摂食嚥下障害の病態と手技の組合せで正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
摂食嚥下障害における病態は多岐にわたり、それぞれに対する対応策(訓練法や代償的手技)も様々です。メンデルソン手技は、嚥下反射開始後に喉頭の最大挙上位を意識的に延長・維持することで、食道入口部である輪状咽頭筋の開大を延長し、食塊の食道への通過を促進する目的で用いられます。したがって、「食道入口部開大不全に対するメンデルソン手技」の組み合わせは正しいです。
選択肢ごとの解説
- 1. シャキア法(Shaker method)は、舌骨上筋群を強化し、喉頭挙上および食道入口部(輪状咽頭筋)の開大を促す訓練法であり、鼻咽腔閉鎖不全とは直接的な関連はありません。正しくは:鼻咽腔閉鎖不全に対しては、頭部前屈位での嚥下や努力嚥下、軟口蓋挙上訓練などが検討されます。選びやすい理由:シャキア法は嚥下関連の訓練として広く知られているため、病態との関連性を深く考えずに選んでしまう可能性があります。混同注意:シャキア法が喉頭挙上と食道入口部開大に関わる知識と、鼻咽腔閉鎖不全という別の局所的な問題を混同しやすいです。
- 2. うなずき嚥下(Chin-downまたはChin-tuck)は、食塊の咽頭への早期流入を防ぎ、気道防御を向上させる目的で用いられます。梨状窩の食物残存は、主に咽頭収縮力の低下や輪状咽頭筋の開大不全が原因で、うなずき嚥下は直接的な改善策ではありません。正しくは:梨状窩残存に対しては、頭部回旋嚥下(健側を向く)、複数回嚥下、または嚥下後の咳払いなどが有効な場合があります。選びやすい理由:うなずき嚥下は誤嚥防止のために汎用される代償的嚥下法であるため、嚥下障害全般に対して有効であると誤解されやすいです。混同注意:うなずき嚥下が気道誤嚥の予防に効果的であるという知識と、梨状窩に食物が残るという特定の病態を混同しやすいです。
- 3. 横向き嚥下(Head turn)は、片側性咽頭麻痺がある場合に、麻痺側を向くことで食塊を健側に誘導し、誤嚥や咽頭残留を防ぐ目的で用いられます。喉頭蓋谷の食物残存は、主に舌根部の後方運動低下が原因であり、横向き嚥下は直接的な改善策ではありません。正しくは:喉頭蓋谷残存に対しては、努力嚥下、舌抵抗運動、または頭部前屈位での嚥下などが有効な場合があります。選びやすい理由:横向き嚥下も一般的な代償的嚥下法の一つであり、嚥下時の残留への対処法として漠然と選んでしまう可能性があります。混同注意:横向き嚥下が咽頭の一方へ食塊を流すという知識と、喉頭蓋谷という特定の解剖学的部位での残留を混同しやすいです。
- 4. 正解。メンデルソン手技(Mendelsohn maneuver)は、嚥下時に喉頭の最大挙上位を意識的に維持することで、食道入口部である輪状咽頭筋の開大を延長し、食塊の食道への通過を促進する手技です。したがって、食道入口部開大不全に対するこの組み合わせは適切です。
- 5. 舌骨上筋群の筋力低下は、喉頭挙上力の低下や食道入口部開大不全を引き起こしますが、輪状咽頭筋バルーン拡張法は、輪状咽頭筋の器質的な狭窄や過緊張がある場合に、物理的に拡張することを目的とした侵襲的な治療法です。筋力低下に対しては、筋力増強訓練(例:シャキア法)が適応されます。正しくは:舌骨上筋群の筋力低下に対しては、シャキア法やアイスマッサージ、舌骨上筋群の抵抗運動などが有効です。選びやすい理由:どちらも嚥下に関連する治療法であり、食道入口部の問題に関わるため、知識が曖昧だと関連付けてしまいやすいです。混同注意:舌骨上筋群が食道入口部の開大に関与するという知識と、輪状咽頭筋自体に器質的な問題がある場合の治療法(バルーン拡張)を混同しやすいです。
国試ポイント
嚥下障害における各病態(症状)と、それに対応する訓練法や代償的手技の適切な組み合わせを理解しているかを問う問題です。各手技の目的、作用機序、および適応となる病態を正確に把握している必要があります。
混同注意
各訓練法・手技が解決しようとする具体的な病態や、その作用機序について混同しやすい点が挙げられます。特に、喉頭挙上を促す訓練(シャキア法)と、喉頭挙上を維持する手技(メンデルソン手技)、そして特定の部位の器質的異常に対する介入(バルーン拡張術)の違いなどを混同しがちです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が問われた場合、各嚥下訓練法や代償的手技の「具体的なメカニズム」と「適応となる病態」が一致するかどうかを詳しく検証することが重要です。特に、どの筋群に作用し、どの解剖学的構造の機能を改善するのかを明確に理解しているかを確認しましょう。
関連知識
嚥下5期(先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期)における各障害、主な代償的嚥下法(頭部回旋嚥下、うなずき嚥下、交互嚥下など)の目的と適応、主な嚥下訓練法(シャキア法、メンデルソン手技、Masa手技、努力嚥下、アイスマッサージ、舌運動訓練など)の目的と適応、各嚥下関連筋群(舌骨上筋群、咽頭収縮筋群など)の機能と、その機能不全による病態について理解しておくことが重要です。