50歳の男性。左下腿切断。義足歩行練習中に左側の踵接地から立脚中期までに急激な膝屈曲が生じた。考えられる原因はどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・3番
解説
義足歩行における踵接地から立脚中期までの急激な膝屈曲は、主に膝関節の屈曲モーメントが過度に増大するか、伸展を補助する機構が機能不全に陥ることで発生します。選択肢2の「足部後方バンパーが硬すぎる」場合、踵接地時の衝撃吸収が不足し、地面からの反力が急激に膝関節を屈曲させる方向に作用します。選択肢3の「ソケット初期屈曲角が大きすぎる」場合、義足装着時点ですでに膝が深く屈曲しているため、歩行時にさらに膝が屈曲しやすい状態にあります。これら2つは、直接的に急激な膝屈曲を引き起こす主要な原因となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 足部が過度に底屈していると、踵接地時に足底が地面に早く着地しようとし、膝の伸展モーメントが発生しやすくなります。これにより、膝が伸展位に固定されたり、突っ張るような現象(膝折れではなく、膝が伸びすぎる)が生じやすくなります。正しくは:足部の底屈角度が適切であるべきです。足部が過度に底屈すると、膝が過伸展する傾向にあります。選びやすい理由:膝の不安定性と関連する選択肢に見えるかもしれませんが、底屈は膝の伸展を促します。混同注意:膝が急激に屈曲する原因と、膝が過伸展する原因を混同しやすいです。
- 2. 正解。足部の後方バンパーが硬すぎると、踵接地時にバンパーが十分にたわまず、地面からの衝撃が急激に膝に伝わります。これにより、膝を屈曲させるモーメントが急激に増大し、踵接地から立脚中期にかけて急激な膝屈曲を引き起こします。衝撃吸収が不十分なため、膝が折れるような感覚になります。選びやすい理由:義足の調整不良として直接的な原因として理解しやすいです。
- 3. 正解。ソケットの初期屈曲角度が大きすぎるということは、ソケットが患者の膝を必要以上に屈曲させた状態で装着されていることを意味します。この状態で歩行すると、常に膝が屈曲位にあるため、踵接地から立脚中期にかけて体重がかかった際に、さらに膝が深く屈曲してしまう傾向が強まります。選びやすい理由:ソケットの初期設定の不備は、歩行時の問題に直結しやすいと直感的に理解できます。
- 4. ソケットが足部に対して後方に配置されすぎていると、膝関節の重心線が足部支持基底面の後方に位置しやすくなります。これにより、踵接地時に膝が過伸展する傾向が強まります(膝が突っ張る)。急激な膝屈曲とは逆の現象が起こりやすくなります。正しくは:ソケットは足部に対して適切な位置に配置されるべきです。後方配置は膝の過伸展を招きます。選びやすい理由:アライメント不良全般が膝の問題を引き起こすという漠然とした知識から選んでしまう可能性があります。混同注意:膝の屈曲問題と伸展問題を混同しやすいです。重心線の位置と膝のモーメントの関係を正確に理解する必要があります。
- 5. ソケットの初期内転角度が不足していると、ソケットが外転位になり、義足側への体重支持が不安定になります。これにより、歩行周期における立脚相での不安定性や、トレンデレンブルグ徴候のような股関節の外転筋力の相対的な弱さを誘発することがありますが、踵接地から立脚中期における「急激な膝屈曲」の直接的な原因とはなりにくいです。正しくは:ソケットの初期内転角度は適切であるべきで、これにより安定した体重支持が可能になります。選びやすい理由:ソケットのアライメント不良は歩行不安定性を招くため、選択肢として魅力的ですが、具体的な膝屈曲とは直接結びつきにくいです。混同注意:膝関節の特定の問題と、股関節や体幹の不安定性からくる代償運動を混同しやすいです。
国試ポイント
義足歩行における異常歩行の原因とアライメント調整の関係を問う問題です。特に、膝の屈曲・伸展異常と義足の各パーツ(足部、ソケット、バンパーなど)の機能的・構造的特徴との因果関係を正確に理解しているかが試されます。複数の原因を問う形式であるため、各選択肢の現象に対する影響を正確に判断する能力が求められます。
混同注意
膝が「屈曲」する原因と「過伸展」する原因を混同しやすいです。また、ソケットや足部の『位置』と『角度』の具体的な影響を間違えやすいです。例えば、ソケット後方配置は膝の過伸展を招くのに対し、足部底屈も膝の伸展を促す、といった微妙な違いを正確に把握する必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、他の異常歩行(例:膝の過伸展、足部の回旋異常、側方動揺など)についても、具体的な義足のアライメント不良や構成部品の不具合と関連付けて問われる可能性が高いです。また、原因だけでなく、それに対する『調整方法』まで問われることも想定されます。
関連知識
義足のアライメント調整(静的・動的アライメント)、各構成部品(足部、足継手、ソケット)の機能と役割、膝継手の種類と特性、歩行周期における各相での膝関節の運動学的・運動力学的特性。