末梢神経障害による猿手で使用する装具はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
猿手は正中神経麻痺により母指球筋が機能せず、母指の対立運動ができなくなる状態です。この機能障害を補うためには、母指を対立位に保持し、把持動作を補助する装具が必要となります。短対立装具は、母指を解剖学的に機能的な対立位に固定することで、つまみ動作や把持動作の改善を目的とするため、猿手に対して最も適切な装具です。
選択肢ごとの解説
- 1. コックアップ・スプリントは主に手関節の背屈位保持を目的とし、橈骨神経麻痺などによる下垂手や、屈筋群の痙縮・拘縮予防、腱鞘炎などに用いられます。猿手(正中神経麻痺)の主な問題である母指対立運動障害には直接対応しません。正しくは:猿手には母指対立運動を補助する装具が適切です。選びやすい理由:手部の装具全般として知られているため、選択肢として選びやすいかもしれません。混同注意:橈骨神経麻痺による下垂手や、手関節の安静・固定を目的とした装具と混同しやすいです。
- 2. 正解。猿手は正中神経麻痺により母指球筋が萎縮し、母指の対立運動ができなくなる状態です。短対立装具(ショートサムオポジションスプリント)は、母指を対立位に保持することで、把持能力の改善を図る装具であり、猿手の機能障害に対して最も適しています。
- 3. 虫様筋スプリントは、主に尺骨神経麻痺による鷲手(claw hand)において、MP関節の過伸展を防ぎ、IP関節の屈曲を補助することで、指の変形予防や機能改善を図る装具です。猿手(正中神経麻痺)とは原因となる神経麻痺も症状も異なるため、不適切です。正しくは:猿手には母指対立運動を補助する装具が適切です。選びやすい理由:手部の変形に対する装具として、名称から選びやすいかもしれません。混同注意:尺骨神経麻痺による鷲手(claw hand)の装具と混同しやすいです。
- 4. 手関節駆動式把持装具(Tenodesis Splintなど)は、主に頚髄損傷などで手関節の背屈筋力が残存しているものの、手指の把持力が失われた場合に、手関節の動きを利用して手指を屈曲・伸展させることで把持を補助する装具です。猿手(正中神経麻痺)は母指対立運動障害が主であり、この装具の適応とは異なります。正しくは:猿手には母指対立運動を補助する装具が適切です。選びやすい理由:「把持」という言葉から、手の機能障害全般に役立つように思えるかもしれません。混同注意:主に頚髄損傷など、上肢に広範な運動麻痺がある場合の装具と混同しやすいです。
- 5. BFO(Balanced Forearm Orthosis)は、バランサーとも呼ばれ、主に三角筋や上腕二頭筋の麻痺により上肢を挙上できない場合に、重力の影響を軽減して腕の運動を補助する装具です。猿手(正中神経麻痺)のような手部の局所的な機能障害には直接対応しません。正しくは:猿手には母指対立運動を補助する装具が適切です。選びやすい理由:装具の名称として耳慣れないため、選びにくいかもしれませんが、選択肢の一つとして検討される可能性があります。混同注意:上肢全体の機能障害、特に近位部の筋力低下に対する装具と混同しやすいです。
国試ポイント
末梢神経麻痺の種類とそれに伴う特徴的な変形や機能障害、そしてそれぞれに対応する装具の組み合わせについて知識が問われています。特に、主要な神経麻痺(橈骨神経、正中神経、尺骨神経)とそれに対応する装具は頻出です。
混同注意
コックアップ・スプリント(橈骨神経麻痺)、虫様筋スプリント(尺骨神経麻痺)など、他の主要な末梢神経麻痺に対する装具と混同しやすいです。それぞれの神経麻痺による症状と装具の目的を正確に理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、各神経麻痺による特徴的な症状(手の変形や特定の運動麻痺)と、その症状を補うための装具の機能・目的を正確に結びつけられるかを確認してください。特に、装具の名称と適応、そして「なぜその装具が適応なのか」という理由まで理解しているかが重要です。
関連知識
橈骨神経麻痺(下垂手、コックアップ・スプリント)、尺骨神経麻痺(鷲手、虫様筋スプリント)、正中神経麻痺(猿手、短対立装具)の知識は必須です。また、これら以外の装具の適応(例:BFOは上肢近位筋力低下、手関節駆動式把持装具は頚髄損傷など)も理解しておくと良いでしょう。