52歳の女性。踏み台から転落して左踵骨骨折を受傷し、手術が行われた。術後翌日の単純エックス線写真(別冊No. 3)を別に示す。この患者に対する運動療法で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
踵骨骨折の術後管理では、骨折部位の安静と安定を最優先します。そのため、患部である足関節や踵骨周辺の関節に対する早期からの運動療法や荷重は厳禁です。しかし、非患部関節、特に隣接する膝関節は、活動制限により拘縮しやすい関節であるため、早期から可動域訓練を行うことで、二次的な機能障害の予防に繋がります。術後翌日から膝関節の可動域訓練を開始することは、踵骨の固定性に影響を与えずに行えるため、適切な運動療法と言えます。
選択肢ごとの解説
- 1. 踵骨骨折の術後翌日に、患部の足関節(距腿関節)の可動域訓練を行うと、固定性が損なわれたり、再骨折のリスクが高まったり、疼痛が増強したりする可能性があります。骨癒合が不十分な段階での患部への機械的ストレスは避けるべきです。正しくは:骨癒合が十分に進み、医師の許可が得られてから、段階的に足関節の可動域訓練を開始する。選びやすい理由:早期からの可動域訓練は拘縮予防に重要という一般的な知識から選んでしまうかもしれませんが、骨折の部位や状態、手術方法によっては早期訓練が禁忌となることを考慮する必要があります。混同注意:他の関節(例:膝関節、股関節)の早期可動域訓練と混同しやすい。
- 2. 正解。踵骨骨折の手術後、患部である足部以外の関節、特に膝関節は活動制限によって拘縮しやすいため、術後早期から積極的に可動域訓練を行うことが推奨されます。これにより、長期臥床や免荷による二次的な機能障害を予防します。踵骨の固定性に影響を与えない範囲で行うことが重要です。選びやすい理由:患部を安静にすべきという考えから、他の関節の運動も控えるべきか迷うかもしれない。混同注意:患部関節と非患部関節の運動療法のタイミングや適応を混同しやすい。
- 3. 踵骨骨折の術後、骨癒合には通常数週間から数ヶ月を要します。術後翌日からの部分荷重は、骨折部位に過度な負荷をかけ、骨癒合の遅延や再骨折、インプラントの破損などの合併症のリスクを著しく高めるため禁忌です。通常は医師の指示のもと、骨癒合の状態を確認しながら段階的に荷重を開始します。正しくは:医師の指示とX線所見に基づき、数週〜数ヶ月後に段階的に荷重を開始する。選びやすい理由:早期離床や早期リハビリテーションの重要性から、部分荷重も早く始めるべきだと誤解する可能性がある。混同注意:他の骨折(例:安定型骨折)や、早期荷重が許される特定の状況と混同しやすい。
- 4. 踵骨骨折の術後早期(術後1週目)に、外固定内であっても踵骨-距骨関節(距踵関節)に対する等尺性運動を行うことは、骨折部位に剪断力や圧縮力を及ぼし、骨癒合を阻害したり、固定を不安定にしたりするリスクがあります。特に、関節内骨折である踵骨骨折では、関節面の安定性が重要です。等尺性運動であっても骨折部にストレスがかかるため、早期は避けるべきです。正しくは:骨癒合が確認され、医師の許可が得られてから、段階的に距踵関節の安定性を保ちながら運動を開始する。選びやすい理由:等尺性運動は関節運動を伴わないため、安全だと考えがちですが、骨折部位へのストレスは考慮する必要があります。混同注意:等尺性運動が適応となる他の状態(例:筋力維持目的の単純な筋力低下)と混同しやすい。または、患部周囲のより遠位の関節(MP関節など)の早期運動と混同しやすい。
- 5. この時期と方法の組合せは、本症例の術後運動療法として適切ではありません(公式正答を参照)。正しくは:術後早期から、より遠位の足趾PIP/DIP関節の可動域訓練を検討し、MP関節の訓練は患部の安定性が確保されてから開始する。選びやすい理由:足趾の関節は患部から遠いと錯覚し、早期から安全に行えると誤解する可能性がある。混同注意:患部からより遠位の関節の運動の重要性と、その実施時期について混同しやすい。特にMP関節は足部の中では比較的大きい関節であり、荷重方向の軸上に位置するため、安易な判断は避けるべき。
国試ポイント
骨折の部位や種類に応じた術後早期の運動療法に関する知識が問われています。特に、患部の安静を保ちつつ、合併症予防のために早期から実施すべき運動と、禁忌となる運動の区別が重要です。画像診断(X線写真)から骨折の部位と手術の有無を正確に把握し、それに応じたリハビリテーションの原則を適用できるかが評価されます。
混同注意
患部関節の早期可動域訓練と非患部関節の早期可動域訓練の適応時期。また、等尺性運動と等張性運動の違い、および骨折治癒過程における荷重のタイミング。
次に同じ論点が出たら
同様の骨折(例:脛骨高原骨折、大腿骨頚部骨折など)の術後管理で、患部関節と非患部関節に対する運動療法開始時期の判断。また、骨癒合状況やX線写真の評価から荷重開始時期を判断できるか。
関連知識
骨折治癒の段階(炎症期、修復期、リモデリング期)、ギプス固定や内固定の目的と役割、ROM運動の禁忌事項、荷重制限の種類(免荷、部分荷重、全荷重)。