82歳の女性。高血圧と糖尿病の治療を長期にわたり行っている。徐々に歩行障害がみられるようになり、転倒することが多くなった。頭部MRIのFLAIR像(別冊No. 1)を別に示す。画像所見で考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
提示されたFLAIR画像では、脳室周囲や皮質下白質に多発性の高信号病変が散見されます。これは陳旧性のラクナ梗塞や虚血性白質病変(Leukoaraiosis)の所見として特徴的です。患者の既往歴(高血圧、糖尿病)はこれらの脳血管障害のリスク因子であり、歩行障害や転倒のリスク増加と関連します。したがって、これらの臨床像と画像所見は多発性脳梗塞と最も合致します。
選択肢ごとの解説
- 1. 視床出血では、FLAIR画像において急性期には高信号、亜急性期以降は周辺に浮腫を伴う不均一な信号変化を示すことが多いですが、本症例の画像所見とは異なります。出血の場合、T2*強調画像などで検出されやすいですが、FLAIR画像では今回の特徴的な所見とは一致しません。正しくは:視床出血の場合、FLAIR画像での所見は今回の多発性の高信号病変とは異なる特徴を示します。選びやすい理由:脳血管障害の一種であるため、既往歴との関連で選択肢として検討されるかもしれませんが、画像所見が異なります。混同注意:他の脳血管障害と混同されやすいですが、画像の特徴的な信号強度と分布が異なります。
- 2. 硬膜下血腫は、FLAIR画像では脳表に沿った三日月状または紡錘状の病変として現れます。血腫の時期によって信号強度は変化しますが、今回の画像で示されているような多発性の点状・斑状の高信号域とは異なる形態です。正しくは:硬膜下血腫は脳表に沿った集積を示し、今回の多発性病変とは形態が異なります。選びやすい理由:高齢者の転倒歴があるため、外傷性病変として考慮されるかもしれませんが、画像所見が硬膜下血腫の典型像とは異なります。混同注意:脳出血の一種であり、高齢者や転倒歴から疑われることはありますが、画像上の特徴的な分布と形態が異なります。
- 3. くも膜下出血の場合、FLAIR画像ではくも膜下腔、特に脳溝や脳槽に沿って高信号域が認められます。これは脳脊髄液中の血液成分によるもので、今回の画像で観察される多発性の実質内病変とは異なるパターンです。正しくは:くも膜下出血は脳溝や脳槽の高信号として描出され、今回の画像所見とは異なります。選びやすい理由:急性の頭痛や意識障害を伴うことが多く、今回の主訴とは異なりますが、脳血管障害の範疇であるため選択肢として検討されることがあります。混同注意:他の脳血管障害と混同されることがありますが、くも膜下腔に沿った高信号が特徴です。
- 4. 正常圧水頭症では、脳室拡大、脳梁角の狭小化、脳室周囲の脳脊髄液透過性亢進によるFLAIR高信号(Periventricular hyperintensity, PVH)などが特徴的ですが、今回の画像では脳室拡大や特徴的なPVHよりも、脳実質内に広範囲に分布する多発性の高信号域が目立ちます。また、歩行障害、認知機能障害、尿失禁が三主徴ですが、画像所見で鑑別が必要です。正しくは:正常圧水頭症の画像所見は脳室拡大と脳室周囲のFLAIR高信号が主体であり、今回の多発性の点状・斑状病変とは異なります。選びやすい理由:歩行障害が主訴であるため、鑑別疾患として挙げられやすいですが、MRIのFLAIR像で特徴的な脳室周囲の所見は強くありません。混同注意:歩行障害を主訴とする高齢者で鑑別すべき疾患ですが、画像所見で区別できます。
- 5. 正解。FLAIR画像では、慢性期の脳梗塞病変は高信号域として描出されます。高血圧や糖尿病は脳梗塞のリスク因子であり、高齢者の歩行障害や転倒と関連が深いです。画像では、脳実質内に多発性の高信号病変が散在しており、これはラクナ梗塞や虚血性変化、特に慢性期の多発性脳梗塞の所見と合致します。脳室周囲や深部白質に多く見られることが多いです。
国試ポイント
MRIのFLAIR画像における慢性期の虚血性病変(特にラクナ梗塞や白質病変)の所見を理解しているか、またそれらの所見と患者の臨床症状(歩行障害、転倒)および既往歴(高血圧、糖尿病)を結びつけて考える能力が問われます。各脳血管障害や神経疾患の典型的な画像所見を鑑別する知識が重要です。
混同注意
脳腫瘍や炎症性疾患の一部もFLAIR高信号を呈することがありますが、多発性、特に脳室周囲や深部白質に散在する形態と患者背景から多発性脳梗塞が最も鑑別されます。正常圧水頭症も歩行障害を呈しますが、画像所見(脳室拡大など)が異なります。
次に同じ論点が出たら
この所見が多発性脳梗塞であることを踏まえ、歩行障害に対する理学療法プログラムをどのように立案すべきか、また脳卒中再発予防のためにどのような生活指導や服薬指導の確認が必要か。
関連知識
FLAIR (Fluid-Attenuated Inversion Recovery) シーケンスは、脳脊髄液からの信号を抑制することで、脳実質内の病変をより鮮明に描出するT2強調画像の一種です。特に脳室周囲の病変や、脱髄疾患、虚血性変化、浮腫などの検出に優れています。脳梗塞では、急性期には拡散強調画像、慢性期にはT2強調画像やFLAIR画像で高信号として描出されます。高血圧、糖尿病、脂質異常症などは脳梗塞の主要な危険因子です。