Ⅱ型呼吸不全では正常で、Ⅰ型呼吸不全で増加するのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
Ⅰ型呼吸不全は、肺胞から血液への酸素移動の障害が主な原因であり、その結果として肺胞気と動脈血の酸素分圧に大きな差が生じるため、肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)が増加します。一方、Ⅱ型呼吸不全は、肺胞低換気が主な原因である場合、肺胞自体の酸素分圧が低下するため、肺胞と動脈血の酸素分圧の差(A-aDO2)は正常範囲に保たれることがあります。したがって、この設問の条件を満たすのは肺胞気-動脈血酸素分圧較差です。
選択肢ごとの解説
- 1. 1秒率は気道閉塞の指標であり、COPDなどの閉塞性換気障害が原因でⅡ型呼吸不全となる場合や、他の肺疾患で低下することがあります。したがって「Ⅱ型呼吸不全で正常」という条件に合致しません。また、Ⅰ型呼吸不全で特異的に増加する指標でもありません。正しくは:呼吸不全の原因疾患によっては低下することがあり、常に正常ではありません。また、Ⅰ型呼吸不全で増加する指標ではありません。選びやすい理由:呼吸機能検査の基本的な項目であるため、呼吸不全と関連付けて考えやすいかもしれませんが、設問の条件には適合しません。混同注意:肺活量などの他の肺機能検査項目や、換気障害の種類と混同しやすいです。
- 2. 肺活量は拘束性換気障害の指標であり、Ⅰ型呼吸不全の原因となる間質性肺炎やARDS、Ⅱ型呼吸不全の原因となる神経筋疾患や胸郭疾患など、多くの呼吸不全の原因疾患で低下することがあります。したがって、「Ⅱ型呼吸不全で正常」という条件に合致しません。また、Ⅰ型呼吸不全で増加することもありません。正しくは:呼吸不全の原因となる疾患により低下することがあり、常に正常ではありません。また、Ⅰ型呼吸不全で増加する指標ではありません。選びやすい理由:呼吸機能の基本的な指標であるため、呼吸不全と関連付けやすいですが、設問の条件に適合しません。混同注意:1秒率や他の肺容量(全肺気量、機能的残気量など)と混同しやすいです。
- 3. Ⅰ型呼吸不全は動脈血酸素分圧(PaO2)の低下を主徴とするため、設問の「Ⅰ型呼吸不全で増加する」という条件に反します。Ⅱ型呼吸不全もPaO2は低下します(高炭酸ガス血症を伴う低酸素血症)ので、「Ⅱ型呼吸不全で正常」という条件にも合致しません。正しくは:Ⅰ型呼吸不全およびⅡ型呼吸不全ともに、PaO2は低下するのが特徴です。選びやすい理由:呼吸不全の最も直接的な指標であるため、深く考えずに選んでしまう可能性があります。しかし、「増加する」という条件を注意深く読む必要があります。混同注意:動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)と混同したり、呼吸不全の定義におけるPaO2の低下を見落としたりすることがあります。
- 4. Ⅱ型呼吸不全は、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が異常に上昇することを定義とするため、設問の「Ⅱ型呼吸不全で正常」という条件に合致しません。Ⅰ型呼吸不全では、しばしば過換気によりPaCO2は正常〜低下することがありますが、増加することはまれです。正しくは:Ⅱ型呼吸不全ではPaCO2が上昇します。Ⅰ型呼吸不全では正常または低下することが多いです。選びやすい理由:Ⅱ型呼吸不全の主要な指標であるため、注意不足で選択してしまう可能性があります。しかし、「Ⅱ型呼吸不全で正常」という条件を満たしません。混同注意:動脈血酸素分圧(PaO2)と混同したり、Ⅰ型とⅡ型呼吸不全の定義におけるPaCO2の変動を混同したりすることがあります。
- 5. 正解。肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)は、肺胞から動脈血への酸素移動効率を示す指標です。Ⅰ型呼吸不全は、換気血流不均等、シャント、拡散障害など、酸素移動の障害によって生じるため、A-aDO2は増加します。一方、純粋なⅡ型呼吸不全(肺胞低換気のみが原因)では、肺胞自体の酸素分圧が低いため、肺胞と動脈血の酸素分圧の差は正常範囲に保たれます。したがって、「Ⅱ型呼吸不全では正常で、Ⅰ型呼吸不全で増加する」という条件に合致します。選びやすい理由:A-aDO2は他の選択肢に比べて複雑な概念であるため、知識が曖昧だと選びにくいかもしれません。しかし、呼吸不全の病態生理を正確に理解していれば正答に導かれるでしょう。混同注意:呼吸不全の分類や、PaO2やPaCO2といったより直接的なガス交換の指標と混同しやすいですが、これらとの区別が重要です。
国試ポイント
呼吸不全のⅠ型とⅡ型の分類とその病態生理学的特徴、特に血液ガス分析の指標や肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)がそれぞれの病型でどのように変動するかを正確に理解しているかが問われています。A-aDO2の臨床的意義は重要なポイントです。
混同注意
Ⅰ型呼吸不全とⅡ型呼吸不全の定義、主な原因疾患、およびそれに伴うPaO2とPaCO2の変動パターン、そしてA-aDO2の役割を混同しやすいです。また、呼吸機能検査の他の項目(1秒率、肺活量など)と呼吸不全病態との関連性も誤解しやすい点です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、受験者は以下の点を評価できる必要があります。1. Ⅰ型・Ⅱ型呼吸不全の定義と主な原因疾患。2. 各呼吸不全でPaO2とPaCO2がどのように変動するか。3. A-aDO2が何を意味し、どのような病態で変動するか、特にⅠ型とⅡ型呼吸不全での違い。4. 各肺機能検査項目が呼吸不全の病態にどのように関与するか。
関連知識
Ⅰ型呼吸不全(低酸素血症のみ)の原因疾患にはARDS、間質性肺炎、肺水腫、重症肺炎、肺塞栓症などがあり、これらの病態ではA-aDO2は増加します。Ⅱ型呼吸不全(低酸素血症+高炭酸ガス血症)の原因疾患にはCOPD急性増悪、神経筋疾患、胸郭疾患、中枢性呼吸抑制などがあり、純粋な肺胞低換気が原因であればA-aDO2は正常に保たれます。A-aDO2は(年齢/4)+4程度の正常値があり、肺胞気酸素分圧PAO2 = PBO2 - PaCO2/R - PH2O (PBO2:大気圧酸素分圧、R:呼吸商、PH2O:水蒸気圧)で計算されます。