「歯を磨くまねをしてください」という口頭命令ではうまくできないが、自発的には歯磨きができる状態はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
観念運動失行は、動作の概念自体は理解しているものの、他者からの口頭指示や模倣による動作の実行が困難になる状態です。しかし、習慣化された自発的な状況下では、問題なく動作を実行できます。これは、大脳皮質から運動野に至る経路の障害により、随意運動のプログラムが実行できないためと考えられます。問題文の「『歯を磨くまねをしてください』という口頭命令ではうまくできないが、自発的には歯磨きができる」という記述は、この観念運動失行の典型的な特徴を示しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 観念失行は、動作の概念そのものが失われているため、自発的な行動も他からの指示による行動も両方とも困難になる状態を指します。問題文では自発的な歯磨きはできるとあるので、これには該当しません。正しくは:観念失行は、動作の計画を立てたり、道具を適切に使って順序立てて行動したりする能力の障害です。そのため、自発的な行動も模倣も困難となります。選びやすい理由:「観念」という言葉から、動作のアイデアや計画に関連する失行だと連想しやすいため、選択肢として魅力的かもしれません。混同注意:観念運動失行と混同しやすいですが、観念失行はより重度で、動作の概念そのものに障害があります。
- 2. 拮抗失行は、左右の手足が互いに相反する目的で動いてしまう状態を指し、脳梁損傷によって生じやすいです。問題文のような指示理解と自発行動の乖離とは関係ありません。正しくは:拮抗失行は、支配されていない手(特に左手)が意図に反して他動的に動いたり、自律的に操作を妨害したりする現象です。選びやすい理由:「拮抗」という言葉から、何かの対立や不一致を連想し、問題文の指示と自発行動の不一致と結びつけやすいかもしれません。混同注意:他の失行とは全く異なるメカニズムと症状を示すため、症状を理解していれば混同は少ないです。
- 3. 構成失行は、視空間認知の障害によって、図形を模倣したり、積み木を構成したりする能力が障害される状態です。身体を使った動作の指示理解や実行の障害とは異なります。正しくは:構成失行は、要素を組み合わせて全体を構成する能力(例:絵を描く、積み木で形を作る)が損なわれる失行です。選びやすい理由:「構成」という言葉から、動作を組み立てるという意味合いを連想し、観念失行などと混同する可能性があります。混同注意:観念失行や観念運動失行が動作のプランニングや実行に関する失行であるのに対し、構成失行は視空間認知・視覚構成能力に特化した失行である点で区別されます。
- 4. 正解。観念運動失行は、口頭指示や模倣による運動は実行できない(運動の神経経路に障害がある)にもかかわらず、その動作の概念は理解しており、自発的な状況下では問題なく実行できる状態を指します。問題文の記述(「歯を磨くまねをしてください」という口頭命令ではうまくできないが、自発的には歯磨きができる)と完全に一致します。選びやすい理由:失行の種類と症状の組み合わせを正確に覚えていないと、観念失行など他の失行と混同しやすい可能性があります。混同注意:観念失行(より重度で、動作の概念そのものが失われる)と混同しやすいです。
- 5. 肢節運動失行は、特定の身体部位(特に手指)の精密な運動が困難になる状態です。道具を使わない模倣動作の困難さが特徴ですが、自発的な動作も困難になります。問題文の「自発的には歯磨きができる」という点と矛盾します。正しくは:肢節運動失行は、特定の四肢末端の精密な運動(例:ボタンをかける、字を書く)が困難になる失行で、自発・模倣どちらの状況でも障害されます。錐体外路系障害による運動障害と異なり、筋力低下や共同運動が保たれていても発生します。選びやすい理由:「運動」という言葉や、「特定の部位の精密な運動」という点が、問題文の動作に関連するように思えるかもしれません。混同注意:観念運動失行と混同しやすいですが、肢節運動失行は自発的な動作も困難である点で区別されます。また、軽度の麻痺や失調と区別するのが難しい場合もあります。
国試ポイント
失行の種類とそれぞれの特徴的な症状、特に「指示された動作と自発的動作の乖離」があるかないかを正確に理解しているかが問われる。観念失行と観念運動失行の違いは頻出論点である。
混同注意
観念失行と観念運動失行。観念失行は、動作の概念そのものが失われているため、自発的な行動も模倣も困難になる。観念運動失行は、動作の概念は理解しているが、指示や模倣による随意的な運動が困難になるが、自発的な運動は可能である。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、まず「自発的な動作が可能か不可能か」と「模倣/口頭指示による動作が可能か不可能か」の組み合わせで失行の種類を判別する。特に、これら両方が困難な場合は観念失行、自発的は可能だが指示・模倣は困難な場合は観念運動失行と判断する。
関連知識
失行は、麻痺や小脳失調、感覚障害、理解力低下などでは説明できない、高次脳機能障害に起因する随意運動の障害である。各失行の責任病巣(例:観念運動失行は左半球頭頂連合野、脳梁など)も合わせて学習すると理解が深まる。また、道具の誤用(例:歯ブラシで髪をとかす)が見られる場合は、観念失行を疑うヒントになる。