気管切開患者に対する痰の吸引で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・4番
解説
気管切開患者への気管内吸引は、感染リスクが高く、気道粘膜を傷つける可能性のある侵襲的処置です。そのため、手技全体での無菌操作の徹底(選択肢2)は必須です。また、吸引カテーテルを深部に挿入しすぎると、気管分岐部(カリナ)を刺激し、強い咳、気管支攣縮、迷走神経反射による徐脈、粘膜損傷などを引き起こすため、気管分岐部に触れない深さに留める(選択肢4)ことが重要です。ファインクラックルは肺胞レベルの異常音であり吸引の直接的適応とはならず(選択肢1)、成人吸引圧は通常100-150mmHgであり80mmHgでは不十分(選択肢3)、カテーテルのピストン運動は粘膜損傷のリスクを高めるため不適切(選択肢5)です。
選択肢ごとの解説
- 1. ファインクラックルは主に末梢気道や肺胞の異常を示唆する音であり、気道内の分泌物貯留を直接的に示す所見ではないため、吸引の主な適応とはなりません。分泌物の吸引が必要なのは、コースクラックルやロンカスなどの音を聴取した場合です。正しくは:肺雑音としてコースクラックル(粗い水泡音)やロンカス(いびき音)が聴取されたため、吸引を実施する。選びやすい理由:異常呼吸音があれば、何でも吸引で解決できると誤解しやすいです。混同注意:気道内の分泌物貯留を示す呼吸音(コースクラックル、ロンカス)と、肺胞の異常を示す音(ファインクラックル)を混同している可能性があります。
- 2. 正解。気管切開患者への吸引は、直接気道内にカテーテルを挿入する侵襲的な手技であり、細菌感染を予防するためには厳格な無菌操作が不可欠です。
- 3. 成人患者に対する適切な吸引圧は、一般的に100〜150mmHgの範囲が推奨されており、80mmHgでは効果的な分泌物除去には不十分である場合が多いです。正しくは:成人患者の吸引圧は、おおよそ100〜150mmHgに設定する。選びやすい理由:具体的な数値が出ているため、正解のように見えやすいです。また、低圧設定のため安全なように思われることがあります。混同注意:小児や乳児の吸引圧(通常60〜80mmHg)と成人の吸引圧を混同している可能性があります。
- 4. 正解。気管分岐部への刺激は、激しい咳反射、気管支攣縮、迷走神経反射による徐脈、または気道粘膜の損傷を引き起こすリスクがあるため、カテーテルはそれより手前の深さに留めるべきです。
- 5. カテーテルを繰り返し往復運動させることは、気道粘膜に過度な摩擦や損傷を与えるリスクを高め、吸引効率も向上させません。適切な手技は、カテーテルを引き抜きながら回転させることです。正しくは:吸引カテーテルを気道内で回転させながらゆっくりと引き抜く。選びやすい理由:効率よく分泌物を除去できるように見えるため、適切な操作だと誤解しやすいです。混同注意:カテーテルを回転させながら引き抜く操作と、往復運動を混同している可能性があります。
国試ポイント
気管内吸引における安全かつ効果的な手技に関する知識が問われています。特に、感染予防のための無菌操作、気道粘膜保護のためのカテーテル挿入深度、適切な吸引圧、そして各呼吸音の臨床的意義について正確な理解が求められます。
混同注意
呼吸音の種類とその意味(ファインクラックルとコースクラックル/ロンカス)、成人と小児の吸引圧の推奨値、吸引カテーテルの適切な操作方法(回転しながら引き抜くこととピストン運動)。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出題された場合、気管内吸引の合併症、吸引前後の患者評価、気管切開孔の管理、または特定の疾患(例:COPD、神経筋疾患)における吸引の留意点などが問われる可能性があります。
関連知識
気管内吸引の目的と適応、禁忌、合併症、吸引圧の設定、カテーテルの選択、吸引時間、手技中のモニタリング、気管内吸引における無菌操作の重要性、各種呼吸音の聴取と臨床的意義。