78歳の男性。慢性閉塞性肺疾患の急性増悪により人工呼吸器管理中である。意識レベルJCS〈Japan Coma Scale〉Ⅱ-20、体温37.5℃、呼吸数は26回/分、努力性呼吸を認める。二次的合併症の予防目的で行う理学療法で適切でないのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
徒手的抵抗運動は筋力増強を目的とした運動療法であり、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪中で人工呼吸器管理中、かつ努力性呼吸を認める不安定な状態の患者には、呼吸仕事量を増加させ、全身状態を悪化させるリスクがあるため不適切です。急性期には、呼吸管理や二次的合併症(拘縮、肺炎など)の予防を優先し、高負荷の運動は避けるべきです。
選択肢ごとの解説
- 1. 呼吸介助は、患者の努力性呼吸を軽減し、呼吸効率を高めるために重要な理学療法介入です。特にCOPDの急性増悪時には有効であり、適切です。正しくは:呼吸介助は適切。選びやすい理由:呼吸介助は呼吸状態が不安定な患者にとって重要な介入であるため、適切であると判断しやすい。混同注意:呼吸介助と、逆に呼吸を妨げるような介入を混同することはないが、患者の状態に応じた適切な手技の選択が重要。
- 2. COPD患者では痰の喀出が困難になることが多く、体位排痰法は気道クリアランスを促進し、肺炎などの二次的合併症を予防するために非常に有効な理学療法介入です。適切な介入です。正しくは:体位排痰法は適切。選びやすい理由:痰が貯留しやすいCOPD患者にとって、体位排痰法は必須の介入であるため、適切であると判断しやすい。混同注意:体位排痰法と、禁忌となる体位(例えば、頭部挙上による低血圧リスクなど)を混同しないように注意が必要だが、基本的には適切。
- 3. ベッドアップ(半座位など)は、横隔膜の下降を助け、肺容量を確保しやすくなるため、努力性呼吸を軽減し、呼吸を楽にする効果があります。また、誤嚥性肺炎の予防にもつながるため、適切な介入です。正しくは:ベッドアップは適切。選びやすい理由:呼吸困難の患者にはベッドアップが有効であるため、適切であると判断しやすい。混同注意:過度なベッドアップは循環動態に影響を与える可能性もあるが、呼吸困難の軽減には一般的に有効な体位である。
- 4. 長期人工呼吸器管理中の患者では、臥床による関節拘縮や筋力低下が進行しやすいため、二次的合併症である関節拘縮の予防目的で関節可動域運動を行うことは非常に重要であり、適切です。正しくは:関節可動域運動は適切。選びやすい理由:患者の全身状態が不安定であるため、運動療法に不安を感じるかもしれないが、関節可動域運動は臥床による合併症予防のために重要であるため、適切であると判断しやすい。混同注意:活動量が多い運動療法と混同しやすいかもしれないが、関節可動域運動は最小限の負荷で実施可能であり、禁忌でない限り行うべき。
- 5. 正解。徒手的抵抗運動は筋力増強を目的とした運動療法であり、患者が努力性呼吸を呈している不安定な状態では、呼吸仕事量を増加させ、循環動態に悪影響を及ぼす可能性があります。急性増悪期であり、意識レベルも低下しているため、この時期に行うのは適切ではありません。正しくは:不安定な状態では、筋力増強を目的とした高負荷の運動は避けるべきである。安静を保ち、呼吸器管理を最優先する。選びやすい理由:筋力低下の予防や改善は重要であると考える理学療法士は多いが、患者の現在の呼吸状態や意識レベルを考慮すると、この時期に徒手的抵抗運動を行うのは時期尚早であり、かえって病状を悪化させるリスクがあるため不適切。混同注意:関節可動域運動(ROM exercise)と筋力増強運動(Resistance exercise)を混同しやすい。ROM運動は関節の拘縮予防に低負荷で実施可能だが、抵抗運動は筋力強化のため負荷をかけるため、患者の呼吸状態が悪化するリスクがある。
国試ポイント
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪期における人工呼吸器管理中の患者に対する理学療法の禁忌事項、特に病態を悪化させる可能性のある運動介入について理解しているかどうかが問われています。患者の全身状態(呼吸状態、意識レベルなど)を正確に把握し、適切な理学療法介入を選択する能力が求められます。
混同注意
関節可動域運動と徒手的抵抗運動の違い、およびCOPDの病期(急性増悪期と安定期)に応じた運動療法の選択。急性期には呼吸仕事量増加につながる運動は避けるべきですが、安静による合併症(関節拘縮など)予防のための低負荷の運動は必要となる場合があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、患者の疾患(特に急性期かどうか)、現在の全身状態(呼吸数、SpO2、意識レベル、体温、循環動態など)、および理学療法の目的を総合的に評価し、その介入が患者にどのような影響(呼吸仕事量増加、循環負荷、疼痛、合併症予防など)を与えるかを判断する視点が重要です。特に、急性期の患者に対する運動療法の負荷設定については慎重な判断が求められます。
関連知識
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態生理、人工呼吸器管理の基本、JCS(Japan Coma Scale)の評価、理学療法の適応と禁忌、二次的合併症(肺炎、関節拘縮、筋力低下など)の予防策。