68歳の女性。外出中、前方に転倒して受傷し、骨折に対して手術療法が行われた。術後のエックス線写真(別冊No. 3)を別に示す。手術後の理学療法で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
股関節(大腿骨頚部など)の手術後には、脱臼予防のための動作指導が重要です。ズボンを履く際に患側下肢から通すことで、股関節の過度な屈曲・内転・内旋といった脱臼を誘発しやすい肢位を避け、安全に動作を行うことができます。これは、患部に負担をかけずに健側で安定を保ちながら動くための基本的な指導です。
選択肢ごとの解説
- 1. 多くの骨折手術後、早期からの部分荷重は骨癒合を促進し、関節の拘縮予防や筋力維持に役立つため、骨癒合を待たずに医師の指示のもとで荷重を開始することが一般的です。正しくは:医師の指示や骨折のタイプ、固定性に応じて、術後早期から部分荷重や免荷での運動を開始し、段階的に荷重を増やしていく。選びやすい理由:骨折なので、完全に治ってから動かすのが安全だと考えがちです。混同注意:過去の治療法や不適切な固定の場合の対応と混同する可能性があります。
- 2. 股関節または大腿骨頚部骨折の手術(例:人工骨頭置換術)の場合、膝関節は直接的な手術部位ではありませんが、術直後から無理な可動域訓練を行うと、患部の安静が保てず、痛みや合併症(例:脱臼など)のリスクを高める可能性があります。膝関節の可動域訓練は、患部の安定性や痛みの状態を考慮しながら、適切な時期と範囲で段階的に開始する必要があります。正しくは:手術部位の安定性や痛みの程度を考慮し、医師の指示のもとで、早期からの膝関節運動を始めるが、無理のない範囲で段階的に行う。選びやすい理由:関節の拘縮予防のために、早期からの可動域訓練が重要であるという一般的な知識から、すべての関節に適用されると考えやすいです。混同注意:手術部位に直接関係のない関節は、早期から自由に動かせるという誤解。
- 3. 正解。患側(手術した側)の脚からズボンを通すことで、健側(健康な側)で体を支えたり、バランスを取ったりしながら、無理なく安全に衣服を着脱できます。これは、股関節の過度な屈曲や内転を避け、脱臼リスクを低減するための重要な動作指導です。選びやすい理由:健側からの方が安定するように思えるかもしれませんが、それは健康な人がバランスを崩さないための方法であり、患部に負担をかけないための手順とは異なります。
- 4. 両松葉杖で階段を降りる際は、まず松葉杖と患側下肢を同時に下の段に下ろし、次に健側下肢を降ろすのが安全な方法です。これにより、松葉杖と患側で支持を保ちながら健側を移動させることができます。『上がるときは健側、降りるときは患側』が基本です。正しくは:両松葉杖で階段を降りる際は、松葉杖と患側下肢を一緒に下の段に降ろし、その後で健側下肢を降ろす。選びやすい理由:階段を上る時と混同しやすく、健側からだと安全なように感じてしまいます。混同注意:階段を上る時の手順(上る時は健側から)と混同する。
- 5. 手術直後や患部の安静が必要な時期には、関節運動を伴う等張性運動ではなく、関節に負担をかけにくい等尺性運動(アイソメトリック運動)から開始するのが一般的です。これは、手術部位へのストレスを最小限に抑えつつ、筋力低下を防ぐためです。正しくは:大腿四頭筋の筋力強化は、手術部位への負担が少ない等尺性運動(アイソメトリック運動)から開始し、段階的に等張性運動へと移行する。選びやすい理由:筋力強化といえば等張性運動というイメージが強いですが、術直後のリスクを考慮していないため、誤りです。混同注意:筋力トレーニングの原則(等張性運動が筋肥大に効果的)と、術後のリハビリテーションの初期段階における安全性の確保という原則を混同する。
国試ポイント
理学療法士国家試験では、特に股関節周囲の骨折や人工関節置換術後の患者に対する、脱臼予防を含むADL指導の基本的な知識が頻繁に問われます。患者の安全を最優先にした具体的な動作方法を理解しているかが試されます。画像診断と結びつけて、病態に応じた理学療法介入が問われる典型的な問題です。
混同注意
松葉杖での階段昇降の手順(上る時は健側、降りる時は患側)や、術直後の運動療法の開始時期(等尺性運動から)はよく混同され、誤答の選択肢として頻出します。また、一般的な筋力トレーニングの常識と術直後のリハビリの原則との違いも注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、まず『手術部位』と『具体的な治療目的(例:脱臼予防、早期離床など)』を特定し、それに応じた『安全な動作指導』や『適切な運動療法の開始時期・方法』を評価します。特に脱臼リスクのある関節の動作指導は、具体的な肢位や順番が重要です。
関連知識
人工股関節置換術後の脱臼肢位(屈曲・内転・内旋)、股関節の機能解剖、骨癒合の段階と荷重の目安、ADL指導の原則、松葉杖歩行での階段昇降手順(上がるときは健足から、下がるときは患足から)。