70歳の男性。自転車エルゴメーターを用い負荷強度30 Wattsから50 Wattsの5種類の一定負荷を行わせた時の心拍数変化を図に示す。この例に全身持久力トレーニングで運動強度を嫌気性代謝閾値〈AT〉に設定する場合、最も適切な負荷強度(Watts)はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下図のグラフから、負荷強度40ワットを超えたあたりから心拍数の増加の傾きが急峻になっていることが読み取れます。これは、嫌気性代謝閾値(AT)に到達した、またはその直前であることを示唆しており、全身持久力トレーニングの運動強度をATに設定する場合、最も適切な負荷強度は40ワットであると判断されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 下図のグラフから、負荷強度30ワットでは心拍数の増加が緩やかであり、嫌気性代謝閾値(AT)に到達しているとは考えにくいです。ATは運動強度の上昇に伴い心拍数も明確に上昇するポイントを指します。正しくは:ATに達していると考えられる心拍数と負荷強度の関係を読み取る必要があります。選びやすい理由:最も低い負荷強度であるため、一見安全に思えるかもしれませんが、ATに達しない運動強度では全身持久力トレーニングの効果が限定的です。混同注意:ATは個人の体力レベルによって異なり、単に低い負荷強度を選ぶだけではトレーニング効果が得られません。
- 2. 下図のグラフを見ると、負荷強度35ワットでも心拍数の増加はまだ比較的なだらかであり、明確な嫌気性代謝閾値(AT)に到達しているとは判断しにくいです。ATは心拍数の増加率が変化する点として現れます。正しくは:心拍数と負荷強度のグラフの傾きが変化する点、つまりATを示す箇所を正確に特定する必要があります。選びやすい理由:30ワットよりは運動強度が高いものの、まだATとして適切かどうかの判断にはグラフの全体的な傾向を考慮する必要があります。混同注意:ATの特定には、心拍数だけでなく、主観的運動強度や呼吸交換比なども補助的に用いられることがありますが、この問題では心拍数変化のグラフから読み取ります。
- 3. 正解。下図のグラフを観察すると、負荷強度40ワットを超えたあたりから心拍数の増加の傾きが急峻になっていることがわかります。これは、運動強度が嫌気性代謝閾値(AT)を超え、無酸素運動の割合が増加し始めたことを示唆しており、ATに設定するのに最も適切な負荷強度であると考えられます。正しくは:選択肢の中でグラフの傾きが最も明確に変化するポイントを見つけることが重要です。選びやすい理由:これ以上の負荷強度ではATを大きく超えてしまう可能性があるため、最も効果的かつ安全なAT設定として適切です。混同注意:ATは乳酸の蓄積が急増し始める点であり、心拍数の増加の傾きが変化する点で間接的に評価されます。
- 4. 下図のグラフでは、負荷強度45ワットはすでに心拍数の増加の傾きがかなり急になっており、嫌気性代謝閾値(AT)を明らかに超えている可能性が高いです。ATをトレーニング強度に設定する場合、ATを大きく上回る運動強度は適切ではありません。正しくは:ATは運動中の疲労をコントロールしつつ効果的なトレーニングを行うための強度であり、ATを大きく超える設定は過負荷になる可能性があります。選びやすい理由:より高い強度の方がトレーニング効果が高いと考えるかもしれませんが、AT設定の目的はATを大幅に超えない範囲で効果を出すことです。混同注意:ATは、有酸素運動能力の限界を示す指標であり、ATを超える運動は短時間しか継続できません。
- 5. 下図のグラフを見る限り、負荷強度50ワットでは心拍数の増加は非常に急峻であり、嫌気性代謝閾値(AT)を大幅に超えた運動強度であると考えられます。この強度を継続して全身持久力トレーニングを行うことは、70歳男性の症例では過度な負担となり、リスクが高い可能性があります。正しくは:ATは個人の能力に応じた適切な強度設定の目安であり、過度な強度は避けるべきです。選びやすい理由:最も高い負荷強度であるため、最大の効果を得られると誤解するかもしれませんが、AT設定の原則に反します。混同注意:ATを超えた運動は、疲労困憊に至るまでの時間が短く、長時間継続する全身持久力トレーニングには不向きです。
国試ポイント
嫌気性代謝閾値(AT)の概念と、心拍数と運動強度の関係を示すグラフからATを読み取る能力が問われています。ATは運動強度が増加するにつれて乳酸の血中濃度が急激に上昇し始める点であり、生理学的には換気量や心拍数の変化によって間接的に評価されます。心拍数と運動強度の関係が線形性を失い、心拍数の増加率が顕著に高まる点がATの指標となります。
混同注意
ATを特定する際に、ただ心拍数が高くなる点を選ぶのではなく、心拍数増加の『傾き』が変化する点を見極めることが重要です。グラフの読み取りが不十分だと、ATより低い強度や高い強度を選んでしまう可能性があります。
次に同じ論点が出たら
この患者のトレーニングプログラムを具体的に立案する際、ATを考慮した運動処方を作成するために、どのような運動様式(例えば、有酸素運動の種類、時間、頻度)を選択すべきか検討する。
関連知識
嫌気性代謝閾値(AT)は、持久力トレーニングにおける運動強度設定の重要な指標です。AT以下の運動では主に有酸素性エネルギー供給が行われ、長時間継続できます。AT以上の運動では無酸素性エネルギー供給の割合が増加し、乳酸が蓄積しやすくなり、運動の継続時間が短くなります。全身持久力トレーニングでは、ATレベルまたはやや下回る程度の強度で長時間運動を行うことが効果的とされています。また、運動処方にはATの他にも、最大酸素摂取量(VO2max)の〇〇%、目標心拍数などが用いられます。