慢性腰痛に対する認知行動療法でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
認知行動療法は、慢性疼痛患者の痛みのとらえ方(認知)とそれに基づく行動を変容させることを目的とします。痛みの有無を頻繁に尋ねる行為は、患者の注意を痛みに集中させ、痛みの破局的思考( catastrophizing)を増強させる可能性があり、認知行動療法の目的とは逆行します。むしろ、痛みから注意をそらし、活動に焦点を当てることが重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。痛みの頻繁な確認は、患者の痛みに意識を集中させ、かえって痛みを増幅させる可能性があります。これは破局的思考を助長し、認知行動療法の目的である痛みのとらえ方の変容とは逆効果になります。正しくは:患者自身が痛みの状態を自己管理できるよう促し、医療者は頻繁な確認は避けるべきです。痛みの訴えを傾聴しつつ、痛みに囚われすぎないように誘導します。選びやすい理由:患者の訴えに寄り添う、丁寧な関わりのように感じられるかもしれませんが、痛みを頻繁に尋ねることは患者の痛みに固着する認知を強化する恐れがあります。混同注意:患者の訴えの傾聴や共感と混同しやすいですが、頻繁な『確認』は痛みに意識を向けさせ、破局的思考を増強させる可能性があります。傾聴は肯定的な関わりですが、確認は目的によっては逆効果となります。
- 2. これは、患者の認知(腰痛への不安)を変容させ、行動(腰痛によって活動を避ける)を促す認知行動療法のアプローチの一つです。不安の解消は痛みの感じ方にも影響します。選びやすい理由:正答肢ではないため、この選択肢が適切でないと誤認する可能性があります。混同注意:心理的なアプローチが認知行動療法に該当しないと誤解されることがありますが、不安の軽減は重要な要素です。
- 3. これは、患者の誤った認知(腰を反らすと痛むという恐怖回避行動)に挑戦し、安全であることを行動的に学習させる曝露療法の一種であり、認知行動療法に含まれる有効な介入です。恐怖回避行動の克服を促します。選びやすい理由:正答肢ではないため、この選択肢が適切でないと誤認する可能性があります。混同注意:単なる運動療法と誤解されることがありますが、痛みを伴わない成功体験を『繰り返す』ことで、患者の認知(痛いという予測)と行動(回避)を変容させる点が認知行動療法の要素です。
- 4. これは、痛みに囚われて活動を制限している患者の認知(痛みがあるから何もできない)を変容させ、活動レベルの維持・向上を促す認知行動療法の重要な要素です。活動レベルの低下は、身体的・精神的な悪循環を引き起こします。選びやすい理由:正答肢ではないため、この選択肢が適切でないと誤認する可能性があります。混同注意:痛みを無視させることと混同されがちですが、痛みを認めつつも、その中で可能な活動を見つけるという建設的なアプローチです。
- 5. これは、患者の誤った認知(活動すると痛みが悪化するという恐怖)に働きかけ、安全な活動の促進を目的とした認知行動療法における教育的介入です。不安や恐怖が活動制限につながることを防ぎます。選びやすい理由:正答肢ではないため、この選択肢が適切でないと誤認する可能性があります。混同注意:単なる情報提供と見なされることがありますが、痛みの悪化に対する誤った信念を訂正し、活動への恐怖を軽減する点で認知行動療法の要素を含みます。
国試ポイント
慢性腰痛に対する認知行動療法の基本原則を理解しているか、特に痛みの過度なモニタリングが逆効果であることを認識しているかが問われています。恐怖回避行動の克服、誤った認知の修正、活動への焦点付けが重要です。
混同注意
患者への共感や傾聴と、痛みの過度なモニタリングを混同しやすい。患者の訴えを聞くことは重要だが、頻繁に痛みの有無や程度を『確認する』ことは異なる意味合いを持つ。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合は、認知行動療法の具体的な技法(疼痛教育、活動調整、思考記録、リラクセーションなど)や、痛みへの過度な固着を避けるアプローチについて、より詳細な事例問題として出題される可能性があります。特に、患者の行動変容を促すための具体的な指示内容が問われるでしょう。
関連知識
慢性疼痛、痛みに関する破局的思考(catastrophizing)、恐怖回避モデル(fear-avoidance model)、疼痛教育、活動調整(pacing)、曝露療法(exposure therapy)、セルフマネジメント。