12歳の男児。脳性麻痺痙直型両麻痺。GMFCSレベルⅢで、立位では図のような姿勢を示す。治療方針として優先されるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
GMFCSレベルⅢの脳性麻痺痙直型両麻痺児で立位姿勢に問題がある場合、その多くは体幹の安定性が不十分であることに起因します。体幹の安定性は四肢の協調運動やバランス能力の基盤となるため、体幹筋の同時収縮を促し、体幹のコントロール能力を向上させることが、立位姿勢の改善や全体的な運動機能向上に最も効果的かつ優先すべきアプローチです。
選択肢ごとの解説
- 1. 長下肢装具は膝関節の安定性やアライメント異常が著しい場合に検討されるが、本症例ではまず体幹の安定化を図り、より根源的な問題に対処することが優先される。正しくは:体幹の安定性が不十分で、下肢のアライメント異常が著しい場合には有効な選択肢となり得る。選びやすい理由:下肢の姿勢異常があるため、装具を検討したくなるかもしれない。混同注意:装具は移動能力をサポートする手段だが、体幹安定化という根本的な介入と混同しやすい。
- 2. 正解。GMFCSレベルⅢの痙直型両麻痺児で立位での姿勢不良がある場合、体幹の安定性が不十分であることが多い。体幹筋の同時収縮を促すことで体幹の安定性が向上し、結果として立位姿勢の改善や四肢の運動コントロール向上に繋がるため、優先的な治療方針となる。選びやすい理由:体幹の安定は他の動作の基盤となるため、重要性が理解しやすい。混同注意:他の表面的な症状への対処と混同せず、根本的な問題解決に焦点を当てる必要がある。
- 3. 選択的後根切断術は重度の痙縮に対する外科的治療であり、適応は厳しく、他の保存療法が無効な場合や、痙縮がADLに著しい影響を与える場合に検討される。一般的な立位姿勢の改善を目的とした初期治療としては優先度が低い。正しくは:他の保存療法で痙縮がコントロールできない場合や、変形が進行するリスクが高い場合に検討される。選びやすい理由:痙直型であるため、痙縮に対する根本治療として魅力的に感じるかもしれない。混同注意:外科的治療は最終手段に近い位置づけであり、初期の理学療法介入と混同しやすい。
- 4. 介助量を減らすことは最終的な目標ではあるが、まずは体幹の安定性という基本的な能力を向上させることが先決である。不安定な状態で介助量を減らすと転倒リスクが高まるだけでなく、不適切な代償動作を学習してしまう可能性がある。正しくは:体幹の安定性が向上し、安全な歩行パターンが確立された段階で、自立度向上のために介助量を減らす。選びやすい理由:自立歩行を促すという目標から、介助量を減らすことを早期に目指したくなる。混同注意:最終的な目標と、その目標達成のための基礎的な段階とを混同しやすい。
- 5. 上肢での支持能力向上は、バランスの補助や移乗動作などに寄与するが、立位姿勢そのものの安定化には体幹の安定が最も重要である。上肢の支持は二次的な代償や補助として用いられるものであり、体幹の安定化に優先して取り組むべきではない。正しくは:体幹の安定性が確保された上で、バランス補助や移動能力向上のために上肢機能訓練を行う。選びやすい理由:立位姿勢が不安定なため、上肢で体を支えることを考えたくなるかもしれない。混同注意:体幹の安定が根本的な姿勢制御の基盤であり、上肢による支持は二次的な戦略であるという点を混同しやすい。
国試ポイント
脳性麻痺のリハビリテーションにおいて、特にGMFCSレベルが示された症例に対し、運動発達の基礎となる体幹機能の重要性を理解しているか、また根本的な問題に対する優先的な介入を選択できるかを問う問題。発達段階に応じた介入の優先順位が問われる。
混同注意
表面的な症状に対する対症療法(装具や介助量軽減)や、重度な症状に対する外科的治療(SDR)と、運動機能の基盤となる体幹機能訓練との優先順位を混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず症例の診断名(特にタイプや重症度)、年齢、示されている具体的な症状(特に姿勢や動作の質)から、その発達段階や機能レベルにおける『最も根本的な問題』は何かを見極める。その上で、その根本問題に対する最も効果的かつ優先度の高い介入を選択する。特に体幹機能の重要性は繰り返し問われるポイント。
関連知識
GMFCS(Gross Motor Function Classification System)の各レベルの特徴、脳性麻痺の痙縮に対する治療法(保存療法、薬物療法、外科療法)、運動発達における体幹の安定性の重要性、姿勢制御の神経生理学的メカニズム。