12歳の男児。約2か月来の膝関節痛を主訴に近医を受診した。陸上部に所属しているが、特に外傷の既往はない。下腿近位部の腫脹、圧痛、安静時痛を認めた。膝関節の可動域は疼痛のため、著明に制限されていた。単純X線画像およびMRI画像(別冊No. 2)を別に示す。画像所見で異常を指摘され、紹介受診となった。発熱はなく全身状態は良好。血液検査では炎症反応は正常で、ALPの上昇を認めた。最も考えられる疾患はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
この症例は、12歳男児の膝関節周辺の痛み、腫脹、安静時痛が2か月続くという経過、画像所見での骨破壊と骨膜反応、そして血液検査での炎症反応正常かつALP上昇という特徴が提示されています。これらの情報は、小児に好発する悪性骨腫瘍である骨肉腫に典型的な所見です。特にALPの上昇は骨形成性変化を伴う骨肉腫でよく見られます。他の選択肢は、年齢、症状、全身状態、炎症反応の有無、画像所見などから除外されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 骨挫傷は通常、外傷によって生じ、安静時痛が長期間続くことは稀です。また、画像所見(特にMRI)では骨挫傷よりも広範な骨病変が示唆され、ALPの上昇も通常は見られません。正しくは:骨挫傷は骨内部の微細な損傷であり、画像上ではMRIのT2強調画像などで高信号として描出されますが、本症例のX線やMRIで示されるような明らかな骨破壊や広範囲な骨病変とは異なります。選びやすい理由:スポーツをしている小児の膝痛であるため、外傷関連の疾患として候補に挙がりやすいかもしれません。混同注意:オスグッド・シュラッター病などのスポーツ障害と混同しやすい可能性がありますが、画像所見やALP上昇の有無で区別します。
- 2. 骨髄炎は細菌感染による骨の炎症であり、通常は発熱や全身倦怠感などの炎症反応を伴います。本症例では発熱がなく、血液検査での炎症反応も正常とされているため、可能性は低いです。正しくは:骨髄炎の場合、発熱やCRP・白血球数などの炎症マーカーの著明な上昇が一般的です。選びやすい理由:下腿の腫脹や圧痛、安静時痛という症状は炎症性疾患を思わせるため、一時的に選択肢として考えるかもしれません。混同注意:炎症性疾患であるため、症状だけを見ると鑑別が必要ですが、発熱や炎症反応の有無で区別します。
- 3. 正解。12歳男児の膝周辺の長期にわたる痛み、腫脹、安静時痛という症状は骨肉腫でよく見られます。X線画像で骨破壊像や骨膜反応(Codman三角、Sunburst signなど)、MRI画像で骨髄内浸潤や軟部組織への進展が示唆される所見は骨肉腫の特徴です。ALPの上昇は、骨形成が活発に行われている骨肉腫でしばしば認められる腫瘍マーカーです。正しくは:症状、画像所見、ALP上昇というすべての情報が骨肉腫を示唆しています。
- 4. 軟骨肉腫は成人(特に中高年)に多く発生し、小児に発症することは非常に稀です。また、軟骨肉腫は骨肉腫に比べて悪性度が低い傾向があり、画像所見も異なります。正しくは:軟骨肉腫は小児期に稀で、骨肉腫とは好発年齢層が異なります。選びやすい理由:骨に発生する悪性腫瘍であるため、類縁疾患として考慮されるかもしれませんが、年齢層で除外されます。混同注意:同じ骨原発の悪性腫瘍である骨肉腫と混同しやすいですが、好発年齢で区別します。
- 5. 疲労骨折は繰り返しの負荷により発生しますが、通常は限局的な痛みで、腫脹や安静時痛が2か月も持続し、広範な骨破壊やALP上昇を伴うことは稀です。画像所見も疲労骨折で示される典型的な所見とは異なります。正しくは:疲労骨折の画像所見は骨膜の肥厚や骨硬化像が主であり、本症例で示されるような著明な骨破壊像や軟部組織への進展を伴うことは通常ありません。また、ALPの上昇も一般的ではありません。選びやすい理由:陸上部に所属しているという情報から、スポーツ関連の障害として選びやすい選択肢です。混同注意:スポーツをしている小児の膝痛という点でオスグッド・シュラッター病や骨挫傷などのスポーツ障害と混同しやすいですが、画像所見や全身症状、ALPの有無で鑑別します。
国試ポイント
小児期に発症する悪性骨腫瘍(骨肉腫)の典型的な臨床症状、画像所見(X線、MRI)、および血液検査所見(ALP上昇)を正確に理解しているかを問う問題です。スポーツ活動をしている小児の膝痛という状況で、一般的なスポーツ障害だけでなく、稀な疾患も鑑別診断に含める視点が重要です。
混同注意
スポーツ障害(オスグッド・シュラッター病、骨挫傷、疲労骨折など)と悪性骨腫瘍の鑑別。炎症性疾患(骨髄炎)との鑑別。
次に同じ論点が出たら
同様の論点で出題された場合、年齢、症状の期間、安静時痛の有無、全身状態(発熱、倦怠感)、局所の所見(腫脹、圧痛)、画像所見(X線での骨破壊・骨膜反応、MRIでの軟部組織浸潤)、血液検査所見(炎症反応、ALPなどの腫瘍マーカー)を複合的に評価できるかが問われます。特にALP上昇が骨肉腫の重要な手掛かりとなることを覚えておく必要があります。
関連知識
骨肉腫は、骨芽細胞由来の悪性腫瘍で、好発年齢は10~20歳代、好発部位は長管骨の骨端線周辺(特に大腿骨遠位、脛骨近位など)です。X線では骨破壊、骨膜反応(Codman三角、spiculated new bone formationなど)が見られ、MRIでは骨髄内浸潤や軟部組織への進展が評価されます。治療は手術と化学療法が中心です。