いられる検査であり、筋原性疾患であるDuchenne型筋ジストロフィーの進行度評価には不適切です。選びやすい理由:筋力低下を伴う疾患の診断・鑑別として一般的な検査項目であるため、選んでしまいがちです。混同注意:神経原性疾患と筋原性疾患の鑑別
- 4. 正解。Duchenne型筋ジストロフィーは進行性の筋力低下を特徴とし、特に10歳頃から呼吸筋の弱化が顕著になり、呼吸機能の低下が生命予後に大きく影響します。独歩不可能となり、車椅子や四つ這いでの移動が主となっているこの時期は、呼吸機能管理が非常に重要となるため、その評価が最優先されます。正しくは:呼吸機能の低下は肺炎などの合併症を招きやすく、人工呼吸器の使用や排痰補助の検討が必要となるため、定期的な評価が必須です。選びやすい理由:運動機能低下がメインの問題と捉えがちですが、年齢と病期を考慮すると呼吸機能の重要性が増します。混同注意:初期の運動機能評価と進行期の生命維持に関する評価
- 5. 設問文に「上肢に拘縮はなく、座位で上肢の使用が可能である」と明記されているため、現時点で上肢の機能低下は重篤ではないと判断できます。前腕の回内外機能の評価は上肢機能の一部ではありますが、この時期における全身の生命維持に関わる呼吸機能評価に比べると、優先順位は低いです。正しくは:上肢機能の評価はリハビリテーション計画立案に重要ですが、呼吸機能低下のリスクが高いこの病期においては緊急性や優先度が低いです。選びやすい理由:筋ジストロフィーの進行により上肢にも筋力低下が起こるため、評価項目の一つと考えやすいです。混同注意:全身の生命維持に関わる機能と、局所の運動機能
国試ポイント
Duchenne型筋ジストロフィーの病期ごとの主な問題点と、それに対する優先的な評価項目を理解しているかが問われています。特に、呼吸機能低下が生命予後に与える影響の大きさを把握しているかどうかが重要です。
混同注意
筋ジストロフィーは全身の筋力低下を特徴とするため、どの検査も重要に思えがちですが、年齢や現在の身体状況から最も生命維持に関わる問題を見抜くことがポイントです。特に初期の診断や運動機能評価と、進行期における全身管理の評価を混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、Duchenne型筋ジストロフィーの年齢と身体機能の進行度合いから、その時期に最も生命予後に直結する問題点(呼吸機能、心機能など)を見極める能力が問われると予想されます。また、それぞれの評価が何のために行われるのかを正確に理解している必要があります。
関連知識
Duchenne型筋ジストロフィーの病期分類(例:Walkerの分類)、各病期における主な症状と合併症、呼吸管理の重要性、ゴワーズ徴候、心筋症の合併、脊柱変形など。