無意識のなかに抑え込まれた欲動が精神症状として現れると想定し、その葛藤を明らかにすることによって症状の改善を目指すのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
設問の「無意識のなかに抑え込まれた欲動が精神症状として現れると想定し、その葛藤を明らかにすることによって症状の改善を目指す」という記述は、精神分析療法の核心的な理論と治療技法を正確に表しています。精神分析療法は、S.フロイトによって創始され、自由連想、夢分析、抵抗、転移といった概念を用いて、無意識の領域に抑圧された内容を意識化し、洞察を得ることを通じて精神症状の改善を図ります。
選択肢ごとの解説
- 1. 支持的精神療法は、患者の自尊心や適応能力を高めることを目的とし、意識的なレベルでの心理的サポートを提供します。無意識下の葛藤の分析を主眼とはしません。正しくは:支持的精神療法は、患者の悩みを受け止め、共感し、現実的な問題解決をサポートすることで、精神的な安定を図る治療法です。選びやすい理由:精神療法という点で選択肢として考えやすいですが、具体的なアプローチが異なります。混同注意:精神分析療法と異なり、防衛機制を指摘したり、内的な葛藤を深く掘り下げたりすることは基本的に行いません。
- 2. 正解。精神分析療法は、フロイトによって創始された治療法で、無意識下に抑圧された過去の経験や欲動が現在の精神症状を引き起こすと考えます。自由連想や夢分析などを通じて無意識の葛藤を意識化し、洞察を深めることで症状の改善を目指します。設問の記述と完全に合致します。選びやすい理由:設問の概念(無意識、欲動、葛藤の明確化)に最も直接的に対応しているため、選択しやすいです。混同注意:他の精神療法と異なり、無意識の深層心理へのアプローチを最も重視する点が特徴です。
- 3. 認知行動療法は、不適切な思考パターン(認知)や行動が精神症状を引き起こすと考え、それらを修正することで症状の改善を目指します。無意識の欲動や葛藤を直接扱うものではありません。正しくは:認知行動療法は、自動思考や認知の歪みを認識し、より現実的で適応的な思考や行動パターンを身につけることで精神症状の改善を目指します。選びやすい理由:現代の精神療法として広く知られており、効果も高いため選択肢として目につきやすいです。混同注意:無意識を扱わず、意識的な思考や行動に焦点を当てる点で精神分析療法とは対照的です。
- 4. 森田療法は、不安や恐怖をなくそうとする「とらわれ」を問題とし、あるがままを受け入れ、症状に囚われずに建設的な行動を促す治療法です。無意識の欲動や葛藤を分析するものではありません。正しくは:森田療法は、症状を排除しようとする態度から脱却し、不安をそのままに受け入れつつ、目的本位の行動を実践することで、建設的な生活への転換を目指します。選びやすい理由:日本で開発された独自の精神療法であり、特定の症状(不安神経症など)に有効とされるため、知識として持っていると選んでしまう可能性があります。混同注意:無意識を掘り下げるのではなく、現在の『とらわれ』からの解放と行動の変容に焦点を当てる点で精神分析療法とは異なります。
- 5. 来談者中心療法は、クライアントが本来持っている自己成長力に焦点を当て、セラピストが無条件の肯定的配慮、共感、純粋性をもって接することで、クライアント自身が解決策を見出すことを支援します。無意識の欲動や葛藤を解明することを目的とはしません。正しくは:来談者中心療法は、クライアント自身の自己成長力を信じ、セラピストが受容的・共感的な態度で接することで、クライアントが自ら問題を解決し、自己実現できるよう支援します。選びやすい理由:心理療法として広く知られており、人間中心的なアプローチであるため、一般的な選択肢として検討されることがあります。混同注意:無意識の分析ではなく、クライアントの自己成長力と現在の経験に焦点を当てる点で精神分析療法とは異なります。
国試ポイント
精神分析療法に関する問題は、その理論的基盤(無意識、欲動、葛藤、抑圧など)と主要な治療技法(自由連想、夢分析など)が他の精神療法とどのように異なるかという点で頻繁に出題されます。特に「無意識」「欲動」「葛藤の明確化」といったキーワードは精神分析療法に特有のものです。他の精神療法の基本概念との区別を明確に理解しているかが問われます。
混同注意
精神療法全般が選択肢として挙げられるため、それぞれの療法がどのような理論的背景を持ち、どのようなアプローチをとるのかを正確に理解していないと混同しやすいです。特に、支持的精神療法や来談者中心療法のような『クライアント中心』のアプローチと、精神分析療法のような『無意識の深掘り』のアプローチは明確に区別する必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、精神療法の種類とそれぞれの基本的な理論的枠組み、対象とする問題、主要な治療技法が問われる可能性が高いです。特に、それぞれの療法が「何を問題とみなし(病理観)」「何を目標とし」「どのような手段を用いるのか」という点を比較して理解することが重要になります。また、特定の疾患に対する適用や、それぞれの療法の限界についても問われることがあります。
関連知識
精神分析療法の概念:無意識、前意識、意識、自我、超自我、イド、防衛機制、転移、逆転移、抵抗、自由連想、夢分析。フロイト以降の発展:ユングの分析心理学、アドラーの個人心理学、対象関係論、自己心理学など。また、他の主要な精神療法(認知行動療法、来談者中心療法、森田療法、家族療法、集団療法など)の理論と実践についても理解しておく必要があります。