腕神経叢損傷の病態で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
完全型腕神経叢損傷とは、腕神経叢を構成する全ての神経根(C5-T1)が損傷を受ける状態を指します。そのため、これら神経根が支配する上肢全体の運動機能(肩、肘、手、指)と感覚機能が失われることになります。この記述は、その病態を正確に表現しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 腕神経叢損傷は末梢神経損傷であるため、深部腱反射は低下または消失します。亢進することはありません。正しくは:深部腱反射は低下または消失することが多い。選びやすい理由:中枢神経系損傷と混同すると、反射亢進を選んでしまう可能性があります。混同注意:中枢神経系の損傷による痙性麻痺や上位運動ニューロン障害と混同しやすいです。
- 2. 腕神経叢損傷の程度や種類(神経引き抜き損傷など)によっては、自然回復が期待できない、または極めて困難な場合があります。特に神経断裂や引き抜き損傷は手術が必要となることが多いです。正しくは:損傷の程度や種類によっては、自然回復が期待できない場合もある。選びやすい理由:軽度の損傷では自然回復があるため、そのイメージから全ての症例に適用できると誤解しやすいです。混同注意:神経圧迫などの軽症例と、神経断裂や引き抜き損傷などの重症例の予後を混同しやすいです。
- 3. 肘の屈曲は主に筋皮神経(C5-C7)によって支配され、これは上位または中部腕神経叢の機能です。下位腕神経叢(C8-T1)損傷では、主に手内在筋の麻痺や手指の運動障害が起こります。正しくは:下位腕神経叢損傷では、主に手内在筋の麻痺や手指の運動障害がみられる。選びやすい理由:腕神経叢全体の損傷のイメージから、あらゆる運動が障害されると考えがちですが、部位によって支配筋が異なります。混同注意:上位腕神経叢損傷(エルブ麻痺)と下位腕神経叢損傷(クランプケ麻痺)の症状を混同しやすいです。
- 4. 手指の巧緻運動は主に手内在筋によって行われ、これらの筋肉は下位腕神経叢(C8-T1)によって支配されます。上位腕神経叢(C5-C6)損傷では、主に肩や肘の運動障害(肩関節の外転・外旋、肘関節の屈曲)が特徴です。正しくは:上位腕神経叢損傷では、主に肩や肘の運動障害がみられる。選びやすい理由:腕全体が影響を受けるというイメージから、手指の動きも障害されると考えやすいです。混同注意:上位腕神経叢損傷と下位腕神経叢損傷の症状を混同しやすいです。
- 5. 正解。完全型腕神経叢損傷は、上位から下位までの全ての神経根(C5-T1)が損傷されるため、その支配領域である肩関節から指先に至るまでの全ての運動・感覚機能が障害されます。これは病態として適切です。選びやすい理由:特にありません。完全型は全域の障害を意味するため、理解しやすい選択肢です。混同注意:部分損傷(上位型、下位型)と完全型を区別できていないと、この広範囲な障害を誤りだと判断する可能性があります。
国試ポイント
腕神経叢損傷の種類(上位型、下位型、完全型)ごとの特徴的な症状(運動麻痺の分布、感覚障害の分布、反射の変化)を正確に理解しているかが問われます。特に、どの神経根がどの部位の機能に関与しているか、末梢神経損傷の特徴(反射低下など)を区別できるかが重要です。
混同注意
上位腕神経叢損傷(エルブ麻痺)と下位腕神経叢損傷(クランプケ麻痺)の症状を混同しやすい。また、中枢神経系損傷と末梢神経損傷による反射や筋緊張の変化を混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同じ論点が出た場合、腕神経叢の部分損傷(上位型、下位型)について、その具体的な症状(例:エルブ麻痺の姿勢、クランプケ麻痺の手)や、各神経根(C5-T1)が関与する主要な機能について問われる可能性が高いです。また、損傷の機序や診断方法、治療選択肢についても問われるかもしれません。
関連知識
腕神経叢の解剖学的知識(神経根の構成と支配領域)、各神経根(C5-T1)が支配する主な筋肉と関節運動、末梢神経損傷と中枢神経損傷における神経学的所見の違い(深部腱反射、筋緊張など)。