68歳の男性。2型糖尿病、脂質異常症。身長160 cm、体重85.0 kg、体脂肪率38 %。血液検査は、HbA1c 8.2 %、空腹時血糖145 mg/dL。仕事は管理職、デスクワーク中心で一日の歩数は3,550歩(同年代歩数7,157歩)。筋力低下、感覚障害、関節可動域制限は認めない。運動療法で誤っているのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
糖尿病患者に対する運動療法において、有酸素運動の推奨時間は、治療効果を考慮すると1回20分以上、週合計で150分以上が基本です。選択肢4の「1回10分、週に合計40分程度」は、推奨される運動量と比較して明らかに不足しており、治療効果を期待するには不十分です。そのため、この指導は不適切であると判断されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 食後(特に食後1〜2時間後)に運動を行うことは、食後の急激な血糖値上昇を抑え、インスリン感受性を改善する上で効果的であるため、適切な指導です。正しくは:この選択肢は正しい内容であり、不適切ではありません。選びやすい理由:一見すると、「食後すぐに運動は良くない」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、糖尿病治療においては食後運動が推奨されます。混同注意:「食後すぐの激しい運動は消化に悪い」という一般論と混同しやすいですが、糖尿病における運動療法では食後高血糖の抑制が重視されます。
- 2. 糖尿病患者に対する筋力トレーニングは、血糖コントロールの改善、筋量増加、基礎代謝向上に有効であり、一般的に週2〜3回の頻度が推奨されています。これは適切な指導です。正しくは:この選択肢は正しい内容であり、不適切ではありません。選びやすい理由:有酸素運動が主流と思われがちですが、筋力トレーニングも糖尿病治療において重要であるという知識がないと、疑問に思うかもしれません。混同注意:有酸素運動の推奨頻度(毎日、または週3〜5回以上)と混同しやすいですが、筋力トレーニングは筋肉の回復期間が必要なため、週2〜3回が適切とされます。
- 3. この患者はデスクワーク中心で1日の歩数が少ないため、身体活動量の増加は糖尿病、脂質異常症、肥満の改善に非常に重要です。階段利用や一駅歩くなどの生活指導は、適切な介入です。正しくは:この選択肢は正しい内容であり、不適切ではありません。選びやすい理由:「運動療法」と聞くと、計画的な運動ばかりを想像し、日常生活での活動量増加を見過ごすかもしれません。混同注意:計画的な運動プログラムと、生活習慣の中での身体活動量の増加という概念を区別できていないと、どちらも重要と認識できない可能性があります。
- 4. 正解。糖尿病患者に対する有酸素運動の推奨は、通常、1回20分以上、週に合計150分以上(可能であれば250分以上)です。1回10分、週合計40分では、十分な運動量とは言えません。特にこの患者は肥満度が高く、糖尿病と脂質異常症も抱えているため、より積極的な運動療法が必要です。正しくは:有酸素運動は1回20分以上、週に合計150分以上行う。選びやすい理由:高齢者や運動習慣のない人には、運動時間が短い方が取り組みやすいと感じるかもしれませんが、治療効果を考えると推奨される運動量には達していません。混同注意:運動習慣がない人や高齢者に対する運動導入期の目安(例えば「まずは10分から」)と、治療効果を期待する際の運動量の推奨値とを混同しやすいです。
- 5. 糖尿病患者に対する有酸素運動の推奨強度は、中等度(最大酸素摂取量の50〜70%程度、または最大心拍数の50〜70%程度、自覚的運動強度で「ややきつい」と感じるレベル)が適切とされています。50%程度は、この推奨範囲内であり、適切な指導です。正しくは:この選択肢は正しい内容であり、不適切ではありません。選びやすい理由:運動強度が高すぎると体に負担がかかると考え、より低い強度を推奨すべきかと思うかもしれませんが、適切な治療効果を得るためには中等度の強度が必要です。混同注意:「軽い運動から始める」という考え方と、治療効果を出すための適切な強度を混同しやすいです。また、運動負荷試験の結果や心疾患の合併がない場合に推奨される強度と混同することもあります。
国試ポイント
糖尿病患者に対する運動療法の具体的な内容(運動の種類、頻度、強度、時間)に関する知識が問われています。特に、推奨される運動量の下限値や、生活習慣病に対する介入の原則を理解しているかがポイントです。
混同注意
運動療法の導入期における「短時間から始める」というアプローチと、治療効果を目的とした際の「目標運動量」が混同されやすいです。また、高齢者や心疾患合併患者に対する運動処方と、合併症のない2型糖尿病患者に対する一般的な運動処方を混同する可能性もあります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、糖尿病合併症(例:網膜症、腎症、神経障害)の有無に応じた運動療法の禁忌や注意点、運動療法の相対的禁忌と絶対的禁忌、血糖降下薬と運動の相互作用(低血糖のリスク)などが問われる可能性があります。また、運動時の水分補給やフットケアの重要性なども確認しておくべきです。
関連知識
糖尿病の運動療法ガイドライン(日本糖尿病学会など)に記載されている推奨事項。運動処方のFITT原則(頻度、強度、時間、種類)。肥満に対する運動療法の考え方。メタボリックシンドロームに対する運動療法。運動によるインスリン感受性改善のメカニズム。